毎年4月1日を迎えた時点で発生する「自動車税」は、ナンバープレートの交付を受けている方は一律で納税の義務が発生するものです。
自動車税は用途区分と総排気量によって税額が変動し、愛車のタイプによってはかなりの負担となります。
例えば「ホンダ・ステップワゴン 2015年モデル」で自動車税を算出した場合、年間39,500円が自動車税として発生します。

また、それとは別に年間32,800円が重量税として課税されるため、税金だけでも毎年72,300円を納税する義務が課せられます。
これは維持・所有の上で消して削ることのできない出費のひとつですが、「貨物車両(事業用)」として構造変更届を行うことにより、年間維持費を安く抑えることができます。
今回は、税金の節約に有効な公認車検テクニックの1つ・構造変更によってミニバンを4ナンバー化する方法について指南させていただきます。
4ナンバー車両にはメリットが色々とある
いきなり4ナンバー化すると言ってみても、どれだけのメリットがあるのかいまいちピンとこないという方が大半かと思われます。
まずはミニバンを4ナンバー化した際のメリットから解説させていただきます。
4ナンバー化のメリットその1・重量税の金額を約20%にまで節税できる
4ナンバー化するにあたって、最も大きなメリットに挙げられるのが「自動車税」の節税効果の高さです。
本年平成30年の自動車税を具体的に挙げさせていただきますと、以下の通りとなります。
4ナンバー車両 | 5ナンバー車両 | |
重量税(1年×2) | \10,400×2=\20,800 | \32,800×2=\65,600 |
これは標準的な車検のサイクルである2年間を基準として計算したものですが、「ホンダ・ステップワゴン 2015年モデル」の場合は2年で44,800円という差額が発生し、1年あたりの差は22,400円となります。
これだけの金額が発生すると仮定した場合、年間走行距離20,000km以内の方であれば1年分のガソリン代がまかなえる計算となります。
4ナンバー化のメリットその2・自動車税が約半額に
さらに4ナンバー化の恩恵は「自動車税」の面でも大きく、1.5〜2.0リッタークラスの「ホンダ・ステップワゴン 2015年モデル」では以下の通りとなります。
4ナンバー車両 | 5ナンバー車両 | |
自動車税(1年×2) | \9,500×2=\19,000 | \39,500×2=\79,000 |
両者の差額は2年間でちょうど6万円となり、ここでも大きな差が発生します。
重量税と自動車税を合算で算出してみると、1年あたりの差額は52,400円と非常に高く、お住まいの地域によっては1年分の駐車場代をペイできることも。
これだけの差が発生するのであれば、ミニバンの4ナンバー化は節税の上で非常に有効であることがよくお分かり頂けることかと思います。
4ナンバー化のメリットその3・荷室空間を乗用よりも大きく使うことができる
さらに3つ目のメリットとして挙げたいのが、「構造変更届」による荷室空間の有効活用性の高さです。
特に最近のトレンドの一つである「車中泊」を楽しまれている方の場合、荷室空間を利用して本格的なカスタムを施すこともでき、後部座席を外した空間を100%活用できるように。
限られた室内空間をいかに有効活用して楽しむかが車中泊の醍醐味ですので、室内空間を100%活用できる4ナンバー化は、アウトドア派のミニバンオーナーにとってなかなかに魅力的だと言えるでしょう。

4ナンバー化するとこんなデメリットも…
このように、節税効果が高く室内空間を有効活用できるのが4ナンバー化によるメリットですが、メリットがある以上でメリットもやはり存在します。
乗用車である5ナンバー化から、事業用車となる4ナンバー化によるデメリットは以下の通りです。
4ナンバー化のデメリットその1・乗員人数が減少する
5ナンバーのミニバンを4ナンバー車両として構造変更届を出すためには事業用車「貨物車」であることを示す必要があり、そのためには後部についていた乗用シートを除去せねばなりません。
元々の車検証に乗員人数が5名と明記されていた場合、後部シートがなくなれば乗員定数は2名となります。
これは2シーター車両の場合ですが、3列シーターの7名が定員車両の場合は5名となります。
乗員に12歳未満の子どもが含まれているか否かで人数の数え方は異なりますが、仮に「定員外乗車」として検挙された場合、違反点1点と反則金6,000円が課せられます。
道路交通法上、乗員定数をオーバーした状態でクルマを運転することは、極めて悪質な違法行為(乗員の安全性が確保できていないなど様々な理由から)ですので、ここを十分に理解しておく必要があります。
4ナンバー化のデメリットその2・毎年車検を受ける必要がある
一般的な自家用車の場合、初年度登録であれば3年・それ以降は2年が車検のサイクルですが、4ナンバー化すると事業用車両となるため、新車の場合で2年・以降は1年が車検のサイクルとなります。
これは業務用車両という区分上、一般的な乗り方よりも安全性能を厳しくチェックする必要があるためで、税金が安いのはこのためだと思ってもいいでしょう。
その一方、1年毎のサイクルだと割り切って定期的に消耗品の交換またはユーザー車検などを利用すればコストは軽減できるため、考え方によってはそれほど大きなデメリットとはならない場合もあります。
4ナンバー化のデメリットその3・車体後部に最大積載量を明記する義務がある
4ナンバー化にあたり、乗用車から事業用貨物車に扱いが変わる関係上、車体後部に最大積載量を明記する義務が発生してしまいます。
大型トラックなどの後部に貼られている「最大積載量1,000kg」と言ったプレートがそれに該当します。
構造変更届を出す際の検査時はマジックペンで記入することでも許可がおりますが、この場合は見た目が非常に悪くなりリセールバリューの面で悪影響があることも覚えておきましょう。
管理人のオススメ方法としてはマグネットタイプのプレートを用意しておくことで、着脱可能な状態にしておけば見た目を損ねる恐れはなくなります。
ただし、レタリングなどで英語表記することは認められておりませんので、必ず「最大積載量〇〇kg」と記入したものを用意しておきましょう。
4ナンバー化のデメリットその4・タイヤ・ホイールの種類に制限がかかる
事業用貨物車として構造変更届を出す場合、4ナンバー発行にあたり貨物車の安全基準を満たしているかどうかの検査を受けることになります。
この時の検査では「JWL-T規格」に合致しているものでなければ通すことはできず、純正ホイールなどからタイヤも含めて交換する必要があります。
また、タイヤについても同様で事業用車の安全基準を満たす「ロードインデックス」以上のものを装着する必要があります。
平成26年度以降は「積載重量500kg以下で車体総重量が3.5トン以下の車」はJWL-T規格のホイールでなくとも許可されるようになりましたが、タイヤについてはまだまだロードインデックス以上のものを装着する必要があるため、車検用にホイール・タイヤをセットで用意しておく方が無難だと言えます。
4ナンバー化のデメリットその5・車両保険・自賠責が高くなる
乗用車区分でクルマを登録した場合、所有者はあくまでも個人扱いであるのに対し、構造変更届で4ナンバー化すると事業用貨物車に区分が変わります。
いわば「業務用車両」という商業的な扱いに変わるため、一般乗用車と比べ事故時の車両責任が大きく問われることになります。
このように5ナンバー登録時と比べ、4ナンバー化に際して自賠責・車両保険ともに保険金額が高くなる点にもご注意ください。
2018年2月現在、自家用乗用車の場合は24か月(2年間)で25,830円が自賠責保険料となっておりますが、構造変更届で小型貨物車両化した場合、同期間での自賠責保険料は29,470円と1割以上高くなってしまいます。
車両保険については保険会社・契約プラン等の違いにより一概には言えませんが、おおむね10〜20%程度の増加があると見ていいでしょう。
さらに注意しておきたいのは乗員定数の変更に伴う「乗員定数違反時の事故」で、この場合は保険適用外となってしまう場合もあることを重々意識しておく必要があります。
ここを押さえれば4ナンバー取得は簡単!そのポイントは?
5ナンバーから4ナンバーに構造変更を届け出る場合、「小型貨物車両」の基準を満たしたものであるかどうか再検査を受けることになります。
その際にクリアすべきポイントは以下の通りです。
構造変更届を行う際のポイントその1・荷室空間の床面積が1,000mm四方確保されていること
小型貨物車両として構造変更届を出す際、荷室空間の床面積が1,000mm×1,000mm(1m四方)あることが最低条件となっております。
ステップワゴンやノアといった一般的なミニバンであればこの基準は元からクリアできておりますが、検査当日は積載物を下ろして誤認されないよう十分注意しておきましょう。
構造変更届を行う際のポイントその2・積載物の積み降ろし口が800mm四方確保されていること
次に条件となるのは貨物車両としての積載部分(この場合はバックドアのことを指します)解放時の荷物を積み降ろしするためのスペースが800mm×800mm(80cm四方)以上となっていることが必須条件です。
このため、車中泊仕様車としてキャビネットを取り付けていた場合、不合格となることもありますので、積載物がない状態で検査に臨むことをお勧めいたします。
構造変更届を行う際のポイントその3・荷室空間と乗車設備(運転席)間に適当な隔壁もしくは保護用仕切りがあること
最大積載量が500kg以下の場合、前方座席の背当て(バックシート)が仕切りの代用品として認められるため、よほど特殊なものを使っていなければここはさほど気にする必要はありません。
ただし、制裁量が500kgを超える場合はその限りではなく、スチール版といったそれなりの強度を持つ仕切り板を設置する必要がありますので注意しておきましょう。
構造変更届出後は同乗者の乗せ方に注意
構造変更届後の検査に合格し、晴れて4ナンバーを取得した後は違法改造車として処罰される恐れはまずありません。
ただし、運転席・助手席以外に人を載せる場合はそれなりの注意が必要です。
今回ご紹介させて頂くのは「ホンダ・ステップワゴン(7人乗り) 2015年モデル」ですが、このクルマは3列シート構造となっております。
2列目シートを残して5人乗りで4ナンバー化した場合、残していた2列目シートに3人まで載せることができる計算です。
しかし、前席側以外の場所に人を載せる場合は「乗員」ではなく「貨物(積載物)」という乗用車とは異なる扱いになりますので、構造変更届時の最大積載重量を超えない範囲で…という条件付きの許可であることを忘れてはいけません。
法律上は人一人分の体重は55kgという基準が設けられているため、後部シートに3人乗れる形であれば55×3=165kg以上で申請する必要があります。
少々ややこしい規定ではありますが、最大積載量は50kg区切りで申請する必要がありますので、もしもの時に備え最大積載量は200〜300kgといった余裕を持たせて申請しましょう。
また、たとえ積載物がない状態で荷室空間がガラ空きだったとしても、乗員定数2名として申請していた場合、後部に一人でも乗っていればそれは乗員オーバーとして罰則対象になります。
特に日中よりも夜間の方が街灯・ネオンといった光源で車内の状態がわかりやすいため、飲酒検問時などに発覚して痛い目を見る恐れもあることを自覚しておきましょう。
構造変更届を行うための具体的な基準と実際の届け出手順はどうなるのか?
それでは今回の構造変更届(公認車検)を行うための具体的な手順について解説させていただきます。
最初にすべきことは、あなたがお住いの地域を管轄する運輸支局(陸運局)に出向き、あなたが所有するクルマが4ナンバー化できるかどうか事前確認しておきましょう。
というのも、法で定められて基準に則って検査を行うことは確かですが、実際に検査に当たる検査官や担当関係者によって合格基準がアバウトであるケースが多々あるからです。
本来ならばこうしたファジー(曖昧)さがあってはならないのですが、時にはこのファジーさが私たちを救うこともあり、一概に否定するわけにも参りません。
できるだけ早くクルマに手を入れたいお気持ちはよくわかりますが、後で残念な結果とならないためにもまずは確認作業を行いましょう。
問い合わせの方法は運輸支局の相談窓口で「このクルマの構造変更をしたいのですが、規定について知りたい」と告げ、あなたのクルマの車検証とともに事情を説明してみましょう。
そうすることにより、実際に検査に当たっている検査官へ詳細を聞くよう促されますので、どういった形であれば条件がクリアできるのか、どういう形に仕上げたいのか要点を絞って検査員に聞き出し、質問が終わったら「お忙しいところありがとうございました」とお礼を伝え、早めに立ち去るのがベストです。
ここまでで公認車検・構造変更届の下準備は完了です。
構造変更届の手順その1・検査官に聞き出してきた基準に合うよう寸法チェック
ここからはいよいよあなたのミニバンを改造していく作業の始まりとなります。
まずは4ナンバー化(軽貨物)するための大前提・荷室空間の確保からです。
最低限の基準値は1m四方の荷室スペースを確保することですが、後部の2列目シートを残して構造変更届を行う場合、2列目シートの乗員スペースよりも荷室空間の方が広いことが絶対条件として定められております。
車種によって方法は様々ですが、まずは3列シートであればシートを除去した後の荷室空間サイズがどれほどの広さなのか確認し、余裕を持って基準値がクリアできていることを確認しておきましょう。
車種によっては、ギリギリ基準値をクリアできるかどうかといったものもありますが、サイズをしっかり実測することでスライド機構にストッパーを設けることができ、検査時に不合格になってしまうリスクを軽減することができます。
構造変更届の手順その2・テスター屋でシミュレーションする
荷室空間の実測を終え、十分なスペースを確保することができれば、次は運輸支局近辺にあるテスター屋に車両を持ち込んでみましょう。
テスター屋とは正式名称を「予備検査場」といい、運輸支局で行っている自動車検査ラインと同一の検査機器を所有しているため、本番前に構造変更届を行う際のチェック箇所を事前点検してもらうことができます。
ここはあくまでもテスト(本番前の再チェック)だけですが、多くのテスター屋は不合格箇所を調節するためのアドバイスをしてくれます。
評判の高いテスター屋の場合、その場で再調整を手伝ってくれることもあり、構造変更検査時の本番前の心強い味方だと言えます。
テスター屋の料金はまちまちですが、概ね3〜4,000円が相場となっており、ぶっつけ本番で運輸支局へ持ち込んで不合格判定を食らうよりも合理的です。
このテスター屋は通常の車検前でも利用することができ、1年車検化することで車検費用がかさばりがちな4ナンバー車のコストを軽減する「ユーザー車検」の時にも心強い味方となってくれます。
後々になっていいお付き合いができるよう、事前のパイプ作りだと考え、できるだけ礼儀正しくふるまうことをお勧めいたします。

構造変更届の手順その3・必要書類と元気を用意して運輸支局へ
テスター屋でテスト項目オールOKとなった後は、車検証・現在の自賠責保険証書・自動車税納税証明書・認印・現金(1万円程度あれば十分)を携行して運輸支局の窓口へ行きましょう。
運輸支局の相談窓口では。「構造変更届を出したいので宜しくお願いします」と告げてください。
そうすると、4ナンバー化した際の新しい車検証を発行してもらうために必要な「自動車検査票」、「第1号様式申請書」、「第2号様式申請書」、「自動車重量税納付書」といった必要書類を購入する窓口へ案内してもらえます。
初めての方が必要書類を全て把握しておくことは難しいため、案内された窓口で、「自家用車の構造変更届に必要な書類をお願いします」と告げれば150円程度の用紙代と引き換えに一式受け取ることができます。
必要用紙を受け取った後は、最初の窓口へ戻り、必要事項を一つ一つ教えを請いながら埋めていきましょう。
また、車の点検・整備をする際に使用する「点検整備記録簿」も一緒に手渡されているはずですので、検査ラインで整備が必要な箇所が見つかった場合は後整備するという形で考えておきましょう。
もし自動車税納税証明書を紛失していた場合、運輸支局窓口で再発行可能ですので、必要書類を受付の方にチェックしてもらい、諸費用を支払って備えることにしてください。

構造変更届の手順その4・構造変更の検査ラインを予約する
ここまで準備ができましたら、運輸支局でするべきことは構造変更検査を受ける予約を行うだけです。
運輸支局で自動車検査を受けるには、あらかじめ検査ラインの予約を入れておく必要があり、2018年現在は当日から起算して10日前から予約が可能となっております。
あなたの休日など確実に時間が取れる日時指定を行い、予約日当日は遅刻が無いよう心がけ、構造変更検査を受けましょう。
構造変更届の手順その5・予約日に再度運輸支局で検査を受ける
予約当日を迎え、あなたがするべきことは構造変更を届け出るクルマを運輸支局に持ち込むことです。
到着後は先日用意しておいた全ての必要処理を持って受付窓口に行き、「構造変更届を出したい」と告げ、必要書類のチェックと検査手数料を支払いましょう。
通常の継続車検出れば検査手数料(2,000円)と重量税を支払う形になりますが、構造変更によって重量税の区分が変わるため、検査合格後に改めて重量税の支払いに来てください。
その後は予約を入れた検査ラインの前に並び、前方車両の流れや検査員の誘導に従い、各種検査ラインでチェックを受けて行けばOK。
一般的な自動車検査に関する項目は割愛させていただきますが、今回の構造変更対象の荷室空間は検査員によって寸法測定が行われますので、注意しながら見守りましょう。
その他、現在の車両重量を測定されますので、車内に余計な荷物やスペアタイヤがあれば検査員の指示に従って下ろしてから重量測定を受けてください。
この時、最大積載量の指導を運輸支局の職員から受けますので、その表示をするためのマグネットプレートや臨時で貼り付けておけるガムテープなどを持っていくと安心です。
検査に合格すれば後は流れ作業で書類申請と新ナンバー交付となり、晴れて4ナンバーとして運転することができるようになります。
ここまでが一連の流れですが、もし検査で不合格となった場合、検査当日中であれば不合格箇所を直した上で再検査を無料で受けることができます。
もし申請時に車検までの有効期限が残っていた場合、自動車税の差額は受け取ることができないため(こちらはすでに納付されている関係上、月割りの還付制度がないためです)、有効期限が残っている方は翌年度4月まで支払い・還付が発生することはありません。
最後に新ナンバーの交付と同時に、これまでの常用ナンバーから4ナンバーへ保険区分も変わりますので、自賠責保険の変更等も忘れず行っておきましょう。
これを怠ってしまうと、万一の際に無保険運転となってしまいますので、新ナンバー発行に浮かれて忘れないように十分ご注意ください。