メルセデス・ベンツ車に乗っている方で車検を受けようと考えている場合、まず依頼先の候補に上がるのは購入した店舗か、近所のメルセデス・ベンツディーラーだと思います。
しかし、ディーラーの車検には、どうしても高くなるというイメージが否めません。また、メルセデスベンツをはじめとする輸入車のディーラー車検は、車両代金の10分の1が目安とも言われます。車両代金が500万円ならば車検総額は50万円、1000万円ならば車検総額は100万円にも昇ることになります。
こういったことがしばしばベンツオーナーの間でも話に上るため、メルセデスベンツディーラーでの車検を躊躇している方もいるのではないでしょうか?
しかし、ディーラーの車検が他の整備工場などと比べて高いのには、相応の理由というものがあります。その点を理解すれば、きちんと納得して車検を通すことに繋がるというものです。
また、ディーラー車検総額が妙に高額化してしまうのは、輸入車オーナーに共通する独特の心理が原因となっているためでもあります(詳細後述)。
そこで今回は、メルセデス・ベンツ系列ディーラーでの車検の詳細と、実際の相場について紹介していきますので、ディーラーで車検を受ける方は参考にしてみてください。

メルセデス・ベンツディーラーの車検への取り組み方
自動車メーカーにとって大切なアフターサービスは数多くありますが、中でも一般ユーザーの関心が最も高いのが車検です。
まずは自動車メーカーメルセデス・ベンツとしての車検への考え方、取り組み方について見ていきましょう。
まずは、日本でメルセデスベンツの正規輸入元である、メルセデスベンツ日本株式会社の車検への考え方、取り組みを見ていきましょう。
ダイムラー社独自の点検項目
車検とはあくまで、国が定めた最低限の安全及び環境基準に適合しているかを確認するだけであり、車検に合格したからといって、必ずしも安心して乗り続けられるものではありません。
メルセデス・ベンツ正規ディーラーの整備工場では、法定点検項目のほか、ダイムラー社が指定した点検項目を加えて点検を実施しています。
メルセデスベンツ指定サービス工場での点検・整備
カーテクノロジーの進化に伴い、コンピューターによる電子制御化が進んでいる現代の自動車。世界の自動車業界をけん引していると言っても過言ではないメルセデスベンツの車両には、数多くの最先端の高度な電子制御システムが採用されています。
正規ディーラーの向上には、最新のテクノロジーを搭載したメルセデス専用のコンピューター診断システムが導入されており、正確な点検、診断を可能にしています。
また、メルセデスベンツの車を整備するためには多くの専用工具を必要となるため、車検の際に生じてしまった重整備に迅速に対応してもらうには、正規ディーラーでの整備が不可欠です。
熟練したサービステクニシャン
メルセデスベンツ正規販売店のサービスネットワークでは、サービススタッフの知識、及び技術力向上のために、体系化されたトレーニングシステムや厳しい基準を設けた資格制度を導入して、点検、整備のスペシャリストの育成に大きな力を注いでいます。
これにより車種やメーカー特有の症状や、注意点などを的確に判断し、必要な場合には車検後も安心して乗ることができるよう、アドバイスをすることができるようになるわけです。
安心のメーカー保証
メルセデスベンツを新車で購入した場合には、「メルセデス・ケア」という保証プログラムが付帯されます。特徴として挙げられるのは、3年間走行距離無制限で一般保証とメンテナンス保証が無料であるということです。
メルセデスベンツ正規販売店で購入した新車だけという制限付きですが、新車で購入した方はもちろん、まだ初回車検を受けていない高年式の中古車を購入した方も、保証継承をしていればメーカー保証が受けられます。
また、「メルセデス・ケア」が終了してしまった場合でも、一般保証は「保証プラス」、メンテナンス保証は「メンテナンス・プラス」や「メンテナンスプラスライト」などの延長メニューが用意されていますので安心です。
各メルセデス・ベンツ系列ディーラー車検基本料金
メルセデス・ベンツ系列ディーラーは、国産車ディーラーと大きく違います。
まずはメルセデス・ベンツの代表的なディーラーの車検基本料金について触れていきましょう。
国産車との違い
一般的に輸入車の車検金額は、国産車と比べると1.5倍高いと言われています。
実際に同車格と思われるE280とマークXで比較してみました。
マークX車検基本料金(栃木トヨペット株式会社)
24か月点検料・・・¥20,630
継続検査料・・・¥8,100
検査代行手数料・・・¥12,960
合計・・・\41,690
E280ステーションワゴン(ヤナセ宇都宮支店サービス)
ヤナセセレクト車検(基本料金)\48,300
合計・・・¥48,300
同じ都道府県内で比較してみたところ、思ったほど大きな違いはなく、その差は¥6,610と小さな金額でした。
こうしてみると輸入車の車検は国産車の1.5倍高いという感覚は、少々古い感覚なのかと思ってしまいそうですが、そうではありません。例に出した金額は、あくまで車検にかかる基本料金であり、トヨタ、ヤナセ問わず追加の整備項目が発生します。
ディーラー品質の車検整備を求めている場合は、国産差車と比較して輸入車の場合は、多くの予備整備が推奨されるため、予算を気にせず完璧なディーラー品質の車検をお願いした場合、安く見積もって40万円程度の見積もりが提示されることも珍しくありません。
また、例として挙げたヤナセでは、「ヤナセタイムリー車検」「ヤナセセレクト車検」「ヤナセプレミアム車検」と、走行距離などを目安に、あらかじめ油脂類の交換などが組み込まれている、3種類の車検コースが用意されています。
車検総額は上記の店頭表示価格だけで済む?(答えはNo!)
※尚、上記の金額に加えて、必ず支払わなければならない法定費用(自賠責保険2年分、3万3千円程度、自動車重量税2年分、約20,000円~、印紙代等…通常は合計6~7万円前後)がプラスされることを忘れないでください。
※また、上記金額は劣化パーツ交換、消耗品交換などを全く行わなかった場合の金額ですので、実際の車検時にパーツ交換や消耗品交換があった際は、更にその分のパーツ代、消耗品代、工賃が上乗せされていきます(特に輸入車の場合、故障がなくとも、5万~10万円前後の交換費用は見込んでおくべきでしょう)。

なぜメルセデス・ベンツディーラーの車検はやたら高いのか?
メルセデスベンツは、BMW、アウディを並んでドイツ御三家といえる高級自動車メーカーの1画であり、高級ブランドメーカーと考えてしかるべき企業です。
しかし、それだけの理由で車検総額が高額になる理由となるのでしょうか。具体的にはどういった理由でメルセデスベンツの車検代金は国産メーカーと比較して高額となるのでしょうか。
ディーラー車検整備では高額な純正部品を用い、高額な工賃が必要となる。
ディーラーで車検を受けるメリットの一つに、純正部品の使用があります。これは国産車ディーラーにおいても、車検専門店では受けることができない当然のメリットですが、輸入車となるとデメリットがいくつか出てきます。
まず輸入車の純正部品は本国から輸入され、為替などにも影響を受けるほか、消耗品のパッドやベルトなどは相当数の在庫を抱える必要があるためどうしても価格は割高になってしまうわけです。
また、レアな故障などが起きた場合にも本国から取り寄せる必要があるため、部品の入荷までに時間を要するという弊害が生まれます。
それに加え、旬製品を取り扱う際にはディーラー価格の(車検専門店などで取り扱うサードメーカーパーツと比較すると)高額な工賃が必要となってきます。
ベンツディーラー車検総額を押し上げるもう一つの要因
更に、もぅひとつディーラー車検価格を押し上げる要因が、輸入車オーナーに共通した「周囲にケチと思われたくない」という独特の心理です。
私個人的には、特にメルセデスベンツオーナーにはこの感情が強いと感じられるのですが、メルセデスベンツのようなプレミアム高級車両オーナーは、格安の車検専門店を積極的に利用したがりません。
「たかが車検程度でケチケチするなんて」と周囲に思われることを嫌い、車検はディーラーで担当者の意のままの値段で受けるものとする暗黙の了解のようなものがあります。
こういった心理はディーラーサイドも十分に理解していますので、即時交換が必要でない消耗品やパーツ交換につても「当然NOはないですよね」という態度で、「他のお客様でケチケチしている方はおりませんよ」「当たり前の整備案件ですよ」として、見積りに織り込まれてしまいます。
これらが、ディーラー車検価格が車両代の10分の1程度まで跳ね上がってしまう、と言われる要因となっています。
こういった、車検時にディーラー担当者との間で毎回起こる 「微妙な心理戦」が嫌で、車検前にはスパッと車両を売り払って、あっさり別の車を買う人がメルセデスベンツをはじめとする輸入車オーナーには大勢いる ことも、よく知っておくべきでしょう。
メルセデス・ベンツの車検代金を安くする方法
メルセデス・ベンツディーラーでの車検は、高額ではあるものの、安心感を持って車検に臨むことができることはわかりました。
しかし、メルセデス・ベンツオーナーの中にも、(ディーラーには直接言えないものの)本心では車検整備を基本的なものだけで安く抑えたいと考えている方が、あなた含めて多くいるのも事実です。そこで、具体的にメルセデス・ベンツの車検総額を抑える方法をお教えいたします。
1.ディーラー車検では整備項目の見積りにしっかり目を通し、不要な消耗品交換や整備は避けるように打診する。
技術力が高く安全なディーラー車検にこだわりつつも、価格を抑えておきたいならば、ディーラー担当者に「車検内容はすべてお任せしますよ」と大きな見栄を張ることは禁物です。
最初から見栄や外聞はわきに置いておき、整備項目の見積りの中から不要なものをピックアップして、除外するように交渉します。
車検整備の中には、1.車検を通すのに必要な整備、2.どうせならこの機会にやっておくべき整備(消耗品交換など)3.本来不要だがディーラーの提案で勧められる整備、の3種類ありますので、2番と3番は極力削るようにするか、純正品でなくサードメーカーパーツやリビルド品の持ち込み交換が可能かどうかなども、担当者にしっかりと話を聞いて交渉します。
特に3番目の「本来不要だがディーラーの提案で勧められる整備」については、外装コーティングだったり、ドレスアップパーツなどの車検とは無縁の内容が含まれている場合すらありますので、輸入車ディーラーのブランドマジックに翻弄されないように、特に注意が必要です。
ただし、2.「この機会にやっておくべき整備」については、保安関連部品(特にブレーキ廻りりやクラッチ廻り)について、しっかりと検討が必要です。
お金だけケチって、車両トラブルを起こしてみては元も子もありません。
2.ディーラー車検と車検専門店で相見積もりを取る。
「輸入車=ディーラー車検のみ」という思考法を変える必要があります。
近年ではディーラー並みの技術をもった、輸入車整備に十分対応できる車検専門店も出てきていますので、まずは双方でしっかりと相見積もりを取ったうえで、最終的にどちらに車検をだすかを決定すべきでしょう。
特に、車検専門店で見積もりを取ってもらうと、「ああ、世の中の車検相場ってこんなに安いんだ」と、ブランドマジックに惑わされていた頭がパッと冷静に切り替わる効果があります。
車検専門店に来店する顧客は低価格を重視した方が多いため、あなたが正面から「できるだけ車検は安くしたい」といっても、ディーラーのように寒々しい対応はまずありえないので、この点も気楽です。
3.お金がかかる車検そのものを止め、買取り価格がまだ高いうちに車両を売却、新しい車両購入の資金とする。
メルセデス・ベンツオーナーは、車検時期をタイミングとして、新しい車両に乗り換えるケースが多いです。
ベンツ車両は車検が切れると、ガクンと買取査定価格が下がってしまうため、もしも長期間現在の車に乗り続けるつもりでなければ、車検を機会に買取査定をしてもらうのもよい方法といえます。
当然、継続車検で支払うコストを抑えることができ、尚且つ、高価格で車両下取りができれば、2重の意味で次の車を買うための軍資金をプールすることができるでしょう。
尚、ディーラーで新車購入時に下取りを出す方法もありますが、しっかり利益を残すならば、一括査定サイトを利用して、買取専門店複数の買取価格を同時に出させたうえで、最も高い店舗に車両を売るのが1番であることは肝に銘じておきたいところです。
尚、当方調査でベンツの高額買取が出やすい査定サイトは下記となっています。
高額査定1位:Goo買取
高額査定2位:かんたん車査定ガイド
高額査定3位:ズバット車買い取り比較
メルセデス・ベンツ系列ディーラーの特徴
国産車については、トヨタ、日産などの自動車メーカーが開発や製造を行い、○○トヨタや○○日産などの各ディーラーが販売とアフターサービスを行っています。
しかし、メルセデスベンツなどの輸入車は、メーカーとディーラーの間に、インポーターと呼ばれる輸入会社が介在しているため、国産車とは少々事情が異なります。
メルセデスベンツの特徴
日本では一般的に「ベンツ」、少し車に詳しい方などは「メルセデス」と呼ばれたりしていますが、実は「メルセデスベンツという自動車メーカーは存在せず、ベンツという自動車を作っているのはダイムラー社です。
つまりベンツというのは、ダイムラー社が製造している車両のブランド名と言うことになります。
そして日本にはメルセデスベンツ日本株式会社が存在していますが、決して車両を製造しているわけではなく、主にインポーターとして車両の流通に関与するためにダイムラー社資本によって作られた会社なのです。
日本での販売構図
日本国内において大手のベンツ正規ディーラーと言えば、「ヤナセ」と「メルセデス・ベンツ店」となります。どちらもインポーターであるメルセデスベンツ日本株式会社から車を仕入れ、販売し、アフターサービスを行っているディーラーです。
ダイムラー社直営のディーラーは存在せず、日本国内のメルセデスベンツ正規ディーラーというのは、メルセデスベンツ日本株式会社と販売契約を結び、いわゆるフランチャイズのような形態になります。
まとめ – 全てをディーラーに任せるのではなく、しっかり自分の頭で計算をして車検整備内容を決めるべき。
メルセデスベンツはひと昔前と比べ、随分と庶民的な車両を多く見かけるようになりましたし、新車の販売価格もそこまで高額ではない車種も多くラインナップされるようになりました。
しかしメルセデスベンツ系列の正規ディーラーで車検を受けるとなると、国産車ディーラーと比べそれなりのの割高感は否めません。
メルセデスベンツ本来の性能を可能な限り高い次元で維持するために、少々高額な車検を受けるか、または整備士の方とよく相談し、必要と思われる箇所のみでリーズナブルに済ませるか、メルセデスベンツオーナーにとっては大きな問題です。
どちらを優先すべきかよく考えた上で、最善な選択をしてみてください。
または、先にご説明した「ディーラーにこだわらず、車検専門店への依頼を考えてみる」「車検をやめ、高く売れるうちに買取りに出す」という方法も別選択肢としてあることを忘れないでおきましょう。