ルノー車に乗っている方で車検を受けようと考えている場合、まず依頼先の候補に上がるのは購入した店舗か、近所のルノーディーラーだと思います。
けれどディーラーの車検には、どうしても高くなるというイメージが否めません。屡言われるのが、輸入車ディーラー車検は車両価格の10分の1が相場であるという、本当かどうか不明な定説です。
車両価格が200ならば車検相場は20万円、500万円の車両ならば50万円が車検代といったところでしょう、これはルノーディーラーにもあてはまるのでしょうか?
こういった話が流布されるのも、一般的にはルノーをはじめとする輸入車ディーラー車検がそれなりに高額だったからであり、ディーラーでの車検を躊躇している方もいるのではないでしょうか?
しかし、ディーラーの車検が他の整備工場などと比べて高いのには、相応の理由というものがありますし、輸入者ユーザー側の心理状態も、価格に大きく影響をしていると考えられます。
その点を理解すれば、きちんと納得して車検を通すことに繋がるというものです。
そこで今回は、ルノー系列ディーラーでの車検の詳細と、実際の相場について紹介していきますので、ディーラーで車検を受ける方は参考にしてみてください。
ルノーディーラーでの車検

引用:https://www.renault.jp/
自動車メーカーにとって大切なアフターサービスは数多くありますが、中でも一般ユーザーの関心が最も高いのが車検です。
まずは日本でルノーの正規輸入元である、ルノージャポンとしての車検への考え方、取り組み方について見ていきましょう。
ルノーのための点検項目
車検とは国が定めた最低限の安全基準である「保安基準」に適合しているか、登録されている情報に相違が無いかを確認し、車検証の有効期限を更新することであるため、必ずしも車検=安全と言えるわけではありません。
また、そのメーカー独自の機構や特徴は千差万別であり、乗り味やデザインなどの個性が際立っていることこそ、そのメーカーの魅力と言えます
そのため、世界中のすべての車を同一の基準で判断するということは、その車の状態によって異なるため不可能なのです。
ルノー正規ディーラーの車検や定期点検では、法律で定められた点検項目に加え、フランス本国のルノーが指定・推奨している10か所の点検を行っています。
これこそ、メーカーや正規ディーラーのみが知り得る情報であり、ルノーディーラーに車検をお願いする、もっとも大きなメリットと言えるのです。
専用診断機(CLIP/クリップ)と専用工具

引用:https://www.renault.jp/
ルノーは車両販売価格が比較的安価であり、大衆車として人気のあるメーカーですが、大衆車と言えども近年の自動車はハイテクな電子制御のカタマリです。
エンジンやミッションはもちろん、エアバックやABS、エアコンに至るまで、車を構成するほぼすべての部品がコンピューターによって制御されています。
なおかつ、それぞれのコンピューターは相互に通信し合うことで、その場の状況に応じた的確で迅速な制御を行っているため実に複雑です。
そのため、どんなに腕の立つ整備士でも、電気関係のトラブルは一般的な電気回路テスターだけでは、診断することができず、汎用として市販されている診断機でも、制御システムの深いところまでは入り込むことができません。
ルノー正規ディーラーには、本国フランス・ルノーが指定する専用診断機(CLIP/クリップ)が完備され、それぞれの部位の作動状態などを的確に診断することが可能です。
また、大掛かりな整備の時に必要になる専用工具も揃えられているため、車検の際に大掛かりな整備作業が発生してしまった場合でも、迅速かつ確実な作業を任せることができます。
ルノーの特別な訓練を受けたテクニシャン

引用:https://www.renault.jp/
ルノーには2種類の国際的な資格を制定しており、日本においても実施されています。
まず一つ目が「COTEC(コーテック)」です。
コーテックとはテクニカルコーディネーターの略で、ルノーの整備士(テクニシャン)に与えられる国際的な資格であり、ルノー車のすべてを把握し、診断から修理のエキスパートに与えられます。
この資格の取得は難易度が高く、日本国内のルノーディーラーにも有資格者は数えるほどしか存在しません。
しかし、ディーラーに勤務する整備士であれば誰もが取得を目指す資格であるため、例え最高位のコーテックを取得していなくとも、取得に至るまでのプロセスが重要であり、質の高いディーラー整備の核となります。
そして2つ目が「EM(エレクトロメカニック)」です。
ルノーエレクトロメカニックとは、電子機器のみだけでなく、先進技術まで教育を受けたルノー整備士の国際的な資格であり、約1年に及ぶ教育プログラムを受け、資格試験に合格した者のみに与えられます。
多くの電子部品やコンピューターが多用されている現代の自動車を的確に診断し、迅速に作業する上では、大変有力な資格制度と言えるでしょう。
純正であることの安心感

引用:https://www.renault.jp/
ルノー正規ディーラーでの車検、修理作業に用いる部品やエンジンオイルなどの消耗品は、当然ことながら純正部品を使用することなります。
純正品は社外品に比べ割高になることが多いのは否めませんが、純正部品はルノー社の厳しい基準をクリアーし、かつ日本市場向けとなっているため、安心感が段違いです。
また、車の血液とも呼ばれるエンジンオイルについても、フランスの大手石油会社である「トタル」が製造する有名ブランド「elf」を使用しており、ルノー車が持つポテンシャルを最大限に発揮してくれます。
メーカー保証延長

引用:https://www.renault.jp/

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これはルノーを新車で購入した方限定になりますが、通常購入から3年または60,000km迄は、無償のメーカー保証が付帯されています。
しかし3年または60,000km過ぎてしまうと、万が一の故障が起きた時の費用は、ユーザーの自己負担です。
ルノーディーラーでは、新車購入時に加入でき保証期間を5年または100,000km延長できる「ルノーエクステンデットワランティ」と、初回車検時に1~2年(走行距離無制限)に延長できる「保証延長プラン」があります。
これにより、万が一の故障の際にも安心して修理を受けることが可能です。
今回か初車検で、ルノーディーラーで新車購入した方であれば、長い目で見た際には、ルノーディーラーで車検を受けた方が、結果的にお得になるかもしれません。
ルノーディーラー車検基本料金

引用:https://www.renault.jp/
ルノーディーラーの車検基本料金と国産車ディーラーでの車検基本料金を比較してみましょう。
比較対象とした車種は、そのかわいいネーミングと個性的なスタイルが近年日本でも人気の「ルノーカングー」と、同クラスの国産車です。
トヨタディーラー車検基本料金(シエンタなど)
24ヶ月点検基本料金・・・¥21,600
完成検査測定料・・・¥9,500
検査手続代行料・・・¥10,200
合計・・・¥41,300
ホンダディーラー車検基本料金(フリードなど)
24ヶ月点検基本料金・・・¥22,032
保安確認検査料・・・¥8,640
検査代行手数料・・・¥10,800
合計・・・¥41,472
ルノーディーラー車検基本料金
24か月点検基本料(シビアコンディション)・・・¥37,800
総合検査料・・・¥13,284
車検代行費用・・・¥9,720
合計・・・¥60,804
輸入車の車検は国産車に比べ1.5倍高いと言われていますが、ルノーディーラーにおいても、ほぼその通りの結果になりました。
ただし、サンプルとして抽出したルノーディーラーの点検基本料は距離による追加点検項目(シビアコンディションなど)が含まれており、その分を除外すると30,672円となります。
車検総額は上記の店頭表示価格だけで済む?(答えはNo!)
※尚、上記の金額に加えて、必ず支払わなければならない法定費用(自賠責保険2年分、3万3千円程度、自動車重量税2年分、約20,000円~、印紙代等…通常は合計6~7万円前後)がプラスされることを忘れないでください。
※また、上記金額は劣化パーツ交換、消耗品交換などを全く行わなかった場合の金額ですので、実際の車検時にパーツ交換や消耗品交換があった際は、更にその分のパーツ代、消耗品代、工賃が上乗せされていきます(特に輸入車の場合、故障がなくとも、5万~10万円前後の交換費用は見込んでおくべきでしょう)。

車検時の点検ポイント以外にも留意すべき点

引用:https://www.renault.jp/
上記の比較は、車検にかる基本的な料金ですが、ルノーに限らず、輸入車は国産車と違い注意すべき点がいくつかありますので、代表的な例を紹介していきます。
タイミングベルト
タイミングベルトとは、エンジン内部にあり、クランクシャフトとカムシャフトを繋げる役割があり、ファンベルトとは違い、エンジンにとってはとても重要な部品です。
タイミングベルトを採用している国産車は100,000kmで定期交換とされていますが、輸入車は100,000kmではありません。
もちろんメーカーや車種によって決められている距離があり、ルノーは60,000kmで交換とされています。
そしてさらに注意したいのが、例え公式に交換距離が示されていたとしても、その距離より短い距離で交換が必要になることが少なくないということです。
エンジンオイル漏れ
国産車でも年数が経っていたり、走行距離が長くなったりすれば、エンジンオイルが漏れてくることは珍しいことではありません。
しかし輸入車(特に欧州車)に至っては、初回車検や20,000kmにも満たない走行距離で、オイル漏れの修理が必要になるケースが意外と多いのです。
この点から見ても、国産車とルノーのような輸入車には大きな違いがあることがわかります。
なぜ輸入車ディーラーの車検はやたら高いのか?
上記に指摘した点は、ルノー車に起こりがちな車両のテクニカルトラブルですが、当然、トラブルが(国産車と比較して)多い車両は、車検時の代金がかさみます。
国産車ならありえないようなパーツ交換、消耗品交換が頻発するうえ、交換用の新品パーツが本国発送の純正品であるため、輸送費用、原価、関税…とコストがやたらかさみ、結果的に本国ではありふれた交換パーツでも、日本国内に入ると急に高級パーツに変身するからです。
残念なことに、こういった純正パーツは価格が高いからといっても、国産車用パーツより機能性に優れているという訳でもないので、結果的に再度の修理をどこかのタイミングで必要とするケースも多くなるのです(輸入車が壊れやすく高いといわれる所以ですね)。
当然、国内を走っている車両(流通数)も少ないわけですから、パーツ1品1品の取り寄せとなるケースも珍しくなく、更に自体はややこしい高価格体質へと進んでいきます。
それに加えて、ルノーだけでなく多くの輸入車ユーザーは「見栄っぱり」が多いのが本当のところです(あなたはそうでもないかもしれませんが…多くのユーザーはそういう傾向があります…専門用語でいうところの、輸入車は「地位財」として、他人と比較するために所有される傾向があるからです)。
つまり、せっかく(国産と比べると)ハイクラスな輸入車に乗っているのに、車検ごときでいちいち値引きをしたりして、ケチに思われたくない、他の客は格安車検なんか行ってないんだろうな…自分だけディーラー車検以外で受けるわけにはいかない、といった心理が働きます。
※個人的には、何故かベンツユーザーに最もこの傾向がある気がしてなりませんが…。
結局、ルノーユーザーや他の輸入車ユーザーのこういった「ケチに思われたくない心理」を十分メーカー側も理解していますので、まだ故障未満の不要なパーツ交換や、国産ならまだまだ使える消耗品交換についても、ディーラーの言うがままに唯々諾々とOKを出すのです。
これだけを考えても、輸入車の車検代金が車両価格の10分の1まで跳ね上がるといわれる理由…非常によくわかりますね(その上、実際に壊れやすい車種、メーカーもあるときたもんですから、言わずもがなです)。
こういった、車検時にディーラー担当者との間で毎回起こる 「微妙な心理戦」が嫌で、車検前にはスパッと車両を売り払って、あっさり別の車を買う人がルノーをはじめとする輸入車オーナーには大勢いる ことも、よく知っておくべきでしょう。
まとめ – ルノー車はオーナー自身の車両管理が重要

引用:https://www.renault.jp/
代表的な国産車との違いをあげてみましたが、決して輸入車が粗悪であるということではありません。
少々雑な言い方をすれば、お国柄の違いです。
国産メーカーは、ユーザーにできるだけ手間をかけさせず、点検にさえ来てもらえれば余計な心配をせずに乗れるよう設計しています。
一方でルノーのような流通数の少ない輸入車は、ユーザー自らがしっかりと車の状況を把握し、自らの責任において安全を維持することを前提として設計されているのです。
こうした根本的な考え方の違いが、維持費に大きく影響してきます。
しかし、その考え方の違いがあるからこそ、国産車には無い強い個性が感じられるのです。
正規ディーラーで受ける車検は安心ですので大いにオススメできますが、輸入車の車検は他業種でも受けることができ、正規ディーラーに比べ安く済む場合もあります。
個性豊かなルノーを長く安心して乗るためにも、複数の業者に相談し、見積をとってみることが大切になってくるのです。
