どんな買い物でも、出費を抑えたいのが人の常というもの。それが一度に数万円から、時には20万円近くかかる車検であれば尚更です。
例え10万円かかる車検で、1万円しか値引いてもらえなかったとしても、その1万円があれば家族で外食に行く費用にだってなります。
だからこそ、車検の費用を抑えようとするのは真っ当な考えです。
よって今回は、車検代金は値引きできるのか、また、値引きしてもらうにはどういった方法があるのかを紹介していきましょう。
車検の値引き金額には限界がある
まず値引きの方法を紹介する前に、大前提として知っておいてもらいたいことがあります。
それは、車検の金額には限界があるということです。
車検にかかる費用のうち「重量税、自賠責、登録印紙代」は法定費用であるため100%値引きの対象にはなりません。
いま流行りの格安車検を見てみると、軽自動車でエコカー減税適用、さらに何も追加整備が発生しないという条件ならば、3万円台からとなっています。
そこから先述した法定費用を差し引くと、業者に支払う費用は1万円にも満たないということになってしまいます。
私は整備士で自動車検査員ですから、幾分か業者側の意見に聞こえてしまうかもしれませんが、例え1時間以内に車検を終えることができたとしても、人の命を預かっていると言ってもいい内容の作業であることを考えると、これは少しばかり無理があると言える金額です。
もちろん業者側は過度な負荷がかからない工夫を行い、適正価格となるように配慮してはいますが、ギリギリであることに変わりはありません。
つまり、最安3万円台の車検が可能な場合は、値引きはないと思っていいでしょう。
また、国家資格の自動車整備士とはいえ、同じ人間です。
料金に見合った時間で終わらせることを意識せざるを得なくなってしまう状況では、見落としや最悪の場合には作業ミスに繋がらないとも言い切れません。
よって値引きにばかり目を向けすぎて、大切な安全を疎かにするようなことにならないように注意しましょう。
早めに予約をする
さて、大前提を知ってもらったので、いよいよ値引き方法について紹介していきましょう。
まず、最も基本的で重要なことが、車検の期日(車検証の有効期限)をしっかり把握し、できるだけ早く行動に移すことです。
こうした些細なことが、車検を安く、また、値引きをしてもらう上で大切になります。
顧客の囲い込み
業者は車検の実施台数を確保するため、できるだけ早く予約取ることに重点を置いています。
そこでさまざまな割引サービスの中で、ほとんどの業者が導入し、大きな割引金額を設定しているのが「早期割引」です。
後述する相見積りにも関係してくることですし、ユーザー側も費用、便利さ、安心など、何を重視するかを冷静に考える時間を取ることができ、より安心で納得した車検を受けることができます。
もちろん車検該当月でなければ、キャンセル料などが発生することはまずありません。
業者側も便利に使える
あまり大きな声では言えませんが、この予約日によって割引金額が変わる「早期割引」は、業者にとっても使いやすい値引きサービスなのです。
「初回車検」や「リピート割引」などは、該当しているか否かは明確に分かってしまいますが、予約した日はなかなかわかりません。
要するに、現場スタッフの裁量で多めに割引を増やしても、上司にバレづらいため、3か月前3,000円の割引を半年前5,000円にサービスするということがしやすくなるわけです。
ただし、これはあくまでその場のスタッフの判断ですので、過度な期待はしないようにしましょう。
相対的な費用対効果を考える
上記のように、どうしても値引きできない項目や、値引きできる金額については限界があります。
また、注意しなくてはいけないポイントとして、値引きを大きくつける代わりに、過剰な見積りを出されてしまうという危険もあるのです。
そこで大事になってくるのが、相対的および総合的な費用対効果を見極めることになります。
ここからは、そのポイントについて紹介していきましょう。
単体の修理作業と抱き合わせ
正確には値引きと少しズレてしまうかもしれませんが、車検の時に気になっていた箇所の修理や、交換を同時に依頼するというのも、お得にできるポイントです。
整備作業というのは、ある部品を交換する際、いくつかの工程を経ていく中で当然いくつかの直接関係のない部品を取り外すことが良くあります。
分かりやすい例を挙げると、タイヤ交換を車検と同時に行う場合です。
タイヤ交換の時には当然タイヤを外しますが、法定点検の付いた車検を実施する場合も、必ずタイヤの脱着を行います。
つまり、車検とタイヤ交換を同時に行うことで、タイヤ交換の工賃と単体で作業する時に比べ割引して貰えたり、時にはサービスして貰えたりすることがあるのです。
また、その逆で、どこかの部品を交換する工賃や部品代の値引きができない代わりに、車検費用の中で相殺させるなどの対応をとることもあります。
このように「車検+なにか」という具合に、複数の内容を同時発注することで、工場側にとっては値引きをサービスできる余白が生まれることがあるのです。
本当にお得な値引きかを見極める
「○○割引」「△△割引」など、工場によってはユーザー獲得のため、ありとあらゆる値引きサービスを広告に掲載し、さらに最初の見積に提示してくる場合があります。
もちろん割引サービスは多いに越したことはありませんが、割引の多さだけに捉われ過ぎるがあまり、レベルの低い作業や低品質の車検で終わってしまっては車検後にトラブルとなり、余計な出費がかさむ原因にもなりかねません。
そうなってしまっては、車検の際に付与された割引サービスや値引きは、全くの無意味だったことになってしまいます。
その工場のレベルは一般の方にはわかり辛いかもしれませんが、お店や工場、そこにいるスタッフの雰囲気などでも十分に質の判断をする有効な材料になります。
どんなことでもそうですが、本質を逸脱した過剰なサービスや値引きは、本当にお得な値引きとは言えないのです。
オマケをつけてもらう
なんとも稚拙な表現になってしまいましたが、オマケも立派な値引きの一種であると私は考えています。
見積や請求書(納品書)については、一定期間の保管が義務付けられているので、無理に行った値引きなどを工場の上司にあまり見られたくないというのが本音です。
しかも納品書に関しては各陸運支局の監査対象になっており、不自然な値引きや作業項目は指摘されてしまう可能性があるため、値引きなどには限界があります。
だからこそ実際の車検作業内容での値引きが難しいようであれば、車検以外の内容をサービスしようと考えるわけです。
例として、ガソリンスタンドなどであれば、納車時に上位の洗車メニューをサービスしてもらう、予約特典のBOXティッシュを増量してもらうなどがあります。
小さいことかもしれませんが、少しでもお得にするためには外せないポイントです。
相見積を取る
相見積を取ることは、様々な点で有効な手段のひとつと言えますが、値引きについても同じことが言えます。
そのため、できるだけ多くの店舗を効率よく回り、中身のある見積を貰うことが大切です。
ここで車検をしたい旨を伝える
「ここに来る前、Aっていうガソリンスタンドでこの見積額を出されたんだけど、もうちょっと安くならない?」
普通はこういう切り口で、値引きや見積交渉をする方が多いと思います。もちろん間違いではないですし、業者側も「何とかしよう」としてくれるでしょう。
でも、そこは人間同士、「ただ安くしてくれと言われても、できないものはできない」のが本音だということを理解し、「実績や安心感を得るために、ぜひともここで車検を行いたい」という意思を伝えることが重要になります。
特に整備士は、職人気質の人間ばかりです。
皆、ユーザーの安全と、ユーザーのためになることと理解すれば、自ずと新たな発想が生まれ「総額は変えられないが、こんなサービスを付けます。」、「整備内容の変更はできないが、整備方法を工夫することで金額を抑えられます。」という提案を引き出しやすくなります。
まとめ
ほとんどの業者は、いくつもの割引サービスを用意していて、先述した通り、その中で最も割引金額が大きいのは「早期予約割引」です。
また、いくつかの値引きを受けるポイントも紹介してきましたが、やはり安ければなんでもOKというのはあまりオススメできません。
車検で行う作業はもちろん、車検の確認(検査)そのものの内容は、人の生命に関わると言っても過言ではないのです。
目先の金額だけに捉われることが無く、同時に「安心、安全」にもこだわりたいものです。
したがって、概算でも良いのでできるだけ早い段階で実際に工場に出向き、見積りを取ることが、多くの値引きを受けるためにも、「安心、安全」な車検を受けるためにも、抑えてみてください。