国土交通省は、道路運送車両の保安基準を一部改正することで、バックミラーに代わる電子ミラーを認可するため「カメラモニタリングシステム」の基準を整備すると2016年に発表しました。
画像引用 https://response.jp/article/2016/06/20/277174.html
車のデザインや性能を追求していく上で、ミラーをカメラに置き換える動きが進んできています。車を運転する上で、後方確認のために重要となるミラーですが、ルームミラーがないと車検に通らないのでしょうか。
車の後方確認のためのミラーとは
道路運送車両の保安基準第44条(後写鏡等)により、自動車には後写鏡を備えなければならないと規定されています。ただし、ここでいう「後写鏡」というのは、いわゆるドアミラーのことを指しており、室内に取り付けられているルームミラーのことではありません。
したがって、車検時にルームミラーが仮になかったとしても、それだけで車検に不適合になるわけではありません。つまり、関連する基準をすべて満たしていれば、ルームミラーがなくても、あるいは純正品以外のミラーに交換をしていても車検はクリアすることができるのです。
ルームミラーを交換する際の注意点とは
ルームミラーについては、「事故などで衝撃を受けた時、乗員のケガを防ぐために脱落する構造(可変式もしくは脱着式)であること」が定められています。したがって、一見取り外せないように見えるルームミラーですが、車を購入した際についている純正ルームミラーは、脱着可能な構造となっているのです。
純正のルームミラーの交換パーツとしては、見える面積が広がるワイドタイプやリヤカメラの映像を映すタイプなど、様々なタイプがあります。純正のミラーは多くの場合、小さいサイズのものが採用されているので、ミラーの交換によって明るさがアップしたり、まぶしさを低減できたり、視界を広げたりすることができるので、非常に効果の高いアイテムと言えます。
取り外しの手順は、一般的にカバーを外し、内側のストッパー(ロック)を解除すれば、台座の状態になります。他のタイプのルームミラーに交換する際は、「衝撃を受けた時に脱落する構造であること」に注意して、車検適合品かどうかを確認する必要があります。
後写鏡等に関する保安基準等の改正とは
(1)後写鏡等に関する保安基準等の改正の背景
自動車と言うのは、生産や販売のグローバル化が進んでいます。できる限り全世界で仕様が共通化された方が、生産コストも下がり、企業にとってもユーザーにとってもメリットが多くなります。しかしながら、現実的には各国で保安基準は異なっており、メーカーも国ごとに対応しているのが現状です。例えば、日本ではかつて、視線移動が少なくて後方を確認しやすいようサイドミラーをフロントフェンダーに付けることが義務付けられていたのです。
その後、輸入車メーカー各社からはドアミラーの認可を求める要望があがりました。また、国内メーカーからも、デザイン面からサイドミラーをドアに付けることを認めてほしいという要望があがったため、1983年に規制が緩和され、現在のようなドアミラーが登場したのです。
日本は、国際連合の「車両等の型式認定相互承認協定」に平成 10 年に加入し、相互承認協定に基づく規則について段階的に採用を進めています。その中で、「間接視界基準に係る協定規則(第 46 号)」というものがあり、その採用によって、バックミラー等に代わる「カメラモニタリングシステム」の基準を整備することとなったのです。
ルームミラー新しい方向性
これまで説明したように、ルームミラーに関する保安基準については、「事故などで衝撃を受けた時、乗員のケガを防ぐために脱落する構造(可変式もしくは脱着式)であること」というものであり、見え方や機能については詳細な決まりがありません。
そこで、今後アメリカをはじめとして海外でもバックミラーの装着義務化の流れが強まっていくことが予測されます。そういった場合に、ナビモニターのように各国でサイズ企画が異なっているものに映し出すよりも、比較的サイズの制約が緩いルームミラーに映し出す方が、メーカーにとってもメリットが大きいと言えます。では、そういったルームミラーの新たな動きをご紹介していきます。
(1)スマート・ルームミラー
日産自動車は、ルームミラーに液晶モニターを搭載して、車体後部のカメラ映像とミラーとを切り替えることができる「スマート・ルームミラー」を世界で初めて採用しました。従来型のミラーでは、人や積載物で視界が遮られたり、雨などによって後方をクリアに確認できない場合がありました。
キャンプ道具や自転車を積載した場合や、3列目まで大人が座った場合、水滴が付いたり夕暮れや朝日の反射で見えづらい時でもカメラの補正機能によってクリアな後方視界を確保するというものです。エルグランドなど一部車種のディーラーオプションとして設定されており、今後も採用車種が広がることが想定されます。
(2)バックモニター内蔵自動防眩インナーミラー
トヨタのハイエースバンに設定されているバックモニター内蔵自動防眩インナーミラーは、その名前の通りバックカメラの映像をミラーに映し出すというものです。
通常時は、周囲の光と後方からの光の差に応じて鏡面の反射状態を変化させることで、視認性を保つことが特徴の自動防眩インナーミラーとして機能します。車両をバックさせる際には、インナーミラー内のディスプレイにバックカメラからの車両後方映像と駐車時の目安となる固定ガイド線を表示します。通常はナビディスプレイと連動するバックカメラですが、インナーミラーに映し出せるようにすることで、非常に手軽に使うことが可能となっています。
(3)モニター機能を搭載した「電子ルームミラー」
自動車用バックミラーで国内最大手の村上開明堂は、車の後部に設置したカメラで後方を見る「ハイブリッド インナーミラー」と、側面のサイドミラーにもカメラを取り付け、後方と両側方の映像を3分割の画面で見ることができる「マルチ ミラーシステム」の2種類を開発しました。
「ハイブリッド インナーミラー」については、すでに他社でも採用がありますが、鏡とモニターの切り替えをミラーの角度を手で変えて行わなければならないものでした。その点、この製品は鏡とモニターの切り替えが自動化されたことで、使い勝手が大幅に向上しています。「マルチ ミラーシステム」は、後方と側方カメラの情報をルームミラーに集中表示できるのがポイントで、後方下部や側方下部の情報をより拡大して表示することが可能です。
まとめ
以上、ルームミラーと車検の関係性やルームミラーを交換する際の注意点、ルームミラー新しい方向性についてご紹介してきました。ルームミラーは、もともとは後方視界を得るために開発され、全ての市販車に取り付けられていますが、車検との結びつきは非常に薄いと言えます。
より制約の少ないルームミラーは、画面の切り替えによって後方のカメラ画像を映し出したり、他のカメラの画像を複数映し出すことも可能となっています。今後、さらにミラーのカメラ化が推し進められることで、ルームミラーの重要性はさらに高まっていくといえます。