車をローダウンすることは、ホイールの交換やマフラー交換などと並んで、カスタマイズの第一歩であり、非常に人気のある改造手法です。
しかし、「車高を下げたいけれど車検が心配」「車高を下げるうえで何を注意すれば良いか」など、必ず訪れる車検に関して不安や疑問を持っている方も少なくないでしょう。
そこで、今回の記事では、知っているようで知らない車検と車高の関係について、詳しく解説して行きたいと思います。
最低地上高についての知識を正しくつける
車高を英語に訳すと「ロードクリアランス」、レース業界などでは「ライドハイト」などとも呼ばれ、車の見た目はもちろん、走行性能にも大きな影響を与えます。
レーシングカーなどの車高が地面を這うほど低くなっているのは、簡単に言うと車の重心を下げ、コーナリング性能を向上させるためです。
しかし、同じレーシングカーでも、ラリーなどに使用される車両の車高はそれほど低いわけではなく、公道を走る車と大差のない高さに設定されます。
つまり、極端に車高の低いレーシングカーは、完全に封鎖され、決められたコース(サーキット)を走るため、極限まで車高を下げることができますが、不整路を走ることもあるラリーカーは、ある程度の高さが必要なのです。
車高を下げ過ぎると車検NG
前述のように、車高とは、その車がどのような使われ方をするのかによって、必要な高さが有り、さまざまな道を走行し、時には急な勾配がある駐車場などのスロープも上る必要がある一般車の場合は、ある程度の高さが無ければなりません。
そこで、日本の保安基準で定められているのが「最低地上高」と言われる項目です。
ご存知の方も多いと思いますが、最低地上高は「9cm」と定められ、車検の際にこの「最低地上高9cm」を確保できていない場合は、車検不合格となってしまいます。
最低地上高の測定方法
車検場や整備工場などで行われる車高の測定方法については、独立行政法人自動車技術総合機構が定める審査事務規程には、
- 測定する自動車は、空車状態とする。
- 測定する自動車のタイヤの空気圧は、規定された値とする。
- 車高調整装置が装着されている自動車にあっては、標準(中立)の位置とする。
- 測定する自動車を舗装された平面に置き、地上高を巻尺等を用いて測定する。
- 測定値は、1cm 未満は切り捨て、cm 単位とする。
となっていますが、実際の現場において、巻尺で測定することは困難であり、時間もかかるため、通常は点検用ハンマーや、測定用の専用器具を、車の下に差し入れて測定します。
最低地上高に含まれない場所、車検NGとなりやすいはどこか?
一概に最低地上高と言っても、車の下層部分のすべてが測定基準に含まれているわけではありません。
ここからは、保安基準で定められている最低地上高に含まれるもと、含まれないものについてお話していきます。
最低地上高の測定基準に含まれないもの
足回り関連
まずは、最低地上高に含まれると勘違いされやすい箇所の代表的な部分が、ロアアームやリヤアクスルなどの足回りに関するパーツです。
保安基準では、「タイヤと連動して上下するブレーキ・ドラムの下端、緩衝装置のうちのロアアーム等の下端」は含めないとなっていますので、車高を下げたことで、ロアアームが最低地上高9cmを下回ってしまっても問題ありません。
ただし、タイヤではなく、ボディと一緒に可動するクロスメンバーや、スタビライザーなどは、最低地上高に含まれますので、注意が必要です。
エアロパーツ類
エアロパーツやアンダーカバー、マッドガードも良く質問を受けるパーツですが、FRPなどの樹脂製である場合は、9cmではなく、5cm以上の高さが確保されていれば問題ありません。
ただし、フォグランプやウインカーなどの灯火類が埋め込まれているバンパーの場合は、ボディと同じ構造物となるため、最低地上高の測定範囲に含まれます。
最低地上高不足で車検NGとなることが多いパーツ
次に、実際に車検NGとなりやすいパーツについてご紹介していきます。
マフラー
もっとも車検でNGになりやすいと言っても良いかもしれないほど、マフラーが最低地上高9cmを下回ってしまい、不合格になることが多く見受けられます。
特に、社外マフラーに交換している場合は注意が必要で、純正マフラーに比べ、パイプの軽が太く、取り回しがストレートの物ほど、低い位置にくる傾向です。
マフラーに関して付け加えると、最低地上高に関係なく、どうしても外観からは見えない部分であるため、もっとも地面に擦りやすいパーツ。
軽く擦る程度であれば問題ありませんが、何度も擦ってしまったり、強く当ててしまったりすると、変形や損傷などの原因となり、排気漏れなどを起こしてしまいます。
足回りを交換して車高を下げた、または、マフラーを交換した場合には、必ず地面との距離を確認するようにしましょう。
リヤデフ
FRや4WD社に装着されているリヤデフは、車軸の中心に近い位置にあり、最低地上高を下回ってしまいやすいパーツの一つです。
ただし、AE86など、リヤがホーシング構造の場合は、タイヤと連動して可動するパーツになるため、最低地上高には含まれません。
メンバーの取付ボルト
上記のマフラーやリヤデフに関しては、意外と知られている項目であり、一般ユーザーの方でも気にしている方も多いと思いますが、意外と見落としがちなポイントとして、メンバーの取付けボルトがあります。
サスペンションの取付け部であるクロスメンバーや、エンジン、ミッション、デフなどが取り付けられているメンバー類は、車にとってはとても重要な構造物です。
そのため、メンバー類の取付けに用いられているボルト類は、径が大きく厚みがあるものがほとんどで、ボルトの頭だけで、2cm程度の厚みがあるものもあり、ボルトが最低地上高9cmを下回うのは意外と少なくありません。
ローダウンする際に注意したいポイント
車検において、どういった点が最低地上高として測定されるかが分かったところで、ここからは、車高を落とす(ローダウン)方法についてお話します。
ローダウンサス(スプリング)を使用する
最も安く車高を落とすことができる方法は、ローダウンサス(スプリング)に交換することです。
安い物であれば1万円~2万円と比較的安価で購入することができ、交換工賃も数万円程度とお手頃。
各メーカーとも、装着した際のダウン量について表記しており、希望のダウン量になる商品を選ぶことも可能です。
注意点としては、各メーカーが表記しているダウン量はあくまでも目安でしかないため、あまり大幅にダウンさせてしまうと、9cmを下回ってしまうことも。
また、有名メーカーの商品であれば、かなり高品質な商品も出ていますが、やはり純正スプリングと比較すると、耐久性などは劣ってしまうものがあり、時間の経過と共に、車高が下がってくる可能性があります。
そのため、装着直後は最低地上高9cmを確保できていても、数年後には9cmを下回ってしまうこともあるため、装着してから時間が経過している場合はちゅういが必要です。
車高調を使用する
ローダウンサス(スプリング)に比べて部品代は高価になりますが、車高調を使用することで、好みの車高に調整できることや、マフラー交換で不足してしまう最低地上高を確保することもできます。
20年前では15万円以上するのが常識でしたが、近年では10万円を切る商品も多くでまわるようになり、それほど走りに拘らないユーザーの方でも、車高調を取り付けている方が多くなりました。
これから初めてローダウンに挑戦するという方は、多少出費が多くとも、車高調の装着をオススメします。
ただし、車高調であれば必ず車検に合格できるわけではなく、やはり、純正に比べれば、経年変化による漏れや、スプリングの遊びが出る場合もあり、数年でオーバーホールや交換が必要になる可能性があることは忘れてはいけません。
エアサスコントローラーを使用する
純正でエアーサスペンションを装着している車両の場合は、エアサスコントローラーを使うことで、簡単に車高を下げることができます。
注意点としては、走行中に車高を変えられるようにしていると、車検で不合格になる可能性があるため、運転席から離れた個所にコントローラーを取り付けるようにしましょう。
また、中には全開まで車高を下げることができる商品もありますが、純正足回りのままで、あまり車高を下げ過ぎると、ショックアブソーバーのオイル漏れや、エアスプリングの損傷に繋がるため、過度なローダウンはオススメできません。
ちなみに、純正でバネ式のサスペンションの車を、エアーサスペンションにした場合は、別途構造変更が必要になります。
まとめ – 車高調に不安がある場合は整備工場へ
記事内でも触れているように、車検をパスするためには、最低地上高を9cm以上確保していなくてはなりません。
しかし、エアロパーツなど、パーツによっては9cmを下回っていても問題の無いパーツが有り、また、なかなか一般の方が、下回りの高さを確認するのは少々難易度が高いかもしれません。
いざ、車検当日になって、最低地上高が足りないとなると、その場で改善ずるのはほぼ不可能であり、あまり低すぎる車高は、車を傷める原因にもなります。
もしも、自分の車の車高が不安な場合は、事前に整備工場などで確認してもらうようにしましょう。