指定工場と認定工場の違いはなんですか?
皆さんが車検の依頼先を探しているとき、「当工場は国から指定を受けた指定工場です。」または「当社の工場は国の認証を受けているため安心」などといった宣伝文句を目にしたことがあると思います。
どちらもしっかりとした整備工場という良い印象を持たれると思いますが、この認証工場と指定工場には大きな違いがあるのです。
これから車検の依頼先を決めようとしている方は、この記事でご紹介する違いを良く読んでいただき、自分に自分に合った車検の依頼先を探す参考にしてください。
車検整備工場における、指定工場と認証工場とは?
整備工場と呼ばれる事業所は、認証工場と指定工場の2種類がありますが、一般の方にとっては、どちらも「車を整備する工場」であり、具体的に何が違うのかということはあまり知られていません。
そこで、まずは認証工場と指定工場がそもそもどのように違うのかについて見ていきたいと思います。
認証工場とは
ブレーキの分解やエンジンを下すなどの作業は分解整備と言われ、道路運送車両法第78条第1項により、仕事として分解整備を行う事業者は、地方運輸局長から自動車分解整備事業の認証を受けなければなりません。
認証を取得するためには、法律で定められた工具類などの設備面、2級以上の資格を持った整備士の数を揃える必要があり、それらの基準を満たし、分解整備を伴う整備作業を仕事として行う認証を得た整備工場が「認証工場」なのです。
さらに、認証には扱える車の種類(普通自動車、小型自動車、軽自動車)が分かれており、各認証工場は事業に必要な車種の認証を取得する必要があり、認証工場だからといって軽自動車から大型バスまで整備できるわけではありません。
また、原動機、動力伝達装置、制動装置といったように部分的な認証を取得することが可能で、車検の際に行う法定点検はブレーキの分解を伴うことになるため、ブレーキ(制動装置)のみ認証を取得しているという工場も少なくありません。
指定工場との大きな違いは、自社工場内に完成検査ラインを持っておらず、車検を通す際には、陸運支局などに有る検査ラインに車を持ち込む必要があるということです。
指定工場とは
上記の認証を受けた認証工場のうち、一定の基準を満たしている工場からの申請により、地方運輸局が指定する工場を「指定工場」と言います。
認証工場を取得した上で指定されているため、分解整備はもちろんのこと、自社工場内に陸運支局に有る検査ラインと同等の設備を備え、車検(完成検査)を行うことが可能で、「民間車検場」とも呼ばれます。
認証工場に比べ、設備面だけでなく、みなし公務員である自動車検査員をはじめとした人員の配置、さらに事業場管理責任者の選定など管理面にも厳しい基準が設けられ、認証工場よりも厳しい基準に合格しなくてはなりません。
そのため、比較的規模の大きな工場や、資本体系がしっかりしている企業が多いのが特徴です。
車検の実施においては、自社工場内に検査ラインを持っているため、すべての作業を行うことができ、特に整備の必要がない車両の場合は、1時間程度で車検を終えることができます。
認定工場と指定工場、車検のやりかたが違いは?】
上記でも少し触れた通り、認証工場と指定工場の違いは、車検の実施方法にあり、自社工場内に検査ラインを持っている指定工場と、検査ラインを持たない認証工場では、対応できる日に違いがあります。
認証工場は平日のみの対応
検査ラインを持たない認証工場では、陸運支局が開いている平日にしか車検を通すことができません。
もちろん、土日祝日でも車を点検したり預かったりすることはできますが、肝心の車検にあたる完成検査は平日のみとなってしまいます。
また、店舗によっては陸運局までの移動に時間がかかるため、1日で車検を終えることが困難な店舗もあるのです。
指定工場は原則365日いつでも対応可能
自社工場内に検査ラインを持つ指定工場では、24時間365日車検を通すことが可能です。
もちろん、各店舗には営業時間と定休日などがありますが、最近では、お盆休みやお正月といった陸運支局が開いていない日でも営業している指定工場が増え、ユーザーの都合に合わせた柔軟な対応をしてくれる場合があります。
とは言え、車検を通すために整備作業が必要になった場合は、部品などを取り寄せなければならないことも多く、部品屋さんが営業していないため、対応できる車には限りがあるのが現実です。
認証工場と指定工場、車検に掛かる費用に違いはある?
皆さんが車検の依頼先を決める際に重視するのは、時間と費用の2点が重要なポイントになると思います。
時間という点で言えば、指定工場の方が自社で完結できる分自由度があり、比較的早く終わる可能性が高いことはご説明した通りです。
では車検費用という点については、認証工場と指定工場でどういった違いがあるのでしょうか。
車検費用に基本的に大きな差はない
結論を先に述べさせていただくと、法定費用に含まれる検査印紙代が数百円違う以外、確実にどちらが高いということはなく、やはり、車の状態などによって、車検に掛かる費用は大きく違ってくるものです。
あくまで傾向として金額差をご説明するならば、やはり指定工場は設備投資や人員確保などにお金がかかっているため、一般の整備工場が営む民間車検場や、ディーラーなどの指定工場では、ガソリンスタンドなどの認証工場に比べ、多少割高と言えるでしょう。
また、指定工場は国が定めている保安基準よりも若干厳しい基準を設定していることが多く、結果的に車検費用が高くなることも少なくありません。
認証工場と指定工場、車検の受かりやすいのはどちら?
整備士や検査員をやっていると、「ディーラーは車検が厳しいのか?」「どの工場で受ければ車検が受かりやすいか?」といった質問をされることがあります。
誰しも何も問題なく車検を終わらせたいと思うのは当たり前のことですから、認証工場と指定工場ではどちらが受かりやすいのか?どちらが厳しいのか?という点は気になるポイントなのかもしれません。
指定工場の方が厳しい場合もある
車検では、指定工場であっても認証工場であっても、保安基準に適合していなければ合格することはできません。
しかし、指定工場では、一般的に保安基準よりも若干基準を厳しくした社内規定というのも設けています。
例えば、「保安基準には記載のないブレーキオイルの沸点などを基準化し、規定温度以下は交換」といったように、工場独自の基準に適合しなければいけないのが社内規定です。
これは工場が利益を上げるためだけに設けているわけではなく、保安基準はあくまで最低限の安全基準であり、決して十分な基準ではないという認識があるからに他なりません。
また、指定工場では、みなし公務員である検査員が車検(検査)を行いますが、やはり国に代わって検査を行い、車検に合格であることを証明する保安基準適合証を発行する以上、適当な検査をするわけにはいきません。
その結果、受かりやすいかどうかという観点で見た場合には、指定工場の方が若干厳し目であることは間違いないのです。
しかし認証工場だからと言って受かりやすいとは限らない
法定点検後、陸運支局の検査ラインで完成検査を行う認証工場の場合、車検を行うのは検査ラインにいる検査官です。
彼ら検査官が基準にするのは保安基準のみですので、そういった観点では指定工場よりも基準が緩めと言えるかもしれません。
ただし、指定工場と違い1日に何度も検査ラインを通せるわけではないため、必要な整備箇所についてはより確実に受かるような整備を行います。
よって、車検を通すために必要な個所の洗い出しは厳しくなりますし、整備内容によっては、指定工場よりも割高になる可能性があります。
自分に合った車検の依頼先を選ぼう
車検の依頼先を考える際、認証工場と指定工場のどちらに依頼するべきなのかについては、これから受ける車検に何を求めるかによって、どちらが適しているかが変わります。
認証工場のメリットは、指定工場に比べ圧倒的に数が多く選択肢が広がり、ガソリンスタンドなど、皆さんの家の近くで簡単に車検をお願いすることができますが、その反面、車検を陸運支局にまで持ち込まなければならないため、1日車検は難しくなってしまいます。
逆に指定工場では、比較的大きな規模の工場が多く、ディーラーや一般の整備工場では割高になってしまう可能性がありますが、自社工場内に検査ラインがあるため、時間的な融通が利きやすく、状態によっては1時間程度で車検を終えることが可能です。
そして、認証指定問わず、各業者や工場それぞれに特徴があり、さまざまなサービスや特典なども展開しています。
認証工場と指定工場の違いだけではなく、その工場の車検が自分にとって得なのか、自分に合っているのかなどを見極め、最適な依頼先を選ぶようにしましょう。