車は人と荷物を目的地に運ぶ道具ではありますが、ただの道具ではなく、オーナーの個性や好みを反映し、カスタムするのも大きな楽しみの一つです。
特に、ユーザーの過ごす時間が長い車内は、使い勝手良く快適に、そして自分の好みにドレスアップしているというユーザーも多いことでしょう。
しかし、カーナビをはじめとした内装品は、取り付け位置や取り付け方法を間違えると、車検に不合格になってしまうことがあるのです。
せっかくお金と時間をかけて取り付けたにも関わらず、車検で取り外さなければならないようでは、お金と時間を無駄にしてしまいます。
そこでこの記事では、内装系パーツに焦点を当て、車をドレスアップする際、車検をクリアーするためには、どういった点に注意すれば良いか解説していきます。
内装ドレスアップの車検合否ポイントは安全性
エアロパーツやマフラーといった車の外側に取り付けるパーツに比べ、あまり車検を意識されることの少ない内装パーツですが、取付け方やパーツの選択を間違えると車検NGとなってしまうことがあります。
そこで細かい法律を知る前に、車検の合否に関わるポイントを理解しておきましょう。そのポイントとなるのは安全性が確保されているかということです。
乗員の安全確認
車の内装に使用されるパーツは、万が一事故などで衝突した際に、乗員の被害を拡大させないように配慮されていなければなりません。
例えば、助手席の前方に、金属でできた板状の突起がある場合、衝突に衝撃で助手席の同乗者は前方に投げ出されてしまい、その突起によって、ケガが酷くなってしまう可能性があります。
つまり、内装に使われているパーツは、衝撃を吸収する柔軟性を持ったもの、あるいは、乗員に危害を与えない構造になっていなくてはならないのです。
視認性の確保が重要
安全運転において、運転者の視界が広く確保されていることは、安全運転において欠かせない要素です。
そのため、基本的には、運転者の視界に入るフロントガラスや、ダッシュボード周辺にはあまり大きなパーツを取り付けてはいけません。
ただし、審査規定の「直前および側方の視界」により明確な基準はあるものの、実際には検査官や検査員の目視によって検査されることが大半です。
大型モニターや大き目なぬいぐるみなど、明らかに視界の妨げになるようなものは設置しておかない方が無難でしょう。
後付けモニター設置の注意点
車検において、良く問題になるのがモニター類ですので、ここからはそれぞれのモニターについて解説していきます。
オンダッシュモニター
前項でお話したように、ナビメーカーの純正品以外で、あまり大型のモニターをダッシュボードの上に取り付けている場合は、視界不良とみなされる可能性があります。
また、助手席の前であっても、衝突安全という観点から見て、危険と判断されることがありますので、大型のモニターはフロント回りにとリルケ無い方が無難です。
へッドレストモニター
ヘッドレストモニターが車検NGとなる理由は、衝突安全の確保が不適合なためです。
ヘッドレストは頭部後傾抑制装置と呼ばれ、座っている人がむち打ちにならないようにするための機能と、後部座席の人が衝突した際に衝撃を吸収する機能が求められます。
そのため、それらの衝突試験に合格した製品のみ車検をクリアーすることができますが、現状ではほとんどそういった商品は販売されていません。
そのため、例え純正品を加工した物であっても、ヘッドレストモニターは車検不合格となる可能性が非常に高いパーツです。
バイザーモニター
サンバイザーにも、衝突した際の衝撃吸収性能が求められるため、現状市販されているバイザーモニターは車検不合格になる可能性が高いと言わざるを得ません。
ルームミラーモニター
後付けのモニターの中で、唯一車検にほぼ抵触しないのがルームミラーモニターです。
現在市販されている7インチ程度のものまでであれば、大きく視界を妨げる心配がないため、確実に取り付けされていれば、特に心配する必要はありません。
その他モニター
フリップダウンモニターや、ヘッドレストのステーに専用アタッチメントを介して取り付けるタイプのモニターに関しては、車検でNGになることはまずありません。
しかし、家庭用の大型モニターなどを取り付けている場合、検査官や検査員によっては危険と判断することがありますので、大きすぎるモニターの取付けはオススメできません。
社外シート設置の注意点
サーキットなどでスポーツ走行を行う場合、ホールド性の高いバケットシートに交換しているという方もいらっしゃるでしょう。
また、後部座席を上位グレードの物に交換し、ラグジュアリー感をアップさせるカスタムなどもあります。
しかし、シートは運転者の安全を確保するのはもちろん、助手席や後部座席の同乗者の安全も確保しなければなりません。
フルバケット/セミバケットシート
2ドア4シーター車の場合で、運転席、助手席ともフルバケットシートに交換すると、フルバケットシートの構造上、後部座席への乗り降りが困難になるため車検NG。
助手席は純正シートや可倒できるセミバケットシートに交換するか、後部座席を取り外して、乗車定員を2人にすることが必要です。
また、後部座席があり、フロントシートのシートバックが硬い素材のまま剥き出しになっている場合は、衝突安全の観点から車検不合格になる可能性があります。
そういった場合は、フロントシートのシートバックにウレタンなどの緩衝材を付けるようにしましょう。
そして、忘れてはならないのが、シートレール。
どんなに高価なシートでも、きちんと車体に固定されていなければ意味がありませんので、保安基準に適合した商品を使用するようにしましょう。
その他シートに関して
後部座席を上位グレードのタイプに交換する、または異なる車種のシートを取り付ける場合などは、大前提として乗車定員が変わってはいけません。
乗車定員が変更される場合は、シートの強度はもちろん、制動力が基準を満たしているかなどを確認し、構造変更をする必要があります。
ガラスフィルム等を張る場合の注意点
紫外線対策や冷房効率向上のため、車のガラスに着色フィルムを張っている、または盗難防止装置のステッカーなどを張っている場合もあるでしょう。
これらのフィルムやステッカーは、貼り方や場所を間違えると車検不合格になるケースが多く見受けられます。
フロント3面は基本的に車検NG
ご存知の方も多いと思いますが、フロントガラス、運転席と助手席の窓ガラスには、車検ステッカーや点検ステッカーなど、法律で決められた物以外は、原則貼ってはいけません。
それでも、赤外線や紫外線を防止するため、フィルムを張る場合は、透過率70%以上を確保しなければならないのです。
透過率70%と聞くと意外と色が付いていても大丈夫のような気がしてしまいますが、例え透明なフィルムであっても数年後には透過率70%を下回ることがほとんど。
この透過率70%というのは、ガラスに張った状態の透過率で、一般的な自動車のガラスは、単体で、すでに透過率が80%前後と言われています。
そのため、場合によっては、見た目ではほとんど透明に見えるフィルムであっても、透過率を計測すると70%を下回ることがあるのです。
一度貼ってしまうと綺麗にはがすことが難しくなることがあるため、やはりフロント3面には何も貼らない方が無難でしょう。
その他内装パーツカスタムの注意点
上記に挙げた物以外にも、内装をカスタムするためのパーツは数多く存在しますので、下記からは、実際の車検尾現場で車検不合格とされる可能性が高いパーツをご紹介していきます。
後付けテーブル
助手席前方に取り付ける木製のテーブルですが、販売元では車検対応と謳っている商品であっても、危険物とみなされ車検不合格になる可能性があります。
フロントカーテン
助手席や運転席の窓に取り付けるカーテンですが、窓ガラスに触れてはいけない、ある程度のタルミが無ければいけないなど、車検に合格する条件はさまざま言われています。
しかし、実際には明確な法律などがあるわけではなく、現場の検査官や検査員の判断に委ねられているというのが現状ですので、車検の時には外しておく方が無難です。
棚などは固定してはいけない
ハイエースなどのワンボックスの荷室に棚を載せている場合、安全のために車体としっかり固定しているということがあるかもしれません。
しかし、フロアなどにボルトや溶接などで固定してしまうと、車体の構造物とみなされ、重量がある棚の場合は、構造変更をしなければならなくなります。
固定をせずに置いておくだけにしておくか、ある程度固定したいのであれば、工具などを使わずに取り外すことのできる蝶ネジを使用するようにしましょう。
まとめ – 車検上では安全性と視認性を重視
記事内でも述べているように、車検に通るかどうかのポイントは、「視界を妨げるなど、安全運転に支障をきたさないこと」と、「運転手を含め、乗員全員の安全が確保されていること」の2点です。
せっかく費用と時間をかけて取り付けたお気に入りのパーツであっても、車検に合格できなければ無駄になってしまいます。
そうならないためにも、少しでも車検に通るか不安な場合は、近くの車検工場か陸運支局に確認するようにしましょう。