車検費用を安くできる究極の方法として知られるユーザー車検。
そんな究極の方法に、今度こそ挑戦しようと思っている方も多いのではないでしょうか?
けれど、万が一不合格になってしまったら、余計に手間と費用が掛かるのが心配になって、なかなか勇気が出ない方も多いはずです。
実際、車検には保安基準という法律によって決められた基準がある以上、何をやっても合格しないことも珍しくありません。
しかし事前にしっかり準備をし、車検に落ちてしまう恐れがある項目をあらかじめ把握しておけば、余計な費用や時間をかけないようにすることができます。
このページでは、灯火装置に関する項目に焦点を当て、特に指摘されやすいポイントや、指摘された際の対象方法を紹介していきます。

ユーザー車検で検査される内容
ユーザー車検は、どのような項目であっても、必ず項目ごとに検査する内容が決まっているため、事前に確認する内容を絞っておくことが大切です。
では、実際のユーザー車検では、灯火装置のどういう点が検査されるのかを見ていきましょう。
検査される灯火類
車検で検査され、場合によっては不合格になる灯火装置は決まっており、保安基準に関係のある灯火装置と、関係のない灯火装置に分けることができます。
保安基準に関係する灯火装置
まずは正しく点灯し、要件を満たしている必要がある灯火装置を見ていきましょう。
ヘッドライト
ウインカー
スモール
テールランプ
ブレーキランプ
ハイマウントストップランプ
ナンバーランプ
バックランプ
フロントフォグランプ
リヤフォグランプ
コーナリングランプ
サイドマーカー
デイライト
保安基準に関係しない灯火装置
続いては、点灯していなくても車検に落ちることはない灯火装置です。
ルームランプ
マップランプ
ドアカーテシランプ
その他の車内に関係するランプ
取付けてあるだけで不合格になる灯火装置
続いて紹介する灯火装置は正確には灯火装置とは言えませんが、違法改造に該当するため取付けられている時点で不合格になります。
代表的なのは、3つ以上同時に点灯するフォグランプ、回転灯、そして上記に挙げたどの灯火装置にも属さない灯火装置です。
ネオン管などは、取付け方などにより判断が分かれます。
検査官が確認するポイント
灯火装置に関しては、特殊な場合を除き、基本的には測定器などは使用せず検査官が目で見て判断します。
検査官が見ているポイントは、大きく分けて下記の3つです。
点灯状態
まずは基本中の基本ですが、各灯火類がきちんと点灯しているか確認されます。例えば、著しいチラつきで安定しない状態や、明らかに暗い場合は不合格です。
デイライトについては、エンジンONでスモールおよびヘッドライトOFFの状態で点灯し、スモールおよびヘッドライトがONの状態では消灯する必要があります。
破損状態
レンズの割れや本体の破損があり、取付け状態がグラグラしている、内部に雨水等が侵入する可能性がある場合は不合格です。
ブレーキランプなどの色付きレンズでは、電球そのものの光が漏れている場合な不合格になります。
色味
保安基準では、すべてのランプの色は決められています。
スモール(車幅灯) ・・・白色のみ(平成18年1月登録以降の車両)
ウインカー(方向指示器)・・・橙色(オレンジ)
テールランプ(尾灯) ・・・赤色
ブレーキランプ(制動灯)・・・赤色
ハイマウントストップランプ(補助制動灯)・・・赤色
ナンバーランプ(番号灯)・・・白色
バックランプ(後退灯) ・・・白色
装着されている個数が1個のナンバーランプを除き、左右の色は同一でなければなりません。
その色は車検に通るのか?
ヘッドライトやスモールなど、最近は純正ではなく社外品に交換し、カスタムを楽しんでいる方も多いと思います。
しかし整備士や検査員をしていて、よく受ける質問が
「このヘッドライト(社外バルブ)は車検に通るか?」
「スモールは何色がOKなのか?」
という灯火装置に関する内容です。
ここからは、カスタム目的で社外品の電球に交換されている方が、特に疑問に思っている内容についていくつか触れてみたいと思います。
「車検対応」のヘッドライトバルブなのに通らない理由
カー用品店などで売られているヘッドライトバルブには様々な種類があり、その商品のパッケージには「車検対応」と書かれているヘッドライトバルブがありますが、実際の検査ではこのバルブが原因で不合格になる可能性があります。
例えば「車検対応6,000K」と書かれている商品の場合、ポイントとなるのが「6,000K」です。
この「K」という単位はケルビンという色温度を表す単位で、ケルビン数が高くなるにつれて赤→黄色→白→青と光の色が変化していきます。
純正のハロゲンのヘッドライトは3,000K前後、純正HIDは4,000K前後で、用品店で売られている「車検対応」と書かれたヘッドライトバルブは6,000~6,500K位ぐらいのものが多いようです。
では何故、6,000Kのヘッドライトバルブで車検に落ちてしまうことがあるのか。それは明るさ(光度)の問題です。
保安基準では、ヘッドライト(ロービーム)は6,400cd(カンデラ)以上の明るさが必要なのですが、色温度(ケルビン)が高くなる、つまり青に近づけば近づくほど光の強さは下がっていき、保安基準で求められる光度が出づらくなってしまいます。
特に経年劣化によってレンズや反射板が曇ってしまっている場合は、あまりケルビン数の高いバルブに交換してしまうと、必要な光度が出ずに車検不合格になる可能性が高いです。
パッケージに書いてある「車検対応」の文字は、あくまで見た目の色が白に見えるというだけと理解してください。
社外HID (LED)ヘッドライトキットは車検に通るの?
これは、ハロゲンのヘッドライトから社外品のHIDやLEDにキットごと交換している方からよく受ける質問ですが、答えは基本的には車検に通ります。
ただし、あくまで「ヘッドライトに求められる性能を満たしていれば」という前提に変わりはありません。
社外HIDやLEDキットでは、下記に挙げるような車検に通らない定番の不具合がいくつかありますので紹介していきます。
チラつき
純正・社外を問わず、HIDヘッドライトにはバラストと呼ばれる電圧安定器があり、社外HIDキットの場合、純正と違いバラストの品質にばらつきが大きく電圧の安定性に欠ける商品も少なくありません。
また、バーナー(バルブ)も品質、特に耐久性にバラつきがあり、バラスト、バーナーどちらに不具合があっても、切れる(不灯)になる前にチラつきがおきます。
光度
上記の社外ヘッドライトバルブでも触れているように、あまり色温度が高い(青い)物は検査で光度が上がらず不合格になる場合があります。
それともう一つ光度が上がらない原因が、焦点のズレです。
どんな方式のヘッドライトでも、バルブ(光源)の光を、背面にある反射板に反射させ、光を1点に集める構造になっています。
そのため粗悪品の社外品の場合、バルブの取り付け位置が微妙に変わってしまい、その結果、光の焦点が狂い、光度が上がらないことが少なくありません。
カットオフライン
2015年9月より、平成10年9月1日以降登録の車両は、すれ違い灯(ロービーム)での検査が厳格化され、すれ違い灯の検査ではカットオフラインという、光を遮断するラインがしっかり出ていなくてはいけません。
しかし上記の光度と同じく、焦点がずれることでカットオフラインが崩れ、起きてしまう不具合です。
切り替え不良
これはH4というハロゲンバルブと交換するタイプの社外のHIDやLEDキットで起こりがちな不具合で、ハイビームとロービームの切り替えができなくなることが多いです。
切り替えができなければ当然、車検不合格になります。
ウインカーをポジションランプ(スモール)として光らせるのはOK?
結論からお伝えすると、基本的には問題ありません。
しかし、ウインカーが橙色(オレンジ)であるため、平成17年12月以前の登録以降の車両でなくてはならないことと、ウインカーとして作動する時にはしっかりポジションとしては消灯するなど、しっかり作動しなくてはいけません。
また、法律的になるため細かな説明は省きますが、ウインカーとスモールには決まった高さや、見える範囲が決まっているため、どちらの条件も満たしている必要があります。
指摘された際の対処方法
ここまで、灯火装置において、指摘されやすい項目についてご案内してきましたが、万が一指摘されてしまった場合の対象方法は以下の通りです。
ケース1:灯火類の不灯・チラつきの場合
該当のバルブ(電球)の交換を行いますが、実際の交換はガソリンスタンドやカー用品店でも行えます。
ケース2:破損や取付け不良の場合
アッセンブリー(その物ごと)の交換が必要になるため、ディーラーなどで部品を注文するところから始める必要があります。
そのため事前にわかっている場合は、交換してから受検することがオススメです。
ケース3:社外品やカスタムの場合
上記で社外品や改造(カスタム)について一部触れていますが、まだまだ検査官により判断が分かれることもあるため、不安であれば純正に戻しておくことをオススメします。
まとめ
灯火装置は誰にでも確認することができる項目ですので、事前にしっかり確認を行い、本番のユーザー車検であわてることがないよう、しっかりと準備を行うようにしましょう。