車検費用を安くできる究極の方法として知られるユーザー車検。
そんな究極の方法に、今度こそ挑戦しようと思っている方も多いのではないでしょうか?
けれど、万が一不合格になってしまったら、余計に手間と費用が掛かるのが心配になって、なかなか勇気が出ない方も多いはずです。
実際、車検には保安基準という法律によって決められた基準がある以上、何をやっても合格しないことも珍しくありません。
しかし事前にしっかり準備をし、車検に落ちてしまう恐れがある項目をあらかじめ把握しておけば、余計な費用や時間をかけないようにすることができます。
このページでは、サスペンションに関する項目に焦点を当て、特に指摘されやすいポイントや、指摘された際の対象方法を紹介していきます。

サスペンションについての基本知識
まずは、サスペンションとはどのような部品で、どのような役割があるかについて、おさらいしましょう。
サスペンションの構造と役割
サスペンションは日本語に直訳すると、広い意味では「足回り」になろうかと思います。
主な構成部品とそれぞれの役割は、以下の通りです。
- 車体とタイヤを繋ぐ「サスペンションアーム」
- 路面の凹凸などを吸収する「スプリング」
- スプリングの動きにある程度の抵抗を与え、安定感を増す「ショックアブソーバー」
このほかに、各部品を繋ぐゴムブッシュなどで構成されています。
車にとっては重要部品
どんなにハイパワーのエンジンを持っていても、その力を的確に路面に伝え、車体を支えていなければ鋭い加速をすることはできませんし、強力なブレーキを備えていても、しっかりと車体を支えていなければ安定した減速を行うことができません。
もちろん、スムーズにコーナリングをすることもできないでしょう。
サスペンションは人間に例えるならば「足腰」であり、どんなに強靭な肩を持った野球のピッチャーでも、下半身がしっかりしていなければ剛速球は投げられないのと同じです。
検査される内容を把握しておく
ユーザー車検は、どのような項目であっても、必ず項目ごとに検査する内容が決まっているため、事前に確認する内容を絞っておくことが大切です。
また、サスペンションは、ある程度ご自分で事前に確認し、不具合を発見することができますので、ユーザー車検の本番で指摘され慌てることがないよう、事前にできる点検はしておきましょう。
サスペンションが検査されるタイミング
ユーザー車検でサスペンションが検査されるタイミングは、検査ラインの最後に行われる下廻り検査の時です。
この時、堀と呼ばれる地下に検査官が潜り込み、下から各部の緩みや損傷などを検査し、さらには検査台自体が振動し、各部にガタがないかが検査されます。
サスペンションの典型的な指摘項目
ユーザー車検で特に多く指摘される項目のうち、代表的な項目をご紹介します。
ブーツ切れ
サスペンションは複数のアーム類などが車体などと連結し、さらに上下に稼働する構造になっており、さらにフロントに関しては、タイヤが左右に切れるため、ボールジョイントと呼ばれる金属製の連結部になっています。
金属性のボールを使用しているということは、腐食や砂などの侵入を防ぐためにゴムや樹脂でできたダストブーツでカバーしてあり、中には専用のグリスが入っているのです。
ダストブーツはゴムや樹脂でできているため、年数が経過すると硬化しひび割れを起こし、最終的には切れてしまい、内部のグリスは漏れ出し、代わりに水や砂などが入り込み、ボールジョイントを痛める原因になります。
ダストブーツが使用されている箇所は車種により異なりますが、ユーザー車検ではブーツが切れていると不合格になってしまいますので注意しましょう。
ブッシュ切れ
ボールジョイントのほかに、車体とのつなぎ目や、左右に切れることの無いリヤの足回りの連結部には、ブッシュと言われるゴム製のクッションが用いられています。
ブッシュもブーツと同じくゴム製。そのため年数が経つと硬化し、切れなどの不具合を起こしてしまいます。
足回りの連結部分ですので少々心配な部分ではあるのですが、切れやひび割れの初期段階では、一般の方が普通に乗っているだけでは気が付かない異音程度しかしません。
症状が進むと「ゴトゴト」という異音と共に、段差や旋回時などに不快な振動が出るようになるため、気付いた時には重症化している場合が多いので注意しましょう。
ユーザー車検ではこれらのブッシュに切れがないか、または振動や打音検査でガタや緩みがないかが検査されます。
また、ごく一部の車種には、ゴムの中にシリコンオイルなどが封入された「流体ブッシュ」と呼ばれるタイプもあり、流体ブッシュが切れると当然オイル漏れと判断されます。
ショックアブソーバーのオイル漏れ
ショックアブソーバーは日本語では「減衰装置」と言い、スプリングのみでは一度跳ねるとしばらくスプリングの伸縮運動が長時間続いてしまうため、スプリングの動きにある程度の抵抗を加えて、伸縮運動がある程度のところで収まるようにしています。
その減衰力を生み出すために専ら用いられているのが、専用オイルとガスです。
中にオイルが入っていて摺動する(伸び縮みする)ため、内部のオイルが外に漏れ出さないようにオイルシールが使われているのですが、経年劣化や細かな砂や塵の影響でオイルシールが劣化し、内部のオイルが漏れてしまうことがあります。
オイル漏れを起こしている場合の初期症状は、少しこもった「コトコト」「ゴトゴト」という音が段差などを通過する際に出るようになり、オイル漏れが進行するとどんどん増していき、完全に減衰する能力を失うと、段差などで起きる車体の上下運動がしばらく続きます。
ユーザー車検では、オイル類の漏れは公害拡散防止の目的から不合格になってしまいますので注意しましょう。
社外サスペンションの場合
皆さんの中にはダウンサスや車高調などを使用して、車高を落としている方も少なくないと思いますが、純正に比べ社外サスペンションに交換されている場合は、若干注意が必要です。
最低地上高
まず、車高を下げている場合にもっとも気になる点は、「最低地上高の9cm」が確保できているかだと思いますが、ご自分で確認される場合は、確認する箇所に注意が必要です。
最低地上高を計る場所はバンパーやサイドステップなどではなく、エンジンやミッションを支えているメンバーや、マフラーなどです。
また、市販されているローダウンサス(スプリング)などには「車検対応」と書かれている商品もありますが、ローダウンサスは時間の経過とともに少しずつ劣化し車高が下がりやすく、新品時には問題なくとも、数年使用すると最低地上高を満たさなくなる可能性がありますので注意しましょう。
社外車高調
社外車高調についてはよく「車高調は車検に通るのか」と質問を受けますが、現状の法律では車高調を装着しているだけでは全く問題ありません。
ただし、これは実際に検査員講習で私自身が聞いている内容なのですが、ここ10年近く車高調については毎年のように議論され、いつ保安基準不適合とされても不思議ではないとのことです。
前回の車検は問題なくとも、いきなり不合格と言われてしまう可能性があるということは覚えておきましょう。
もちろん、最低地上高が9cm満たない場合や、タイヤを浮かせた際にスプリングが遊ぶようでは車検に通りませんので注意しましょう。
エアーサスペンション
エアーサスペンションについては、特に中古で購入した初めて車検を受ける場合などでは注意が必要です。
法律では、サスペンションの方式を変更する際は構造変更を行う必要があり、もちろんほとんどの車がきちんと構造変更され、車検は問題ないことが多いのですが、中にはそれまでの車検を構造変更することなく通ってしまっている中古車が販売されていることがあります。
構造変更を受けて、いわゆる公認を取るためには相応の費用と手間がかかりますので、エアーサスペンションに改造されている中古車で購入して初めての車検を受ける場合は、車検証の「車両型式」の欄を確認しておきましょう。
しっかりと構造変更を受けて公認をとれている場合は、車両型式の後ろに「改」の文字が書かれています。
もしも指摘されてしまったら
サスペンションは車にとって重要な部分ですので、修理するとなると、その場での対処は難しく、また部品交換などが必要な場合は、部品の取り寄せに時間がかかるため、その日に対処することも難しいかもしれません。
しかし、ショックアブソーバーのオイル漏れについては、あまりひどくなければ洗車場などのスチーム洗車機(高圧洗浄機)などで綺麗に洗い流すことで、車検をパスすることもできる可能性はあります。
けれど、あくまでその場しのぎでしかなく、オイル漏れが改善することはありません。
車検後できるだけ早い時期に、交換などの修理をオススメします。
まとめ
繰り返しになりますが、サスペンションはその日その場での対処が非常に困難ですので、事前にしっかり確認し、不具合が発見された場合は早めに整備工場などに相談しましょう。
また、社外のローダウンサスや車高調に交換された方は、念のため純正部品は取っておくと安心です。