車庫証明書とは、正式には自動車保管場所証明書と呼ばれる書類のことです。自動車の保管場所があることを証明することが目的であり、自動車を購入して、名義変更を行う際に必要となります。
車庫証明書の取得は販売店に代理でお願いをすることも可能ですが、手数料がかかってきますし、手続き自体は簡単な書類を提出するだけですので、誰でも行うことが可能です。
少しでも購入費用を抑えるために、いかにして車庫証明を自分で取るかについて、詳しくご説明していきます。
車庫証明とは
車庫証明は、「自動車の保管場所の確保等に関する法律(車庫法)」という法律が規定する制度です。第1条にはその目的として次のように決められています。
「この法律は、自動車の保有者等に自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づけるとともに、自動車の駐車に関する規制を強化することにより、道路使用の適正化、道路における危険の防止及び道路交通の円滑化を図ることを目的とする。」
つまり、道路を自動車の保管場所として使用しないようにするために定められたのが車庫法であり、車庫証明という制度なのです。
この法律は昭和37年に制定されていますが、それ以前は、保管場所を持っていなくても自動車を購入でき、名義変更も可能でした。
自動車保有台数が400万台を超え、さらに爆発的な伸びが予測できた当時、様々な社会問題が発生していました。例えば、路上駐車によって交通の妨げになっていたり、消防車が火災現場に入れないなど、緊急時の対応にも影響を与えていたのです。
こうしたことを受け、保管する場所がないと自動車の名義は変更できないという仕組みが出来上がったのです。
車庫証明の取り方1 自動車の保管場所の確保
車庫証明を取る前に、必ず必要となるのが自動車の保管場所の確保です。自宅にすでに駐車スペースがある場合は別ですが、何らかの方法で保管場所を見つけてくる必要があります。
ただし、どんな場所でも自動車の保管場所にできるわけではありません。大きく分けて次の4つの条件を満たす必要があります。
(1)保管場所の使用権原を有していること
大きく分けて、保管場所には自己所有のケースと、賃借しているケースの2つに分けられます。まず、保管場所が自己所有である場合、「保管場所は、私の所有であることに間違いありません」という内容の自認書を提出します。
保管場所を他人から借りる場合は、保管場所の所有者から「自動車の保管場所として、私の土地や建物を使用することを承諾します。」という証明書(保管場所使用承諾証明書)をもらう必要があります。通常は、駐車場の所有者に数千円の手数料を支払って書いてもらいます。
(2)駐車場、車庫、自宅内の敷地であり、道路以外の場所であること
保管場所を道路とすることは認められません。月極め駐車場でなくても、他人の土地の空きスペースでも問題はありません。
ただし、その指定場所が他の車で埋まっていたり、明らかに止められないような状況の場合、保管場所として使用することはできません。
(3)保管場所が使用の本拠の位置から直線距離で2キロメートル以内であること
使用の本拠の位置と保管場所の間の距離は2キロメートル以内である必要があります。いくら実家に広大な敷地が余っているからと言って、遠く離れた場所を保管場所とすることはできません。
なお、自宅と保管場所の間の距離は、直線距離で2キロメートル以内という意味です。自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令第1条に保管場所の要件として定められており、いかなる場合も例外が認められません。
(4)自動車を道路から出入りでき、自動車全体を収容できること
保管場所として使用するためには、道路から出入りできる必要があります。いくら自宅の庭が大きいからといって、道路に面していなければ、保管場所にはなりません。
さらに、自動車が完全に保管場所に収まる程度の大きさを備えていることが必要です。車の一部分がはみ出るような小さいスペースでは、保管場所としては認められません。
車庫証明の取り方2 書類の準備
保管場所が確保できたら、次は書類の準備です。必要な書類は、最寄りの警察署の窓口でもらえるほか、各都道府県警察のウェブサイトからインターネットでも入手が可能です。
書類については、以下のとおりとなります。注意点としては、申請書等に消すことのできるボールペンの使用ができないこと、押印箇所のシャチハタ等の簡易式スタンプ印鑑の使用ができないことに注意が必要です。
<車庫証明の申請に必要な書類>
- 自動車保管場所証明申請書
- 保管場所標章交付申請書
- 保管場所の所在図・配置図
- 保管場所使用権原疎明書面(自認書)
※保管場所を借りている場合、「保管場所使用承諾証明書」が必要となります。
書類作成上の注意点
(1)自動車保管場所証明申請書(保管場所標章交付申請書と複写)
車の情報や自動車の使用者の住所・氏名などを記入する書類です。車検証を見ながら間違えないように記入することが重要です。
(2)保管場所の所在図・配置図
インターネット上の地図を印刷し、切り貼りするやり方が一番簡単です。
(3)保管場所使用権原疎明書面(自認書)
自認書は車庫を自分で所有している場合にのみ必要な書類です。
(4)保管場所使用承諾証明書
車庫を借りている場合のみ必要な書類ですので、所有者の押印等が必要になります。
車庫証明の取り方3 管轄する警察署へ申請
申請書類が整ったら、車庫を管轄する警察署へ行って申請を行います。
警察の受付時間は平日の午前9時頃から午後5時頃までが通常ですが、都道府県によって異なります。当然のこととして、土・日・休日、年末年始はお休みです。平日の日中に時間をみつけて申請に行く必要があります。
手数料は都道府県によって異なるものの、2,000円程度となります。また、書類に不備がなければ納入通知書兼領収書がもらえます。領収書は車庫証明を受取る際に必要となります。
車庫証明の取り方4 警察署で受取り
都道府県によって日数は異なりますが、3日程度で車庫証明が出来上がります。
申請の際にもらった納入通知書兼領収書を窓口に提示することと、標章交付手数料として500円が必要となります。なお、交付されるものは次のものになります。
自動車保管場所証明書(車庫証明書)
自動車の登録に必要な書類であり、名義変更の際に運輸支局へ提出します。
保管場所標章番号通知書
車検証などと一緒に保管する書類です。
保管場所標章
車のリアガラスに張るステッカーです。
車庫証明が不要なケースもある
よく「軽自動車は車庫証明が不要」と言われますが、この表現は正確ではありません。正確に言うと、保管場所の届け出が不要な地域と必要な地域があるということです。
保管場所の届け出が必要な地域を「適用地域」と呼び、自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令の附則と別表第2に定められています。
区域の分けは平成12年6月1日が基準となります。大まかに言うと、東京や大阪の中心から30km圏内にある市、県庁所在地の市、人口10万人以上の市などが保管場所の届出が必要な対象地域になります。
地方都市に行くと、人口10万人以上の市は非常に稀であるため、県庁所在地の市のみが適用地域となることが多くなります。例えば、岩手県は盛岡市、山梨県は甲府市、和歌山県は和歌山市のみが適用地域となります。
したがって、地方に住んでいる場合、多くのケースでは車庫証明が不要となります。
軽自動車の車庫証明(自動車保管場所届出)とは
軽自動車の車庫証明は、普通車の場合と手続きの手順が異なります。
自動車の保管場所の確保等に関する法律(車庫法)第5条では、次のような規定があります。
「軽自動車である自動車を新規に運行の用に供しようとするときは、当該自動車の保有者は、当該自動車の保管場所の位置を管轄する警察署長に、当該自動車の使用の本拠の位置、保管場所の位置その他政令で定める事項を届け出なければならない。」
普通車は、車を買って名義変更する際には必ず車庫証明が必要となります。しかしながら、軽自動車の場合、先に軽自動車検査協会において名義変更を行った後、警察署に行き、自動車保管場所届出を行います。
こうしたことから、手続きをしないままにしているユーザーも少なからずいるのが実態です。
ただし、車庫法の第17条3項では、保管場所の届出をしない場合、10万円以下の罰金に処すると定められています。したがって、適用地域で軽自動車を買った場合には、必ず届け出を行うことが重要です。
軽自動車の車庫証明(自動車保管場所届出)の方法
大まかには普通車の時と同じですが、まずは保管場所を確保して、以下の書類を準備します。そして、管轄の警察署に書類を持ち込むと、当日に標章が交付されることが多くなります。
- 自動車保管場所届出書(3枚綴り)
- 自認書(自分の土地を利用する場合)または使用承諾証明書(自分の土地ではない場所を利用する場合)
- 保管場所の所在図・配置図
- 自動車検査証
- 標章交付手数料500円
軽自動車の場合、自動車保管場所の届出であり、保管場所を証明するというものではありません。普通車の場合であれば、警察署での申請後、実際にその保管場所が適正なものかどうかを見に来てチェックされることが通常です。軽自動車の場合、そういったチェックは通常行われません。
まとめ
以上、自分でできる車庫証明の取り方について詳しくご説明してきました。
インターネットで書類が入手できるようになったものの、最低でも平日の日中に2回は警察署に出向く必要があるため、手間がかかるのも事実です。
そこで、販売店に依頼しなくても、平日の日中に時間が付く家族にお願いすることも考えられます。
普通車の場合と違い、軽自動車の場合は手続きが忘れがちになりますが、罰則も付いているため、必ず届け出を行うことが重要となります。