マセラティ車に乗っている方で車検を受けようと考えている場合、まず依頼先の候補に上がるのは購入した店舗か、近所のマセラティディーラーだと思います。
けれどディーラーの車検には、どうしても高くなるというイメージが否めません。そのせいで、ディーラーでの車検を躊躇している方もいるのではないでしょうか?
しかし、ディーラーの車検が他の整備工場などと比べて高いのには、相応の理由というものがあります。その点を理解すれば、きちんと納得して車検を通すことに繋がるというものです。
そこで今回は、マセラティ系列ディーラーでの車検の詳細と、実際の相場について紹介していきますので、ディーラーで車検を受ける方は参考にしてみてください。

マセラティディーラーの車検への取り組み方
自動車メーカーにとって大切なアフターサービスは数多くありますが、中でも一般ユーザーの関心が最も高いのが車検です。
まずは、日本でマセラティの正規輸入元である、マセラティジャパンの車検への考え方、取り組みを見ていきましょう。
マセラティメンテナンス指定点検項目
車検とは、国が定めた最低限の安全基準である「保安基準」に適合しているかどうかを確認しているに過ぎません。
また、ディーラーなどの指定工場では車検と同時に、56項目の点検項目が定められており、24か月法定点検とはその56項目を点検することです。
あくまで法律で定められた点検項目数であるため、最低限の項目数であり、車種によっては完璧とは言えません。
マセラティでは法定点検項目に加え、マセラティ社が定めた17項目の点検を行い、消耗品の交換もメーカーが指定したスケジュールに従って交換を行います。
ラグジュアリースポーツの代名詞とも言えるマセラティの品質を保つためには、心強いシステムです。
専用テスターと専用ツール
超高性能なラグジュアリースポーツカーであるマセラティには、多くの電子部品が装着され、多くのコンピューターにより制御されています。
しかしエンジンのコンピューターはエンジンを、エアコンのコンピューターはエアコンを単独で制御しているわけではありません。
エンジン、ミッション、サスペンション、エアコンにエアバックなど、マセラティに装着された多くのコンピューターが相互に通信を行い、複雑で高度な制御を行うことでその性能を維持しています。
例えば、どこか1か所でも不調を起こしてしまうと、何の関係もないように見える箇所にも影響してしまうことがあるのです。
つまり迅速で確実な診断や整備を行うためには、制御システムの深いところに入り込む必要があるということになります。
全国のマセラティ正規ネットワークでは、マセラティ車のために100を超える専用スペシャルツールが設置され、予期せぬ追加整備が発生しても迅速に対応してもらうことが可能です。
マスターテクニシャン
マセラティには、全世界のテクニシャンと呼ばれるマセラティ専属整備士を対象にした資格制度があります。
これは、ユーザーにより満足してもらえるサービスを提供するという理念の下、テクニカルトレーニングに力を入れ、優秀なメカニックの育成に努めている集大成です。
集合教育、現場教育、通信教育を経て、学科と実技からなる資格試験を実施し、その最上位の資格に合格したメカニックに与えられる称号が「マセラティ マスターテクニシャン」になります。
2015年の試験では、およそ70カ国のマーケットから10カ国25人がオンラインでの学科試験を受けた結果、一次試験を経て、最終試験に残ったのは6カ国12名しかいませんでした。
それだけタリア・モデナにあるマセラティ本社での実技試験に挑むのは狭き門だということですが、日本には2015年の時点で4名存在していますので、諸外国と比較しても、優秀なメカニックが揃っていることがわかります。
安心のメーカー保証
新車購入から3年までは無償のメーカー保証が付帯され安心ですが、3年過ぎてしまうと、万が一の故障が起きた時の費用は、ユーザーの自己負担となります。
マセラティディーラーでは、保証期間を1~2年間延長できる「マセラティ延長保証プログラム」があり、一般保証期間を新車登録から最大5年目まで延長することが可能です。
更に初度登録から6 年目、7年目の車両には「マセラティ限定延長保証プログラム」があり、エンジンとトランスミッションという重要な部品を保証する、安心のプログラムとなっています。
マセラティディーラー車検基本料金
マセラティディーラーの車検基本料金について触れていきましょう。
マセラティは新車価格は9,00万円~2,500万円超と、超高級車に分類されますので、なかなか国産車との単純な比較はできませんが、マセラティディーラーの車検基本料金と国産車ディーラーでの車検基本料金を比較してみたいと思います。
なお、ともに法定費用と追加整備費用を除いた金額です。
トヨタディーラー車検基本料金(クラウンなど)
24ヶ月点検基本料金・・・¥24,994
継続検査料・・・¥10,800
手続き代行料・・・¥9,720
合計・・・¥45,514
日産ディーラー車検基本料金(フーガなど)
24ヶ月点検基本料金・・・¥27,000
保安確認検査料・・・¥7,560
検査代行手数料・・・¥15,120
合計・・・¥49,680
マセラティディーラー車検基本料金
車検整備基本工賃・・・¥82,080
保安確認検査費用・・・¥16,200
車検代行費用・・・¥20,520
合計・・・¥118,800
当然と言えば当然の結果かもしれませんが、一般的な輸入車が国産車に比べて1.5倍割高と言われているなか、2倍以上の違いとなりました。
とは言え、私のように自動車業界に長く身を置いていた者からすると、幾分か良心的な金額になっています。
マセラティの魅力は希少性

By: Alex Krasavtsev
国産ディーラーの倍以上の基本料金がかかる車検の料金だとしても、私のような車業界の人間やコアな車好きには何故、良心的と言えるのでしょうか。
もしかすると一般の方には理解に苦しむかもしれない、その理由を解説します。
そもそもマセラティとは
マセラティと聞いて、なんとなく高級な外車という認識の方が多いと思います。
実際、車に詳しくない人に聞いてみたところ、「ちょっと高めな高級車、どこの国かは知らない」という答えが返ってきました。
日本での認知度はここ最近急激に増したものの、2000年になったばかりのころまでは、存在すら知らないという方がいても不思議ではないメーカーだったのです。
マセラティはイタリアの片田舎ボローニャで1914年に設立され、さまざまな企業の傘下となりながらも、現在はフィアット傘下の高級スポーツカー製造の役割を担っています。
豪華でエレガントな内装の4ドアの高級車でありながら、スポーツクーペ並みの軽快なハンドリングと、フェラーリエンジンを積んだモデルが存在するなど、とにかく高級セダンらしからぬ高い運動性能を誇っています。
また、本国イタリアでは大統領車に採用されるなど、イタリアを代表する名門メーカーなのです。
販売台数の増加
イタリアのボローニャ発祥で1914年に設立された由緒あるイタリアウィ代表するスポーツかーメーカーですが、1998年には全世界での販売台数はたったの629台しかなく、日本においては知る人ぞ知る高級レアスポーツカーでした。
しかし全世界の販売台数は、2014年には3万6448台と大幅に増加し、日本における販売台数もこの10数年で10倍以上に増えて、2015年には1449台と急激な成長を見せています。
販売体制の強化
マセラティは全世界での販売台数を2018年には75,000台と計画しており、マセラティにとって日本は3番目の市場とされ、正規ディーラーの拠点数も25拠点(2016年時点)にまで増加ました。
販売台数が増え、扱うディーラーの数が増えれば、当然部品の流通量なども増えることになり価格は抑えられていくのです。
今後のマセラティディーラー
近年のマセラティは、中核メーカーへと変貌しようとしています。
その結果、マセラティを街中で見る機会も増え、販売台数も増加し、車検などのメンテナンスにかかる維持費も随分と抑えられるようになってきたのです。
しかし、ここにきて販売台数が頭打ちになり、当初の目標台数には届いていないという情報があります。
マセラティは本来少量生産スーパーカーメーカーであったため、そのこだわりや希少性を良しとする愛好家や車好きの存在は無視できず、伸び悩んでいるのかもしれません。
けれど、その希少性こそがマセラティの魅力と言っても過言ではありません。
目標にしている販売台数に応えるためには大量生産をしなくてはならず、今後、イタリアモデナ産のハンドメイドスーパーカーという特異なブランドイメージを維持しつつ、量産生産を行うことは今後の大きな課題なのかもしれません。
こうした課題をクリアし、日本での普及が進んでいけば、それだけ車検の金額を含めた諸々の費用が抑えられていきます。
そうすれば、今よりもっと手頃な値段で車検を受けられるようになっていきますので、今後のマセラティの普及に期待しましょう。