ポルシェ車に乗っている方で車検を受けようと考えている場合、まず依頼先の候補に上がるのは購入した店舗か、近所のポルシェディーラーだと思います。
けれどディーラーの車検には、どうしても高くなるというイメージが否めません。
そのせいで、ディーラーでの車検を躊躇している方もいるのではないでしょうか?
しかし、ディーラーの車検が他の整備工場などと比べて高いのには、相応の理由というものがあります。
その点を理解すれば、きちんと納得して車検を通すことに繋がるというものです。
そこで今回は、ポルシェ系列ディーラーでの車検の詳細と、実際の相場について紹介していきますので、ディーラーで車検を受ける方は参考にしてみてください。
ポルシェディーラーの車検への取り組み方
自動車メーカーにとって大切なアフターサービスは数多くありますが、中でも一般ユーザーの関心が最も高いのが車検です。
まずは自動車メーカーポルシェとしての車検への考え方、取り組み方について見ていきましょう。
メーカー指定点検項目
車検とはあくまで、国が定めた最低限の安全及び環境基準に適合しているかを確認するだけであり、車検に合格したからといって、必ずしも安心して乗り続けられるものではありません。
ポルシェは言わずと知れた超高級スポーツカーの代名詞です。そして現在はカイエン、マカンといったSUVやパナメーラという高級セダンなど、さまざまなタイプの車両がラインナップされています。
そのため消耗や劣化する箇所も、モデルにより大きく違います。ポルシェ正規ディーラーの整備工場では、国で定められた検査項目に加え、そのモデルに合わせた規定走行年数および走行距離を設定。
モデルごとに最高のコンディションに保つためのメーカー指定点検を行っています。
専用テスターや専用ツール
今や自動車の制御はコンピューターの時代です。
エンジンやトランスミッションの制御はもちろん、自動ブレーキやエアバックなどの安全装置、エアコンやカーナビなどの快適装備に至るまで、すべてコンピューターが制御しています。
最高峰のスポーツカーと言われるポルシェも、コンピューターが走っていると言ってもよいほど多くのコントロールユニットが搭載され、各センサー類やアクチュエータと呼ばれるモーター類など、実に多くの電子部品を駆使し、制御されているほどです。
そのため過去の故障データの読み取りや、目に見えない深いところまでの診断、整備後の再設定などを行うため、「PWIS2」と呼ばれるポルシェ専用テスターを完備しています。
また、セラミックブレーキディスクの摩耗と裂傷の程度を検出できるPCCBブレーキオイルディスクテスター、ハイブリット車などの高電圧車両を整備するためのツールなど、正規ディーラーならではの設備を用意。
高性能スポーツカーであるポルシェの性能を高い次元で維持し、安心して車検を受ける事ができます。
ポルシェ認定スタッフ
高性能な自動車には、高度な整備知識と技術、そして経験が必要です。
ポルシェ系列ディーラーの整備士たちは、ポルシェが独自に設定しているサービス・スタッフ人材育成プログラム、「ポルシェ サービス教育総合システム」をもとに、技術研修を新横浜に設置したトレーニングセンターで常時実施しています。
また、ポルシェ独自の資格制度もあり、その最高峰に位置するのが「マイスター資格」です。この資格は年に一度開催される試験で、マイスター資格保持者は全国にいるポルシェ登録メカニックの10%程度しか在籍していないほど難易度が高くなっています。
内容は実技試験、筆記試験、英語試験、面接試験となっており、単なる技術力にとどまらず、英語力も含めた総合的に判定にて合否判定が行われ、マイスターとなるのです。
メーカー保証延長
新車購入から3年間は、無償のメーカー保証が付帯され安心ですが、3年を過ぎてしまうと、万が一の故障が起きた時の費用は、ユーザーの自己負担となります。
ポルシェ系列ディーラーでは「ポルシェ延長保証制度」に加入することができ、最大で新車登録から9年/200,000Kmまで一般保証を延長することが可能です。
加入は新車保証や認定中古車保証終了までに継続手続きが必要ですが、また、万が一継続手続きをせずに一定期間が経過してしまった場合でも所定の車両点検と手数料支払うことで、再度、ポルシェ延長保証に加入することができる制度もあります。
なお、この制度は正規販売店にて新車・中古車を購入したユーザーに限られ、車両の状態によっては加入できない場合もあります。また、申請はユーザー様による手続きが必要です。
そして新新車登録から35ヵ月間または走行距離が45,000kmまでの車両対象に、定期点検と消耗品の交換がセットになった「ポルシェ メンテナンスパッケージ」、さらに新車登録から4~5年目(59ヵ月まで)または走行距離75,000kmまでの車両を対象とした「ポルシェ メンテナンスパッケージ プラス」を用意。
熟練のポルシェ専門スタッフによる点検はもちろん、信頼性の高い純正部品を使用することによる、確かな安心を、お得なパック料金で受けることができます。
各ポルシェ系列ディーラー車検基本料金
ポルシェ系列ディーラーは、国産車ディーラーと大きく違います。
まずはポルシェの代表的なディーラーの車検基本料金について触れていきましょう。
一般的な国産車との違い
一般的に輸入車の車検金額は、国産車と比べると1.5倍高いと言われています。
ポルシェは性能が高いため国産車と比較が難しいですが、日本でも人気のスポーツカートヨタ86と、ポルシェ718ケイマンで、同地域内にあるそれぞれの正規ディーラーの車検基本料を比較してみましょう。
トヨタ86車検基本料金(東京トヨペット)
定期点検料・・・¥21,600
測定検査料・・・¥10,800
代行手数料・・・¥10,800
合計・・・\43,200
718ケイマン車検基本料金(ポルシェセンター北大阪)
車検点検整備・・・\62,964
機器検査・車検代行・・・¥41,580
合計・・・¥104,544
718ケイマン車検基本料金(ポルシェセンター熊本)
車検点検整備・・・\64,800
代行手数料・・・¥13,200
合計・・・¥78,000
予想通りの結果ですが、1.5倍どころか2倍以上の価格差となりました。
なぜポルシェの車検は高いのか
人が乗り、タイヤが付き、エンジンで進む、自動車である以上ポルシェでも国産車でも基本原理は同じです。車にあまり詳しくない方からすると、新車価格も含め、何故そんなにも違うのかと疑問に思うかもしれません。
ここからはポルシェの車検がなぜ高いのかについて紹介していきましょう。
純正部品の精度
今現在のポルシェでも、高性能モデルのエンジンは一つ一つ職人の手によるハンドメイドされており、各部品のバランスなどを確認しながら組み付けられています。
それはエンジン以外の部品も同様で、大量生産ではできない高い制度と水準が求められているわけです。
専門性
整備士の間では、「ポルシェの整備には手を出すな」「オイル交換すらしてはダメだ」と言われているほど、ポルシェの専門性は群を抜いています。
現代のポルシェの中でごく一部の車種を除いて、今でもオイル交換を行うのですら専門知識と、専用の器具が必要とされているほどです。
高性能であるが故の代償
国産車と輸入車で最も違うことは、消耗品です。
まず、輸入車と国産車では根本的な開発手法が違い、極端な言い方をすれば、国産車はユーザーが特に意識することなく安全に乗れるようにするため、部品の耐久性能や静粛性などを重視しています。
一方、輸入車(特に欧州車)全般に言えることは、車のメンテナンス、安全の維持はユーザーの責任であり、本来求められている各性能を十分に発揮できるように設計しているのです。
つまり国産車はユーザーが意識しないで快適に乗れることと引き換えに、本来出せる性能や個性を犠牲になっています。
輸入車、特に高級スポーツカーなどでは、その車が持つ本来の性能や個性を維持するためには、相応の時間と費用がかかるのです。
まとめ
日本での正規ディーラーは国産車ディーラーや地元企業などが運営しており、本国ポルシェAGの100%子会社であるポルシェジャパン株式会社が輸入した車両を販売しています。
現在のポルシェはフォルクスワーゲンの子会社として存在し、SUVや高級セダンもラインナップするメーカーとなりましたが、自動車メーカーとしてのこだわりは失っていません。
証拠に高性能スポーツカーへのハイブリット機構の採用や、ポルシェらしいスポーツカーの精神を宿したSUVの開発など、世界をリードする自動車メーカーとしての誇りを貫き続けています。
そのポルシェを所有しているのであれば、ポルシェ系列ディーラーで車検を受ける以外の選択肢は有り得ません。
特にポルシェは専門性が高いため、普通の整備工場ではオイル交換すらままなりませんので、素直にディーラーで車検を受けることをオススメします。