アストンマーティン車に乗っている方で車検を受けようと考えている場合、まず依頼先の候補に上がるのは購入した店舗か、近所のアストンマーティンディーラーだと思います(非常に数が少ないディーラー店舗がご近所にある場合ならば…なのですが)。
けれど、ディーラーの車検には、どうしても高くなるというイメージが否めません。特に、輸入車のディーラー車検代金は車両価格の10分の1は覚悟すべきとも言われていますが、2000万円以上の車両価格が当たり前のアストンマーティンならば、200万円もの車検代金がかかる可能性があるということになるのでしょうか。
そのあたりの真偽についても確かめてみようと思います。
実は、ディーラーの車検が他の整備工場などと比べて高いのには、相応の理由というものがある上に、とある「輸入車オーナー独特の心理」が、車検総額を跳ね上げる要因となっている一面も知っておくべきでしょう(詳細は後述します)
その点を理解すれば、きちんと納得して車検を通すことに繋がるというものです。
そこで今回は、アストンマーティン系列ディーラーでの車検の詳細と、実際の相場について紹介していきますので、ディーラーで車検を受ける方は参考にしてみてください。
アストンマーティンの魅力

引用:http://www.astonmartin.com
車検の話に入る前に、アストンマーティンという車について紹介していきましょう。
新車販売価格こそ日産R35 GT-Rと同等ながら、車検などの維持費がとても高額になってしまうアストンマーティン。
日本では映画007で、主人公ジェームスボンドが乗るいわゆる「ボンドカー」として、V12ヴァンキッシュやDBSなどが有名ですが、イギリスの老舗メーカーとして100年以上の歴史があります。

引用:http://cdntbs.astonmartin.com
そんなアストンマーティンの上位モデルに搭載されるエンジンは、自然吸気のV型12気筒6.0リッターエンジンで、最高出力595馬力(日本仕様は580馬力)!
ツインターボで加給されたV型12気筒5.2リッターエンジンでは608馬力にもなり、フェラーリやランボルギーニなどの代表的なスーパーカーと変わらない動力性能を誇るのです。
英国紳士のコダワリ
あまり車に詳しくない方からすると、フェラーリやランボルギーニのように、いかにも速いスーパーカーといった派手さが無く、少々地味に感じるかもしれませんが、その地味さこそアストンマーティンの魅力の象徴なのです。
アストンマーティンは創業以来スポーツカーしか作ってきませんでした.
さらに品質に徹底的にこだわり、エンジンはすべて自社生産、加えて今でも製造工程の大半が職人の手による「ハンドメイド」です。
となると当然1台あたりの生産コストは高額になり、高価な少数生産では経営も常に不安定となり、数々の資本参加に入ってきた歴史があります。
しかし、そのこだわりは随所に見ることができ、高出力のエンジンもさることながら、受注生産ならではのオーナーのこだわりが反映できる内装です。
厳選された高品質な素材を使い、その組み合わせは10万通りとも言われ、自分だけの1台に仕上げてくれます。
アストンマーティンディーラーでの車検

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それでは本題の車検について紹介していきましょう。
アストンマーティンの正規ディーラーで車検を受けるメリットにはどのようなことがあるのか、いくつか例を挙げてみていきたいと思います。
アストンマーティン専用ファクトリー
アストンマーティン正規ディーラーの整備工場は、アストンマーティン本社のデザインプログラムに準じた造りとなっており、機能面だけでなく、ショールームと同じくクリーンでシンプルな空間設計がなされています。
洗練されたクリーンな整備工場というのは、ただ高級なイメージを持たせるためだけに作られているわけではありません。
これは国産車で言えばレクサスディーラーや、最新の整備工場に多く見られる特徴で、ただの見た目だけではなく、下記のような多くのメリットがあります。
いわゆる整理整頓がしっかりされている
どの業界でも共通していることですが、仕事をする上での基本、仕事のできる整備士は汚れ放題のツナギを着ることはありません。
必ずと言っていいほど、身の回りの整理整頓がきちんとしているものです。
いわゆる5Sと呼ばれるものですが、それができていない人間にいい仕事はできないというのが整備士における共通認識となっています。
整備ミスの抑制
1日の終わりや、決められた時間に掃除を行い、フラットな状態に作業環境を戻すことで、常に質の高い整備を提供することに繋がります。
また、きちん清掃が行き届いていれば、床に垂れたオイルに気付くことができず踏んでしまうということもありません。
もし気が付かず車に乗り込んでしまったら、当然オイルの汚れを大切なユーザーの車に付けてしまうことになります。
常にクリーンな状態が保たれた床であれば、例え1滴のエンジンオイルにでも容易に気が付くことができ、その場ですぐにふき取ることができるのです。
専用診断機や専用ツール
世界屈指の超高性能なラグジュアリースポーツカーであるアストンマーティンには、当然のことながら多くの電子部品が装着され、それらの電子部品はいくつものコンピューターによって制御されています。
しかも、エンジンのコンピューターはエンジンを、エアコンのコンピューターはエアコンをといったように、それぞれのコンピューターがただ単独で制御しているわけではありません。
エンジン、ミッション、サスペンション、エアコンにエアバックなど、各コンピューターが相互に通信を行い、複雑で高度な制御を行うことでその性能を維持しています。
そのため、どこか一か所でも不調を起こしてしまうと、場合によっては一見何の関係も無いような離れた箇所に影響を及ぼしてしまうことがあり、近年の自動車整備は複雑で高度な設備が必要になる一方です。
つまり、迅速で確実な診断や整備を行うためには、制御システムの深いところに入り込むことができる専用診断機は必要不可欠になります。
そのため、アストンマーティン車専用のツールを常備している正規ディーラーにしか提供できない安心があるわけです。
アストンマーティンのテクニシャン
アストンマーティン正規ディーラーのテクニシャン(整備士)たちは、アストンマーティン・ラゴンダ社が定めるトレーニングを受けています。
イギリスはゲイドンにあるファクトリーでのトレーニングと、トレーナーが来日をして行うトレーニングの二形式があり、いずれかの方法で常に最新の知識とノウハウを養っているのです。
さらに、専用診断機や専用ツールの使用方法から事務処理までトレーニング内容は多岐にわたり、万全の教育体制が敷かれています。
また、アストンマーティンには、ラゴンダ社認定技術者組合員資格があり、サービス技術の向上を目指すテクニシャンは、資格取得のため、日頃の業務の中でも常に高い意識を持ち続けられる環境にあります。
こうした環境が、正規ディーラーの質の高い整備に繋がっていくのです。
そして、私のように国産車を中心に整備を行ってきた者としては、様々な高級スポーツカーの中でも、アストンマーティンに関しては、正直かなり敷居が高く、オイル交換ですら受け付けていない整備工場も少なくありません。
つまり、それだけアストンマーティンの整備には高い専門性が求められるのです。
安心のメーカー保証延長
新車購入から3年間および車両の耐食性に関する保証は、10年間どちらも走行距離無制限のメーカー保証が付帯され安心ですが、3年を過ぎてしまうと、万が一の故障が起きた時の費用は全てユーザーの自己負担となります。
アストンマーティンディーラーでは、その保証期間を1~2年間延長できる「アストンマーティン・エクステンディッドワランティー」と呼ばれるアストンマーティンの延長保証システムに加入することが可能です。
これに加入しておけば、高額になりがちなアストンマーティン車を維持する上で、大きな安心を得ることができます。
アストンマーティンディーラー車検基本料金

引用:http://www.astonmartin.com/
それでは、アストンマーティンディーラーの車検基本料金について触れていきましょう。
アストンマーティンの新車価格は約1,500万円~3500万円超と、世界でも屈指の超高級車スポーツカーです。
そのため、なかなか国産車との単純な比較はできませんが、アストンマーティンディーラーの車検基本料金と国産車ディーラーでの車検基本料金を比較してみたいと思います。
なお、ともに法定費用と追加整備費用を除いた金額です。
トヨタディーラー車検基本料金(クラウンなど)
24ヶ月点検基本料金・・・¥24,994
継続検査料・・・¥10,800
手続き代行料・・・¥9,720
合計・・・¥45,514
日産ディーラー車検基本料金(フーガなど)
24ヶ月点検基本料金・・・¥27,000
保安確認検査料・・・¥7,560
検査代行手数料・・・¥15,120
合計・・・¥49,680
日産ディーラー車検基本料金(R35 GT-R)
24ヶ月点検基本料金・・・¥65,556
保安確認検査料・・・¥8,640
検査代行手数料・・・¥15,120
合計・・・¥89,316
アストンマーティンディーラー車検基本料金(V8 ヴァンテージ)
車検整備基本工賃・・・¥88,800
完成検査機器費用・・・¥14,250
車検代行手数料・・・¥60,000
合計・・・¥163,050
相当金額は高いであろうと予想し、今回は比較対象としてR35 GT-Rのディーラー車検基本料もサンプリングしてみましたが、日本を代表するスーパーカーでも全く歯が立たない程の金額でした。
相場と言われる1.5倍を飛び越えて、およそ2倍の差が付いたのは、さすがはアストンマーティンと言うべきでしょう。
車検総額は上記の店頭表示価格だけで済む?(答えはNo!)
※尚、上記の金額に加えて、必ず支払わなければならない法定費用(自賠責保険2年分、3万3千円程度、自動車重量税2年分、約20,000円~、印紙代等…通常は合計6~7万円前後)がプラスされることを忘れないでください。
※また、上記金額は劣化パーツ交換、消耗品交換などを全く行わなかった場合の金額ですので、実際の車検時にパーツ交換や消耗品交換があった際は、更にその分のパーツ代、消耗品代、工賃が上乗せされていきます(特に輸入車の場合、故障がなくとも、5万~10万円前後の交換費用は見込んでおくべきでしょう)。

なぜ、アストンマーティンのディーラー車検代金は高いのか?

By: Yasser Alghofily
上記のディーラー車検代金はあくまで最低限の基本料金であり、実際は消耗品の交換、パーツ交換などが追加整備されることも多く、実際の車検代金はさらに数十万~100万程度アップしてもおかしくありません。
なぜこのようにアストンマーティンのディーラー車検代金は高いのでしょうか?
クラフトマンによるハンドメイドという高コスト体質の車両は、パーツや消耗品1つ1つが非常に高価となる。
現代の車は高級車であれ、多数の車両間(ブランド間)で様々なパーツを共通利用する大量生産が基本なっています。しかし、昔ながらのハンドメイドによる高級路線を突き詰めているアストンマーティンでは、独自のオリジナル純正パーツを多数利用することで、その高級ブランドイメージを維持しています(※実際は内装などでジャガー車両との共通パーツも利用しています)。
ただでさえ輸送費等でコストがかさむ上、高い税金ともともと高いパーツ代金が相まって、日本国内に車両(パーツ)が入ってくるころには、本国で販売されているよりもさらに高級高額なパーツに変身していくわけです。
例えば、消耗品の代表であるブレーキパッド1つの交換ですら、カーボン製ブレーキパッドならば100万円を優に超える価格がついていますし、クラッチが摩耗しているならば、それこそ更に高額の交換コストが必要となります。
ブレーキは車検上では特にチェックが厳しくみられる箇所であるため、仮にブレーキパッドの消耗が激しく制動力が弱まっている車両の場合は、車検そのものが通りづらくなってしまうでしょう。
こういった高コストの純正パーツや純正消耗品を車検の際に多数交換するとならば、車検代金が100万円を超えて200万円に届いてしまうのも、頷ける話です。
しかも、アストンマーティンの特定車種(例えばDB11等)は車体がスタイリッシュな分、整備性などに優れているとはいえず(バッテリー位置がリアシート下にマウントされている等)、1度トラブルが起きると大がかりな分解整備が必要となるのがデフォルトです。
同じくDB11などは、ワイパーブレードの交換だけでもエンジンを下さなければならないなど、とにかく整備にお金がかかるメーカーです(そもそも、アストンマーティン自体が「保証」を是としないメーカーであるとも言えますし…)。
因みにDB11のディーラーオイル交換は1回15~20万円です。

日本人ならではの「ブランド信仰と見栄」が更に車検代金を釣り上げる。
そしてさらに、日本人特有(?)ではないかともいえる「ブランド信仰」と「見栄」が、悪い方へと働きがちになります。
アストンマーティンオーナーでいうと、周囲のオーナー仲間やディーラー関係者から「車検ごときでケチケチしているオーナー」と思われたくないという心理です。
当然、ディーラーサイドはそういったオーナーの心理を熟知しているわけで、ブランドマジックを使いながら「今回の車検ではいくつかパーツ交換もいたしましょう(当然、Noはないですよね?)」というスタンスで応対してきます。
それに対して見栄っ張りなオーナーほど「お任せします」の一言で、ディーラーからのパーツ交換提案をすべて受け入れがちになってしまうのです。
こういうことが重なり、更にアストンマーティンの車検代金は高額へとかさんでいくこととなります。
こういった、車検時にディーラー担当者との間で毎回起こる 「微妙な心理戦」が嫌で、車検前にはスパッと車両を売り払って、あっさり別の車を買う人がアストンマーティンをはじめとする輸入車オーナーには大勢いる ことも、よく知っておくべきでしょう。
アストンマーティンの車検代金を安くする方法

By: sacks08
さて、車両価格が2000万円越えが当たり前のアストンマーティンですが、さすがに多くの人にとって車両価格10分の1が車検代金ではやはりたまりません(「たかが100~200万とかそんなの気にしない」というアストンオーナーが多数いることも事実なのですが…)。
ここでは具体的にアストンマーティンの車検代金を安くする方法について記載しておきます。
1.見栄を完全に捨てて、車検見積りは細かい箇所まで自分でチェックする事を心掛ける。
誰でもできる簡単な方法として、ディーラー車検の見積りを「お任せします」の一言で済ますのではなく、1つ1つの項目、特に消耗品やパーツ交換についてチェックをして、冷静に可否を出すべきです。
じっくり考えれば「本当に今のタイミングで正規ディーラーの高額な料金で交換する必要があるパーツなのかどうか?」の答えが見えてくるはずです。
勿論、車両保安上必要な交換部品までケチろうというわけではありませんが、アストンマーティンに限らず「輸入車の車検代金でこんなに高額になった」と言っている人のほとんどが、詳細な見積もりチェックをせず、無駄なパーツ交換や消耗品交換の回避に失敗している人ばかりだからです。
その多くの起因は(先にふれた)「ブランドマジック」「ディーラーや周囲に対する見栄」であるため、下らない見栄を捨てて細かく明細をチェックする人物になることを心掛けるだけで、大幅にコストダウンが見えてきます。
2.ディーラー車検を止め、車検ショップや中古輸入車専門店での車検に切り替える。
そもそもディーラーで車検をうけるだけで、基本料金が高いのが当然とされています。ならば、思い切ってディーラーでの車検を止めて、車検専門店や工場を併設した中古輸入車ショップでの車検に切り替えるのも手です。単純にそれだけで基本料金が安くなります。
その上、一般車検専門店の場合は無駄にパーツ交換などの提案もしてこないばかりか(というより、下手にわからない高級パーツをいじくりたくないという事情もあります)、こちらが低コスト車検をしたい旨を告げるのに、ディーラー店舗でのような見栄を張る必要は一切ありません。
それだけでも気が楽になるというものです。
尚、一昔前の車検専門店は、整備技術や整備工具の関係で輸入車お断りの店も多かったのですが、最近では輸入車でも全然問題なく車検を受け付けてくれる専門店が非常に増えてきました。
3.車検そのものを止めて、アストンマーティン車が高値で売れる相場のうちに買換えをする。
そして、アストンマーティンのような高額車輛に最もお勧めなのが、高い車検そのものを止めてしまって、スッパリ車両を売却して軍資金を稼ぎ、別の新しい車を買ってしまうという方法です。
この方法ならば、100~200万円の車検代金がそのまま浮きつつ、更に、車検が切れる前というベストタイミングで車を販売することができて高額での売却が期待できるため、二重の意味でベネフィットがあります。
そもそも、アストンマーティンレベルの車両の場合は、何年も何年も節約しながら同じ車に乗り続けるという方法よりは、3年(中古車は2年)という車検が来るタイミング舞に、全く新しい車両に買い替えてしま方ずっとお得でもあり、且つ、メーカー側もそのような商品ライフサイクルを想定して販売しています。
実際、高額車輛は中古車になると値段落ちの幅も(国産車と比較して)非常に高くなってしまうために、3年程度乗ったらすぐに売却しないと、車検を折角通しても一気に売却価格が下がってしまい、結局損をしてしまうケースがよくありますので注意です。
尚、ディーラーで新車購入時に下取りを出す方法もありますが、しっかりと次の車両購入のための利益を残すならば、一括査定サイトを利用して、買取専門店複数の買取価格を同時に出させたうえで、最も高い店舗に車両を売るのが1番であることは、言うまでもありません。
尚、当方調査でアストンマーティン高額買取が出やすい査定サイトは下記となっています。
高額査定1位:かんたん車査定ガイド
高額査定2位:Goo買取
高額査定3位:ズバット車買い取り比較
まとめ – アストンマーティンで高額な車検代をわざわざ払うなら、車検タイミングで都度新しいクルマを買った方が良い
あまりに高額すぎて縁がなさそうなアストンマーティンですが、実は日本に「アストンマーティン・ジャパン・リミテッド」を2015年1月に新設し、アジアパシフィック地域で展開する事業の中心的な拠点としています。
それに伴いディーラー網もどんどん整備されており、これからアストンマーティンが日本国民に認知される地盤が築かれつつあるのです。
そうなっていけば車両価格はもちろん、車検や整備といったものの金額や工賃の低下が見込めます。
スーパーカーであるため、それでも手を出しにくい車であることに変わりはありませんが、所持している人にとっては従来よりも安価に整備を受けることが可能になるため、今後の動向に注目したいところです。
当方の総合的な判断としては、アストンマーティンクラスの高級車ならば、長期保有を目的として車検をわざわざ通すことはせず、車検タイミング内の高く売れるうちに高く売って、次の車に乗り換えたほうが、総額は得をするという結論に至っています。