ハマー車に乗っている方で車検を受けようと考えている場合、まず依頼先の候補に上がるのは購入した店舗か、近所のハマーディーラーだと思います。
けれどディーラーの車検には、どうしても高くなるというイメージが否めません。
そしてハマーを含めたアメ車の車検ですが、車検料金の相場が車体価格の10分の1に上るのが普通とも言われています。300万円の車両ならば車検総額は30万円、500万円ならば50万円にまで上ることになります。
こういった逸話は本当なのでしょうか?そのせいで、ディーラーでの車検を躊躇している方もいるのではないでしょうか?
しかし、ディーラーの車検が他の整備工場などと比べて高いのには、相応の理由というものがある上に、とある「輸入車オーナー独特の心理」が、車検総額を跳ね上げる要因となっている一面も知っておくべきでしょう(詳細は後述します)
その点を理解すれば、きちんと納得して車検を通すことに繋がるというものです。
そこで今回は、ハマー系列ディーラーでの車検の詳細と、実際の相場について紹介していきますので、ディーラーで車検を受ける方は参考にしてみてください。
規格外の車ハマーの魅力とは?

By: Andrew Fecheyr
まずはハマーとは一体どういう車なのかをきちんと知らない方も多いかと思いますので、そこから解説していくとしましょう。
ハマーがどういう特徴を持った車かを知ることで、車検に出した時にはどこまで予防整備をしておいたら良いのか、またはハマーから乗り換える、その逆でハマーに乗りたいと思っている方の参考になると思いますので参考にしてみてください。
民生車第1弾「ハマーH1」
ハマーH1は、もともとアメリカ軍で使用されていたハンヴィーの基本的な部品を共有化して作られた民生車で、そのきっかけは映画ターミネーターでおなじみにアーノルド・シュワルツェネッガー氏の要望によるものでした。
簡単に言えば、もともと軍隊用に設計した車両の一部を変更し、軍隊以外で使用できるようにした車のこと。
生産はAMゼネラル社が行い、1992年~2006年まで販売されています。
一般的な市販車にはない独特でワイルドな外見はもちろん、もともと軍用に設計されていたハンヴィーと共通部品が多いだけに、「ハブリダクション」に代表される特殊な機構や、いわゆるホンモノ感満載の走行性能が人気の秘訣でした。
GM時代「ハマーH2」
AMゼネラルは、経営難からハマーという名称の使用権をGM(ゼネラルモーターズ)に売却。
その後GMにより新たに設計された新型ハマーがH2として、デビューすることになります。
このハマーH2は名前こそハマーとなっていますが、軍用車ベースのH1とは全く別の車となり、走行性能は他車種と代わり映えのない内容で「ハマーはH1しか認めない」というハマーファンがいるほどです。
しかし、先代の面影を踏襲しながらも、高級感と快適性を兼ね備えたH2は大ヒット。
日本ではH1よりも、このH2のほうをかなり多く見かけるほどになりました。
さらに乗用車になった「ハマーH3」
先代のH2より、さらに小型化したモデルがH3です。
小さくなったのはボディだけではなく、発売開始の当初は3.5L直列5気筒エンジンで、アメリカ車の代名詞とも言える大排気量V型エンジンではありませんでした。
そのためアメリカ車らしいフィーリングはなく非力であったため、のちに5.3L V型8気筒エンジンが搭載されるモデルが登場しますが、結果的にはあまり良い評価は有られませんでした。
しかし、最小回転半家は5.8mであるトヨタのランドクルーザープラドよりも0.2m小さい5.6mであったことから、道幅の狭い日本では「人と違った個性的なクルマ」として一定の人気を獲得しています。
ハマーディーラーでの車検

引用:http://hummerservice.com/
さて、本題の車検に移っていきましょう。
自動車メーカーにとって大切なアフターサービスは数多くありますが、中でも一般ユーザーの関心が最も高いのが車検です。
2017年現在、ハマーの新車は販売されておらず、アフターサービスに関しては、三井物産系ディーラーや、ヤナセなど、キャデラックやシボレーを取り扱っているディーラーで受ける形になっています。
ハマーを持ち上げられる設備があるだけでも特別
私は15年以上、自動車整備の世界に身を置いてきましたが、ハマーはほとんど触ったことがありません。
もともと台数が多くないということもありますが、設備的にハマーをリフトアップできない工場にいたからというのが一番の理由です。
何故そうした設備が必須なのかというと、ハマーという車が他の車に比べて規格外であるからに他なりません。
オイル交換やタイヤ交換など、メンテナンス作業は行ったことはもちろんありますが、ハマーやエスカレードなどのフルサイズSUVは、その大きさもさることながら、重量が最大のネックです。
レクサスやランドクルーザーなどの一部の車種を除いて、車両重量が2.5トンを超える国産車はほとんどありません。
そのため整備工場に導入されているカーリフトの最大許容重量は2.5トンばかりで、車検を受けたくとも受けられないのです。
その点、ハマー正規ディーラーのカーリフトは3.0トンや3.5トンというクラスのものを導入しているため、車が持ち上げられないということはありません。
ハマー専用の工具類
どのメーカーの車両でも同じですが、自動車を整備していくと、専用工具が必要になる場面があります。
例えば、ボルトなどで固定されておらず、特殊な形をした専用のプーラーという工具であったり、日本車にはない規格のボルトサイズであったり、その工具がなければ作業がまったく行えないことも珍しくありません。
また、既存の工具を加工するなど、なんとか工夫して作業ができたとしても、余計な箇所の脱着作業がかかってしまい、作業時間が大幅にかかります。
その点、ハマー正規ディーラーには専用工具が揃えられているため、スムーズな整備ができるためロスが少なく安心です。
ハマー専用の診断機
いま街中を走っているほとんどの車には多くの電子部品が装着され、さらに、それぞれの構成部位には、専用の制御コンピューターが搭載されています。
そうしたコンピューターは、ただ単独で制御しているわけではなく、すべてのコンピューターが相互にデータのやり取りを行い、複雑で高度な制御を行い、本来の性能を維持しているのです。
また、コンピューターには自己診断機能が備わっているため、不具合の発生を運転者に通知したり、そのエラーを記憶したりすることができます。
しかしその複雑さゆえ、根本の不具合が判断しづらい場合も少なくありません。
そのため診断機には、ただ単純にエラーメモリーを読み出すだけでなく、制御システムの奥深くにまで入り込み、リアルタイムにデータを抽出することが望まれるわけです。
けれど市販されている汎用の診断機では、システムの奥深くまで入り込めないことも少なくありません。
そうなると診断自体に時間がかかってしまったり、大事なポイントを見落としてしまう恐れがあります。
その点、正規ディーラーに完備されている専用テスターなら見逃すことはなく、無駄なく迅速かつ確実な診断と整備が行えるのです。
安心を買う
上記に挙げた、専用工具や専用診断機を使用するということ以上に、ハマーディーラーに勤務するメカニックや店舗スタッフの存在こそ、正規ディーラーに車検を依頼する最大のメリットです。
ご存知の方も多いかもしれませんが、現在ハマーというブランドは、事実上消滅してしまっています。
そのため、特にH1と呼ばれる初期の市販車は純正部品の入手が困難な状態です。
もちろんH1に限らず、その後の車種でも部品不足は見受けられます。
そうなると、車検に通らない項目を修理したくとも、部品がなければ当然、修理することはできません。
ハマーが好きでベテランのハマーユーザーの方ならいざ知らず、イチ個人で入手困難な部品を探すのは至難の業です。
そういった不測の事態に陥ってしまった場合に、やはりまず頼りにできるのは正規ディーラーのスタッフに他なりません。
ディーラー車検は割高感が否めませんが、車検の品質はもちろん豊富な経験と知識を持っているスタッフがいることの安心感に払うと考えれば、特だと言えます。
ハマーディーラー車検基本料金

By: nakhon100
続いては、ハマーディーラーの車検基本料金と国産車ディーラーの車検基本料金を比較してみましょう。
なお、比較対象とする国産は「トヨタランドクルーザー」とし、ともに法定費用と追加整備費用を除いた金額です。
トヨタディーラー車検基本料金(ランドクルーザー)
基本点検料金・・・¥20,412
継続検査料・・・¥8,640
手続き代行料・・・¥8,640
合計・・・¥37,694
ハマーディーラー車検基本料金(H2)
車検点検基本料・・・¥73,440
保安確認検査費用・・・¥12,960
車検代行手数料・・・¥9,720
合計・・・¥96,120
今回サンプルとして抽出した価格では、約2.5倍の違いが出ました。
ただし、トヨタディーラーの価格は同じ首都圏のトヨタディーラーと比べて約7,000円安かったため、余計に金額差が目立つ結果となっています。
もう一つ注意していただきたいのが、上記はハマーH2での試算であるということです。
もしH1に乗っている場合は金額は変わってくるはずですし、例えディーラーであってもH1は受け付けてもらえない可能性がありますので、時間に余裕を持って行動することをオススメします。
車検総額は上記の店頭表示価格だけで済む?(答えはNo!)
※尚、上記の金額に加えて、必ず支払わなければならない法定費用(自賠責保険2年分、3万3千円程度、自動車重量税2年分、約20,000円~、印紙代等…通常は合計6~7万円前後)がプラスされることを忘れないでください。
※また、上記金額は劣化パーツ交換、消耗品交換などを全く行わなかった場合の金額ですので、実際の車検時にパーツ交換や消耗品交換があった際は、更にその分のパーツ代、消耗品代、工賃が上乗せされていきます(特に輸入車の場合、故障がなくとも、5万~10万円前後の交換費用は見込んでおくべきでしょう)。
