中古ベンツの購入は、格安で夢のベンツオーナーになれる格好の方法ではあるが、「整備場所が限られている…」「維持費が高い…」などの問題が、方々から聞こえてくるのも事実だ。
一般的に輸入車の寿命は、国産車より短いと言われている。正確には、「国産車のように手放しで故障しない期間が短い」…という事を指す。
寿命が短いと言うよりも、「適宜必要なメンテナンスを施しながら、メカニックスタッフと共に長く愛用する文化が、日本には浸透していない。」…と言い替える事もできるのだ。高級車とは、本来、そういう手のかかる付き合い方が必要な車だ。
従って、世界トップクラスのクオリティを誇る天下のメルセデス・ベンツと言えども、その整備に手間・暇・金がかかる事は例外ではない。
日本車に比べ、予期せぬ故障頻度も高く、その際にかかる修理費用も膨大だ。部品の一つ一つは輸入品であり、もちろん関税もかかる。整備のできるメカニックスタッフは限られており、人件費もよりかかる。
ざっと見積もって、日本車の修理の1.5倍~2.5倍程度以上は覚悟をする必要があるだろう。
そんな事情から、背伸びをして中古車ベンツオーナーになったユーザーが、メンテナンス費用を低く見積もり過ぎていて、経済的に困った事態になる話は枚挙にいとまがない。最悪の場合、せっかく手に入れた愛車を、手放す羽目になる人もいる。
つまり、晴れてベンツのオーナーになるならば、車検・修理・消耗品の交換などのメンテナンス費用まで含めてマネージメントシミュレーションをする事が望まれるのだ。
故障は少ない方が良いし、日本車の盤石さはもはや常識である。しかし、そんな事は充分に分かっていてでも、「手間・暇・金のかかるベンツオーナーになりたい!」「ベンツのステイタス性・安全性・走行性・デザイン性を評価している!」という視点を持つユーザーに、中古ベンツは微笑みをくれるというものだ。
中古ベンツのオーナーになった場合、日本車より維持費がかかる事は免れない。しかしながら、維持費を最小限に抑えながら、日本車では得られない快適なカーライフを送る事は可能だ。
しかしそれには、少しの知識と知恵と工夫が必要だ。ここでは、メルセデス・ベンツにおける、車検・整備の基礎知識を見てみる事にしよう。
ヤナセなど正規ディーラーでの車検・整備
中古ベンツのオーナーになった場合、購入元がどこであろうと、ヤナセが運営する正規ディーラーに、車検・整備を依頼する事はできる。
正規ルートで一流の教育を受けた、ベンツに特化したメカニック陣が揃っている訳だから、日本全国どの店舗に依頼をしても、安心のクオリティが約束されていると言えよう。
さほど車には詳しくなく、メカニックに明るくないベンツオーナーの場合、手間・暇の事を考えると、正規ディーラーを利用するメリットは大きい。
何か不具合があっても、その原因追究や保全は、手放しで任せておいて良いのだ。部品の交換が必要な時も、在庫が豊富だから、最短での交換が可能だろう。正規ディーラーならば、ベンツのメンテナンス知識を学ばなくとも、良い結果は得られるのだ。
しかし、頭を使わないのだから、コストはかかる。正規ブランドには多くの人事が尽くされており、お金がかかる事は免れない。正規ディーラー工場での車検・整備などは、非正規工場のそれよりも、1.5倍~3倍程度かかる事も珍しくは無いのだ。
正規ディーラーの工場では、交換が必要な部品は「純正の新品パーツ」を利用する。しかし非正規工場の場合、「リモデルパーツ」や「中古パーツ」を利用する事で、コストを抑える工夫も出来る。
また、正規の整備ブランドを保持するためには、非正規工場では割愛するような、絶対性の低いチェック項目も、必須項目として上がっているだろう。とにかく正規ディーラーの整備工場に頼むならば、安心と引き換えに、コスト面での覚悟が必要である。
資金力のある中古ベンツオーナーは、迷わず正規ディーラーでの車検・整備を受けると良い。
しかし、少し気張ってベンツというステイタスを手に入れたオーナーや、ベンツがメカニック的にも好きで、メンテナンスについて学ぶ意欲のあるオーナーなどは…手間・暇・金と、品質・安心を比較して、オーナーにとって利があるのかどうか?…を考えて欲しい。
それが、正規ディーラーの整備工場を使うか否か?…の、見極めポイントになるだろう。
ベンツ専門非正規工場での車検・整備
全国そこかしこには、中古ベンツに特化した、中古車販売店が存在している。
それらの多くは独立系資本の店舗で、社長のベンツ好きが高じた延長戦での開業といった背景を持つ店が目立つ。そんな中古車販売店は、地元のベンツ愛好家が集い、一種の社交場と化しているケースが少なくない。
店主や店員と客、あるいは客同士のコミュニケーションが活発で、愛車=中古ベンツの調子や、メンテナンス談義に花を咲かせている。
きっとあなたの街にも一つや二つはあるだろう「ベンツ専門の中古車販売店」には、ベンツに特化した整備工場が付帯している。
そして、ヤナセなどから流れてきた、秀悦なメカニックスタッフが存在している事が多い。彼らは、ベンツに特化した正規ルートでの整備教育を受け、マニュアルを頭に叩き込まれ、多くの実車を診てきたキャリアを持つ。当然ながらベンツの目利きで、修理の腕も卓越している。(もちろん、絶対そのようなスタッフがいるとは限らないが…)
ベンツ専門中古車販売店では、正規ディーラーの認定中古車よりも、買取査定店舗の販売網よりも、中古ベンツ車両本体を、非常に格安で購入できるケースが多いが…そのカラクリは、自動車自体を安く販売し、受け渡し前に委細の診断を施す事で見つかった難点を、ユーザーの志向や予算に合わせて修理しようとするものだ。
車両本体価格を安く設定しているため、中古ベンツの多くの部品を交換でき、よりコンディションの良い状態にカスタマイズできる。以前のベンツオーナーの名残物は極力交換し、新しいオーナーのベンツへと一新させるのだ。
部品についてはベンツオーナーの予算や志向に合わせ、「純正の新品パーツ」にこだわらず、「リモデルパーツ」や「中古パーツ」を駆使して、予算と性能のバランスを取る事ができる。
廃車ベンツのストックがある店もあり、店員とコミュニケーションをとりながら、修理や車検などの整備内容と費用を調整していけるのだ。
一見、いいこと尽くしのベンツ専門非正規工場だが、一つだけ大きな問題点がある。それは、その工場が信頼の置けるクオリティを提供してくれるのか?…という保証はなく、その判断を、自分自身でしなければならないという事である。ベンツのメカニックや整備状況にある程度詳しいオーナーは良いだろう。しかし、初めてベンツオーナーになった初心者や、そもそもベンツのデザイン性やステイタス性に惚れ込み、メカニックには全く興味のないオーナーも多い。
そんな時、一つの判断基準となるのは、ベンツ専用診断機器「DAS」等が導入されているかどうかだ。
正規ディーラーの整備工場が使っているもので、これが無ければ正確な診断やセッティングはできない程の診断機と言える。
ベンツの知識や整備工場とのコネクションには、長い年月の蓄積が必要だ。それは一朝一夕ではどうにもならない事だが、良い店を見つけ、学び、よい関係を築こうとする努力の姿勢があれば、道は拓けていくだろう。
輸入車に明るい大手チェーン工場での車検・整備
ベンツの正規ディーラー整備工場でもなく、街場の独立系ベンツ専門整備工場でもない第三の選択肢に、「輸入車に明るい大手チェーン工場」というものが挙げられる。
「ボッシュカーサービス」などの正規工場や、それらの診断機器や整備機器を導入している、提携・認定工場などである。
全くの独立系ベンツ専門工場は、ベンツオーナー自身が判断基準を持って、自己責任で整備を依頼しなければならず、その良し悪しについては何のブランド力も第三者評価も無い。しかし、大手チェーン工場や、その認定店舗などには、一定の信頼が置けるというものだ。
もちろん、正規ディーラーの整備工場に比べると、店舗によるスキルのバラつきはあるだろう。しかしながら、独立系ベンツ専門工場よりは、自己責任での判断ポイントが少なくて済むのだ。
一長一短の整備工場を、オーナーの志向で選択しよう
「正規ディーラーの整備工場」は…安心性や信頼性、高いブランド力と共に、高い整備レベルが基準となり、コストも高い。メカニックに明るくないオーナーや、予算にゆとりのあるオーナー、とにかく安心整備を目指すオーナーなどに向いている整備先だ。
「独立系のベンツ専門非正規工場」は…オーナーの意向に沿った整備レベルを施してくれ、リモデルパーツや中古パーツを使うなどで、コストの調整も可能。スキルが高い所も多いが、信頼性にブランド力がある訳ではなく、その良し悪しは自己責任で判断しなければならない。メカニックに詳しいオーナーや、整備そのものを楽しめるオーナー、ベンツ愛好家とのコミュニティを求めるオーナーなどに向いている整備先だ。
「輸入車に明るい大手チェーン工場」は…ある程度オーナーの意向に沿ったレベルを施してくれるが、一定の整備規定もあり、独立系のベンツ専門非正規工場ほどの柔軟性は無い。しかし、スキルが高い所が多く、信頼性にも一定のブランド力がある。コストと安全性や信頼性のバランスを重視するオーナーなどに向いている整備先だ。
ベンツの整備先は、一口に「どこが良い」とは言えず、オーナーの整備イメージやメカニック知識などによってマッチング先が変わってくる。
「とにかく安く車検を通したいのか?」「とにかく安心して乗車したいのか?」…などの目的や、オーナー自身の愛車に対する知識量などをバランスよく鑑み、一長一短ある整備先を選定して欲しい。
愛車のベンツを売る時のことを見越した車検・整備
少しでも愛車のベンツを調子よく走らせたい方も、買換えの際に愛車を高く売りたいというベンツオーナーも、車の売り時タイミングと車検の関係性を非常に気に掛けるだろう。
それは、愛車を売るときの査定価格と車検や整備のタイミングの関係性が非常に重要になってくるからである。
車検のタイミングはいつがお得?
売りたいベンツの車検のタイミングはいつが良いのか?…車検を丸々二年間残していた時の方が得なのか?その答えは何と…「車検切れ直前のタイミングで売却すると最も高額査定をたたき出しやすい」だと言う事だ。
車検を残しているベンツは、もちろんその分プラス査定される。しかしそのプラス費用は、車検の最低費用分…5~8万円程度に過ぎない。
いくらその時に細かい部品を交換し、数十万円の費用をかけていたとしても、大幅にプラス査定される事は少ないのである。中古ベンツを納車する際は、どの販売店も引き渡し用の整備を必ず行う。
車検が切れていたとしても、車検相当以上の整備を施すため、車検が残っている事でプラスに働くのは、税金諸費用程度なのだ。
ベンツの車検は高い。
一般的に20万円程度~50万円程度が相場だろう。特に正規ディーラーの整備工場の場合、車検に通るギリギリのラインでは通してくれない。過分とも言える安全性を追求したレベルで、部品交換などがされる。
よって、車検に数十万円かけるよりも、車検切れ直前に査定をした方が、結果お得になるというのだ。
細かいキズやカーフィルムはどうする?
どんなに丁寧に乗っていても、多少の細かいキズはついてしまうもの。そんな時、買取査定前に、できるだけキレイに仕上げようと修理に持ち込むオーナーも少なくない。
カーフィルムについても、はがした方が良いと考えるオーナーが多い。しかし…「細かいキズやカーフィルムは、そのまま査定に出した方がお得!」だと言うのだ。
もちろん、キズの修復はプラス査定されるが、修理費用以上のプラス査定がつく事は無く、修理費用以下になるのが常だ。
そればかりか、修理手法は査定販売店によって異なり、良い印象を与えないケースもある。
カーフィルムについては、法に抵触しないものであれば、フィルムがある事がマイナス査定に繋がる事は無い。
自分で剥がして傷をつけたり、整備工場でお金をかけるよりも、そのまま査定に出した方が得策だ。
カーフィルムがある事を評価し、好むユーザーもいる訳だから、評価を下げたり、無駄にお金をかける必要は無いのだ。