初めてユーザー車検を受けようと思っている方にとって、未経験の検査内容は不安が尽きません。
このページでは、ユーザー車検で実際に検査が行われる「検査コース」での一連の流れはもちろん、どういった検査なのかを紹介していきたいと思います。
ユーザー車検に挑戦したいけれどなかなか勇気が出ないといった方に、少しでも参考にしていただければ幸いです。
なお、掲載している内容は、地域や検査場により若干の違いがありますので、ご了承ください。
ユーザー車検検査場内での流れ
まずは、ユーザー車検当日の流れを簡単に紹介しましょう。
- 必要書類の準備・作成・提出
- 検査コースでの検査
- 新しい車検証と車検ステッカー(検査標章)の発行
1.必要書類の準備・作成・提出
ユーザー車検に必要な書類(主に7種類…1.自動車検査証 2.自賠責保険証明書 3.自動車税納税証明書 4.点検整備記録簿 5.継続検査申請書 6.自動車検査票7.自動車重量税納付書。1~4は自分で持参する書類で、5~7は車検当日に入手して記入すればよい書類です)は下記のページにまとめてありますので、必要な書類は事前に必ず持参するようにチェックを怠らないでください。
尚、自動車検査票のように、車検場で当日入手できる書類もありますが、車検証のように持参するのを忘れたらアウトという書類もありますので、要注意です。

また、書類の提出順などは、車検場の案内看板に大きな番号付きで書いてあることが普通ですが、わからない場合は職員に気軽に尋ねれば、親切に教えてくれるはずです。
2.検査コースのでの検査流れ
書類の用意が終わったら、実際の検査コース内に愛車を乗り入れて順番待ちをしながら検査を受けることになります。ここでは検査コース全体の流れや、ポイントなどを紹介していきましょう。
検査コースへ
検査ラインは、そのコースごとに対応できる車種や、検査の種類が違いますので、空いているコースを選んで並ぶのではなく、受付時にどのコースに並ぶか指示されますので、その指示に従って並ぶようにしましょう。
1.同一性の確認・外観検査
検査ラインに入る前に、検査官がやってきて行われる検査です。
検査内容は、書類チェック、外観の損傷、灯火類、ワイパー、ホーン、同一性の確認、メーター内警告灯、車内装備品と最も項目数が多くなりますが、灯火類、ワイパー(ウォッシャー)、ホーンは検査官の指示に従って1つずつこなしていけば問題ありません。
2.黒煙(ディーゼル車のみ)
エンジンの回転を上げ、排気ガス中の黒煙濃度を検査します。
機器の取り付けや検査事態は検査官がやってくれますので、手出しは無用です。
3.サイドスリップ
フロントタイヤの横滑り量を、専用のテスターの上を通過することで測定するものです。
検査場の床には線が引かれていますので、線に沿って車を真っ直ぐにし、停止線で一旦停止、電光掲示板に「ゆっくり前進」という表示が出るまで待ちます。
テスターの上を通過する際は、できるだけゆっくり(歩くくらいの速度)進みましょう。
操作時はハンドルから手を放し、ブレーキも一定にするよう心がけます。慣れない方はハンドルを強く握ってしまったり、速度を調節しようとしてブレーキを踏み増してしまったりしますが、そのような操作は正確な数値が測れず落ちる可能性が高くなりますので注意しましょう。
4.ブレーキ
テスターのローラーでタイヤを回し、ブレーキをかけることでローラーの回転を止め、制動力の検査を行うという内容です。
前、後ろの順番で、まずはフットブレーキの検査を行います。
所定の位置に停止したら、ギヤーをニュートラルにし、パーキングブレーキは解除して待機。
その後、電光掲示板に「ブレーキをふむ」という指示が出たらブレーキをしっかり踏みます。
前後のフットブレーキ検査が終わると、次は駐車ブレーキです。これも掲示板に指示が出ますのでその通りに行います。
ブレーキの検査では、制動力のほか、引きずり(ブレーキが解除できているか)と、左右差の検査も行われています。インターネット上でよく紹介されている方法では、とにかく強く踏むとされていますが、それは間違いです。
現代の自動車で、検査場に来るまでの走行がおぼつかないような機構的な不具合がない限り、制動力が足らず不合格になることはありません。
ブレーキで落ちるもっとも多い原因は左右差です。左右差を出づらくするコツはガツンと一気に踏み込むのではなく、グググっとゆっくり踏んでいくことです。
5.スピードメーター
スピードメーターに表示されている速度と、実際の速度の誤差を測定するというものです。
電光掲示板に指示が出たら、ゆっくりと加速し、スピードメーターが40km/hを指したタイミングでパッシング、もしくは予め天井から吊るされている測定用スイッチを押します。
検査ライン上の事故で最も多く起きるのが、スピードテスター上での事故です。慣れていない方が初めてテスター上で加速すると、車の動きが普段とは全く違うため慌ててハンドルを切ってしまったり、急ブレーキをかけてしまったりすることで事故は起きます。
現在検査ラインに導入されているテスターには、飛び出しを防止するためにいくつものローラーが設置され、車の向きはある程度、自動的に調整されます。
普段感じることのない挙動かもしれませんが、ハンドルをしっかり持ち、ゆっくり加速、ゆっくり停止を心掛けることが大切です。
6.光軸検査(ヘッドライト)
ヘッドライトの光度(明るさ)と光軸(向き)を測定するというものです。
この検査はヘッドライトを点け(下向き)そのまま待っていれば、テスターが自動的に検査を行ってくれます。
以前ユーザー車検を含むいわゆる持ち込みでのヘッドライトの検査は、ハイビームで行われてきましたが、平成27年9月以降の検査では、平成10年9月以降に製造された車はすべてロービーム(下向き)で検査されるようになりました。
しかし紆余曲折を経て、現状ではロービームで合格できなかった場合は、ハイビームでの検査に切り替えて再測定を行い、ハイビームが基準値内であれば合格です。
ただし、法律上はロービームでの検査となっていることには変わりなく、あくまでも救済措置的な要素が強く、検査場によっても対応が分かれています。
そのため、いずれ平成10年9月以降に製造された車は、ハイビームでの検査はできなくなる可能性がありますので注意しましょう。
7.排気ガス濃度(ガソリン車のみ)
排気ガスに含まれるCO(一酸化炭素)とHC(炭化水素)濃度を検査するというものです。
電光掲示板の指示に従い、排気ガステスター横にあるプローブ(細長い棒状の物)を60cm以上差し込み、そのまま待っていると自動的に測定されます。
エンジンが不調の場合などでは不完全燃焼が起こり、排気ガス中のCOとHCの濃度が高くなって不合格になることがありますが、最近(15年経過)の自動車で、特にエンジンに不調を感じていなければ、不合格になることはほとんどありません。
8.下回り検査
検査台の上に車を乗せ、通称「ホリ」と呼ばれる地下に検査官が潜り、車の下回りの検査が行われます。
また、検査台自体が大きく振動させ、足回りなどにガタなどがないかも検査されます。
この際に指摘されやすい内容は、オイルやグリスの漏れ、サスペンションなどのブーツ類です。
3.新しい車検証と車検ステッカー(検査標章)の発行
総合判定室(通称小屋)に書類一式を提出し、終了です。
ここでは最終的な書類の不備、全ての検査結果を確認し、記録漏れなどがなければ「審査結果通知欄」に判が押され、晴れて合格となります。
その後、受付などを行った建物に戻り書類一式を提出し、新しい車検証と車検ステッカー(検査標章)を受け取れば、すべて終了です。

※写真は平成28年12月までの旧式デザイン
車検ステッカーは自分自身の手で、愛車に貼り付けることになります。真新しい車検ステッカーを張り付ける時は、ユーザー車検を自分自身の手でやりきったという、まさに至福の瞬間でもあります。


検査票の記録について
それぞれの検査が終了するたびに、自動車検査票に検査結果を印字していきますが、3,サイドスリップ~6,光軸検査の検査終了時に1回、7,排気ガス濃度検査後に1回、8,下回り検査後に1回と計3回印字するパターンが多いようですが、これは地域や使用するコースにより若干違いがあります。
私がいつも使っている検査場では、もう1回印字しなくてはならないのですが、すっかり印字を忘れ、そのために再検査(不合格)になった苦い経験があります。
初めての方は、下記でも触れている検査ラインの見学をしてから、実際の検査に臨まれることをオススメします。
ユーザー車検を受ける時はリラックスする
特に初めてユーザー車検に挑戦するという方は、学校の入学試験や運転免許の試験と同じように緊張すると思いますが、とにかく肩の力を抜いてリラックスすることが大切です。
無理をしてなかなか次の検査に移れないといったほうが、後ろの方にも迷惑になりますし、陸運支局というといかにもお役所的な雰囲気があるかもしれません。
しかし、実際勤務しているスタッフや検査官は特に冷たいようなことはありませんので、分からないことがあれば遠慮なく質問してください。
また、受付や、外観検査のときに初めてであることを伝えると、検査官が1人ついて一緒に検査を行ってくれる場合もあります。
こうしたアシストなどをうまく活用し、少しずつリラックスしていきましょう。
初めての方は見学可能
私はいつも人からユーザー車検についてアドバイスを求められた時には、2ラウンドの受験を勧めています。
その理由は、検査ラインは誰でも見学ができるからです。
特に初めての場合は、少し早めに検査場へ行き、1度検査ラインの見学を行うことをオススメします。
予備検査場(テスター屋)の活用
検査場の近くには、通称テスター屋さんと呼ばれる予備検査場があります。
ここでは検査場と同じ設備を使い、不合格になりやすい箇所の確認や調整ができるのはもちろん、事前にどのような検査が行われるのかを疑似体験することが可能です。
費用は、ヘッドライト、サイドスリップなどの単体検査で1,000円~2,500円程度、車検と同じ全項目を行って5,000円~8,000円程度かかりますが、初めてで不安だという方にはオススメの方法になります。