シトロエン車に乗っている方で車検を受けようと考えている場合、まず依頼先の候補に上がるのは購入した店舗か、近所のシトロエンディーラーだと思います。
けれどディーラーの車検には、どうしても高くなるというイメージが否めません。
一般的に、国産車と比べて故障も多く、交換パーツ(純正パーツ)の価格相場も高いシトロエンをはじめとする輸入車の場合、車検費用は車体価格の10分の1程度が相場であるといわれています(車両価格が300万円なら車検費用は30万円前後)が、これは本当なのでしょうか。
こういった話がまことしやかに噂されるために、シトロエンディーラーでの車検を躊躇している方もいるのではないでしょうか?
しかし、ディーラーの車検が他の整備工場などと比べて高いのには、相応の理由というものがあります。
また、輸入車ディーラー車検が高額になりがちな別の理由に、輸入車ディーラー独特の心理も大きくかかわってきています(詳細は後述いたします)。
その点を理解すれば、きちんと納得して車検を通すことに繋がるというものです。
そこで今回は、シトロエン系列ディーラーでの車検の詳細と、実際の相場について紹介していきますので、ディーラーで車検を受ける方は参考にしてみてください。
シトロエンディーラーでの車検

引用:http://www.citroen.jp/
自動車メーカーにとって大切なアフターサービスは数多くありますが、中でも一般ユーザーの関心が最も高いのが車検です。
まずはシトロエンの車検への考え方、取り組み方について見ていきましょう。
専用故障診断機によるチェック
エンジンが性能を十分に発揮するためには、良い圧縮、良い混合気、良い火花の3要素が欠かせません。
電子制御と言われる自動車エンジンは、エンジンに欠かせない3要素に必要な情報を計測し、コンピューターで解析することで、点火時期や燃料噴射時期、及び噴射量などの制御を行っています。
そして現代の自動車はエンジンだけでなく、ミッションやエアコンなども電子制御化され、さらにエンジンのデータと融合させることで、多くの要素で無駄を無くし、低燃費化と高出力化を両立させているのです。
さらに、コンピューターを使った緻密な制御は、ブレーキ(ABS)やエアバックなどの安全装置にも採用されており、ブレーキにおいては安全だけでなく、姿勢制御にも大きく関与し、自動車の走行性能に大きく影響しています。
つまり自動車が電子制御化されて久しいですが、現代ではすべての機構にコンピューターが搭載され、相互に通信を行いながら、複雑で高速な制御を実現しているのです。
そのため、例えばブレーキ関連のセンサーに不具合が生じているにも関わらず、姿勢制御に関わるミッションの不具合として検知してしまうなど、本来の故障個所を的確に判断することが難しい場合があります。
汎用品として市販されている診断機でもある程度の診断などは可能ですが、上記のような複雑な故障が起きているときには、汎用品ではシステムの深部に入り込むことができません。
そのため、故障の原因にたどり着くまでに何度も交換と修理を繰り返してしまう、などということが起こり得てしまうのです。
その点、シトロエンディーラーに完備されている専用コンピューターなら、確実で迅速な診断が行うことができるのは言うまでもありません。
これにより、システムに何らかの異常が発生した時でも専用コンピューターが不具合をいち早く察知してくれるので、安心です。
専用メカニックがメンテナンス

引用:http://www.citroen.jp/
ディーラーメカニックの強みは何と言っても専門性です。
一口に自動車と言っても、メーカーそれぞれのクセのようなものが存在し、消耗や故障しやすい箇所、独特の症状が存在します。
シトロエンディーラーに勤務するメカニックは、シトロエン独自のトレーニングを受け、さらに日々の業務の経験や、知識などをもとに、シトロエン車のそういったクセを熟知し、無駄のない的確な診断と修理を行うことが可能です。
さらに車検などの定期点検の際には、今は交換や修理の必要が無い箇所、今後交換や修理が必要になる個所をきちんと把握し、的確なアドバイスをすることができますので、ユーザーにとっては非常に頼りになる存在といえます。
高品質で信頼性の高い純正部品

引用:http://www.citroen.jp/
自動車を開発する場合、当然すべての構成部品の一つ一つに至るまで吟味し、価格と性能のバランスを計算した上で決定しています。
そのため交換部品を社外の汎用品などに置き替えることで、その時の費用を安く抑えることは可能です。
しかし、どの部品も必ず他の部品と作用しあいながら作動しているため、どんなに強力な制動力を発生するブレーキパッドであっても、その力を受けるブレーキローターの強度が不足していれば破損してしまうかもしれません。
このように不用意に社外品を使用すると、のちのち予期せぬトラブルに発展し、余計な修理費がかかる可能性もあります。
その点、シトロエン正規ディーラーで使用される部品は、シトロエン独自の厳格な基準を満たした、高品質で信頼性の高い純正部品のみを使用しているため安心です。
メンテナンス時期に応じた3つのプラン
自動車を安全で経済的に使用し続けるためには、定期的な点検を受け、消耗品の定期交換や、故障などを早期発見することが何より大切です。
シトロエンディーラーでは、メンテナンス時期に応じて最適な点検プランが用意され、安心でお得な点検を受けることができます。
EXPRESS プラン

引用:http://web.citroen.jp/
常時受けることができるシトロエン独自の26項目の基本安全定期点検で、専用故障診断機によるチェック、 ブレーキ関連チェック、エンジン関連チェック、足廻り関連をチェックします。
Aプラン
法定点検+シトロエン独自の点検整備+推奨交換部品1~2アイテムの交換工費をセット
Bプラン

引用:http://web.citroen.jp/
法定点検+シトロエン独自の点検整備+推奨交換部品5~6アイテムの交換工費をセット
※Aプラン/Bプランとも、12か月または24か月点検の際に利用できるプランで、法律で定められた点検項目に加え、シトロエン独自の点検項目を追加し、それぞれ推奨交換項目部品の交換工賃がセットされています。
シトロエンディーラー車検基本料金
それでは、シトロエンディーラーの車検基本料金について見ていきましょう。
比較するのはシトロエンで人気の「DS3」と、同車格である「トヨタヴィッツ」「マツダデミオ」の3車種です。
ともに車検基本料のみで比較します。
トヨタディーラー車検基本料金(ヴィッツ)
24か月定期点検・・・¥19,656
継続検査料・・・¥9,720
検査代行手数料・・・¥9,504
合計・・・¥38,880
マツダディーラー車検基本料金(デミオ)
法定24ヶ月点検料・・・¥18,360
保安基準検査料・・・¥9,180
車検申請代行料・・・¥8,640
合計・・・¥36,180
シトロエンディーラー車検基本料金(DS3)
車検整備基本整備料・・・¥32,076
保安確認検査料・・・¥8,640
車検代行手数料・・・¥10,800
合計・・・¥51,516
シトロエンディーラーの車検代は、国産車と比較して1.5倍程度高いと言われている通り、1.3~1.5倍程度の価格差となっています。
車検総額は上記の店頭表示価格だけで済む?(答えはNo!)
※尚、上記の金額に加えて、必ず支払わなければならない法定費用(自賠責保険2年分、3万3千円程度、自動車重量税2年分、約20,000円~、印紙代等…通常は合計6~7万円前後)がプラスされることを忘れないでください。
※また、上記金額は劣化パーツ交換、消耗品交換などを全く行わなかった場合の金額ですので、実際の車検時にパーツ交換や消耗品交換があった際は、更にその分のパーツ代、消耗品代、工賃が上乗せされていきます(特に輸入車の場合、故障がなくとも、5万~10万円前後の交換費用は見込んでおくべきでしょう)。

そもそも何故、シトロエンの車検は割高なのか?
シトロエンをはじめとする輸入車の車検が割高になってしまう理由はいくつかありますが、もっとも費用に影響を及ぼしているのは、部品の単価と、作業工賃の違いです。
部品については、厳選された純正部品を使用していることと、日本での登録台数が少ないことが高額になっている原因になります。
次に作業工賃についてですが、これも国産車と比較した場合、登録台数や正規ディーラーの数が少ないため、メカニック一人にかかる研修費用や、専用工具のコストなどが整備単価に反映されてしまうことが原因です。
こうした原因を解消するためにも、シトロエンとしては日本市場の拡大が急務となっています。
加えて、輸入車オーナー独特の「ケチに思われたくない心理」も車検価格に関係してきます。
自分の周囲との経済力比較に使われることの多い輸入車(専門用語で「地位財」といいます)は、どうしても一般の国産車と同じように、格安車検専門店に持ち込むことが「みっともないケチな行動」と認識されがちです。
当然、輸入車オーナーはディーラー車検を自然と選択することが多いのですが、先に指摘した部品代工賃代の高額さに加え、オーナーが持つその「見栄」が邪魔をして、ディーラーから提案された、パーツ交換や消耗品交換を、逐次断ったり、値切りしたりすることが「恥ずかしいこと」として認識されています。
このユーザー心理はディーラーサイドもよくわかっているため、「新しいパーツに交換しておきますね(もちろんNoとは言いませんよね)」というスタンスで、車検対応に臨まれてしまい、結果的に、不要なパーツ交換や消耗品交換代金が積み重なり、車検代が車両代の10分の1にまで跳ね上がることが、全く珍しくなくなってしまうのです。
こういった、車検時にディーラー担当者との間で毎回起こる 「微妙な心理戦」が嫌で、車検前にはスパッと車両を売り払って、あっさり別の車を買う人がシトロエンをはじめとする輸入車オーナーには大勢いる ことも、よく知っておくべきでしょう。
まとめ – 継続車検は高額でも納得して行うべき。もしくは、これを機に別の車に買い替えかを冷静に判断する。

By: John Morris
日本国内では、ベンツ、BMW、ワーゲン、アウディと言ったところがメジャーなメーカーであり、シトロエンは、それらのメーカーと比べてしまうと若干マイナーなメーカーと言わざるを得ません。
そのため正規ディーラーの数もメジャーメーカーに比べ少なく、シトロエンオーナーの方の中には不便を感じている方も少なくないように思います。
しかし、シトロエンというメーカーは、創業は1919年とフランスの自動車メーカーの中では後発組とは言え、自動車業界の歴史においてとても大きな存在です。
何故ならシトロエンは、一般的な金属バネを使用せず、専用オイルと窒素ガスを用いた「空気バネ」を使用した「ハイドロニューマチック」をはじめ、今や多くの乗用車では主流の前輪駆動を世界で初めて量産車に採用したメーカーに他なりません。
これにより、それまで富裕層のための玩具と言われていた自動車を、低価格ながら操縦安定性や乗り心地を高い次元で実現してきたメーカーであり、その後の自動車業界の歴史に大きく影響を及ぼしてきたのです。
すべては、「クルマは、あくまで一般大衆のための便利な道具であり、クルマがあることで多くの人々の生活はより豊かなものとなる。」という、創業者アンドレ・シトロエンが提唱したこの思想に基づいて。
「ディーラー車検は高い」ということは、もはや定説となっていますが、高いなりにはそれなりの理由があります。
特にシトロエンは伝統的で革新的なメーカーであるからこそ、シトロエンディーラーで車検を受ける意義があり、安心して長く経済的に維持、所有するためには必要なのかもしれません。