一般的にユーザーが受けている車検では、法定点検が実施されます。法定点検では様々な項目が点検され、その点検結果に基づいて不適合箇所や推奨項目の見積もりが案内されることになります。
では、車検時にはどのような部品や消耗品が必要となり、また、費用と交換目安はどの程度なのかをご紹介します。

車検でチェックされる内容
車検では法定点検による点検と、検査ラインでの確認が主な作業内容となります。点検と検査ですので厳密に言えば違いがありますが、結果として各項目のチェック内容は同一と言って差し支えありません。よって、特に検査の場合や点検の場合などと分ける必要はなく、法定点検内容に沿って説明していきます。
法定点検項目
車検と共に行われる自家用乗用車の法定点検の点検項目は、54項目が点検チェックされます。各項目の詳細は以下の通りです。
エンジンおよびエンジンルーム
パワーステアリング | 点火装置 |
ベルトの緩み、損傷 | スパークプラグの状態 |
取付けの緩み★ | 点火時期 |
オイルの漏れ、量 | ディストリビューターの状態 |

冷却装置 | 燃料装置 |
ファンベルトの緩み | 燃料漏れ |
冷却水の漏れ | リンク機構の状態 |
スロットルバルブ、チョークバルブの作動 |

バッテリー・電気配線 | エンジン |
ターミナル部の緩み、腐食 | 排気ガスの状態 |
電気配線の接続部の緩み、損傷 | エアクリーナーエレメントの汚れ、詰まり |

公害発散防止装置など |
メターリングバルブの状態 |
ブローバイガスの還元装置の配管の損傷 |
燃料蒸発ガス排出抑止装置の配管等の損傷 |
燃料蒸発ガス排出抑止装置のチェックバルブの機能 |
チャコールキャニスターの詰まり、損傷 |
触媒等の排気ガス減少装置の取付けの緩み、損傷 |
二次空気供給装置の機能 |
排気ガス再循環装置の機能 |
減速時排気ガス減少装置の機能 |
一酸化炭素等発散防止装置の配管の損傷、取付状態 |
室内点検
ハンドル | パーキングブレーキレバー、ペダル |
操作具合 | 引きしろ、踏みしろ |
パーキングブレーキのきき具合 |
ブレーキペダル | クラッチペダル |
遊び、踏み込んだ時の床板との隙間 | 遊び、切れた時の床板との隙間 |
ブレーキのきき具合 |

足廻り点検
かじ取り車輪 | サスペンション |
ホイールアライメント★ | 取付部、連結部の緩み、ガタ、損傷 |
ホイール | ブレーキディスク、ブレーキドラム |
タイヤの溝の深さ | ディスクとパッドの隙間☆ |
タイヤの異常な摩耗 | ブレーキパッドの摩耗☆ |
ボルト、ナットの緩み☆ | ディスクの摩耗、損傷 |
フロントホイールベアリングのガタ★ | ドラムとライニングの隙間☆ |
リヤホイールベアリングのガタ★ | ブレーキシューの摺動部分、ライニングの摩耗 |
ドラムの摩耗、損傷 |


ショックアブソーバー | ブレーキのマスタシリンダ、ホイールシリンダ、ディスクキャリバ |
損傷、オイルの漏れ | 液漏れ |
機能、摩耗、損傷 |
下廻り点検
エンジンオイル | ステアリングギアボックス |
漏れ | 取付けの緩★ |

ディファレンシャル | ブレーキのロッド、ケーブル類 |
オイルの漏れ、量★ | 緩み、ガタ、損傷★ |

ブレーキホース、パイプ | トランスミッション、トランスファ |
漏れ、損傷、取付け状態 | オイルの漏れ、量 |
ステアリングロッド、アーム類 | エキゾーストパイプ、マフラー |
緩み、ガタ、損傷★ | 取付けの緩み、損傷 |
ボールジョイントのダストブーツの亀裂、損傷 | マフラーの機能 |
熱害防止装置の遮熱板の取付けの緩み、損傷 |
プロペラシャフト、ドライブシャフト |
連結部の緩み☆ |
ドライブシャフトのユニバーサルジョイント部のダストブーツの亀裂、損傷 |
外廻り点検
フレーム、ボディ |
緩み、損傷 |
※☆印は1年 5,000km以下の走行距離の場合は省略可能
※★印は2年10,000km以下の走行距離の場合は省略可能

点検時に確認する不具合項目とは?
上の表に記したそれぞれの文言は、一般的な乗用車用の24か月点検の記録簿に書かれているものの原文です。見ていただいてわかると思いますが、実に専門用語が多くて、わかりにくい内容だと思います。
しかし書かれている文言をよく見て頂くとわかりますが、点検する項目名は様々なのに対し、点検内容には同じような言葉が並んでいます。例えば、漏れ、緩み、がた、損傷などがそうです。つまり点検する整備士は、装着されているそれぞれの部品が、きちんと機能を果たしているかという、当たり前とも思える内容を点検しているに過ぎません。
それでは点検時に確認する不具合項目には、どんなものがあるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
車検における「漏れ」と不具合対策
漏れとは、主に油脂類に生じやすい不具合です。代表的な油脂類には、以下のようなものが挙げられます。
・エンジンオイル・パワーステアリングオイル
・ATフルード
・ブレーキオイル
・デフオイル
・冷却水
こうした油脂類の漏れについて車検場の検査官や、整備工場の整備士は、「漏れ」なのか「にじみ」なのかを判断しています。例えば部品のつなぎ目付近が多少湿っている程度の場合は「にじみ」と判断され、車検では合格です。逆にエンジンの上部から下部までエンジンオイルが滴になっていた場合は「漏れ」となり、修理しなければ車検を通すことはできません。
ただし、「漏れ」と「にじみ」の違いに明確な数値や判断基準はなく、点検した整備士や検査官の主観によるところが大きいです。そのため人によっては「漏れ」と判断されたものが、「にじみ」と判断されることもありえます。
また、国産車と外国車では設計時の根本的な考え方が違うため、国産車に比べて外国車の方が比較的、油脂類の漏れは多く発生しやすいです。そのため、見た目は同じ程度に見える漏れでも、車種により判断が分かれることもあります。
しかし車検に通る通らないとは別にしても、漏れやにじみが発生していることは決して良いことではありません。どちらにせよ車にとっては悪影響を与えますので、早急に修理する必要があります。
車検における「緩み、ガタ」と不具合対策
車には様々な部品が、それぞれを支え合うように取り付けてあります。点検時に確認する緩み、ガタとは、そうした部品がきちんと取り付けられていて、緩みがないかを見ているわけです。
緩みで言うと、各部品を取り付けているボルトが締まっているか、ベルト類については張り具合が適正かを点検します。ガタについては、リフトアップして実際にタイヤなどを手で揺するなどを行い、本来あってはならないガタが無いかを点検します。
車検における「損傷」と不具合対策
車には走行中に常時作動しているものが多数あります。エンジンやトランスミッションは当然として、その他に足廻りのサスペンションなどもそうです。その動き続けている足廻りのそれぞれの部品の接合部は稼働するようになっており、稼働する箇所を保護する目的でダストブーツと呼ばれるゴムや樹脂でできたカバーが付けられています。
カバーですから勿論しっかり対象の部品を覆い保護しなくてはなりませんので、切れなどがあっては本来の機能を果たすことができません。つまり、切れ=損傷と判断できます。
ダストブーツ以外の部品についても同様です。何らかの影響で大きく変形してしまって本来の取り付け位置が変わってしまっている場合、またはボディ廻りをぶつけてしまい尖ったように変形してしまっている場合なども損傷と判断します。
車検・点検時の消耗品
定期点検記録簿に書かれている点検内容は、あくまで車としての機能や安全、環境保護を果たすための基本的な項目です。しかし業者に委託した場合に推奨項目として、消耗品の交換を勧められることが多いのではないでしょうか。
ここからは、一般的によく交換を勧められる消耗品の交換目安や、費用について見ていきましょう。
エンジンオイル/オイルエレメント
車における消耗品の代表格と言えば、エンジンオイルとオイルエレメントではないでしょうか。車検においては、漏れがなく規定量入っていれば問題ありません。しかし、エンジンオイル/オイルエレメントは定期的な交換が必要です。
エンジンオイルの交換目安としては、半年または5,000kmで行えば間違いありません。オイルエレメントは、オイル交換2回に1回が交換の目安となります。しかし近年では、10,000kmごとや15,000㎞ごとが交換基準とされているエンジンが多くなってきました。
自動車メーカーが綿密に設計し、設定した交換基準ですのでその目安に間違いはありません。けれど同じ走行距離や年式だったとしても、使用環境によってオイルの状態は変わります。そのため点検をお願いする工場の整備士やフロントマンとよく相談して、変えるか変えないか判断するのがいいでしょう。
気になる費用ですが、これは車種やオイルのグレード、交換する店舗により違いがありますが、軽自動車でエンジンオイルのみで2,000円前後~、大きなセダンやワンボックス車で5,000円前後~、オイルエレメントは国産車の場合1,000円~2,000円程度です。タイヤのように高価ではないため、是非とも定期的な交換を心がけてみてください。
タイヤ
車検におけるタイヤの交換基準ですが、代表的なものは「残りミゾ」です。国が定める保安基準では、溝の深さが1.6mm以下なってしまうと、そのタイヤは使用できません。
また、残りミゾ以外で車検時に見る内容は、損傷がないかどうかです。パンクなどは当然NGですし、古くなって表面のひび割れが著しく大きい場合や、大きな変形などがある場合も車検では危険と判断されることがあります。
交換費用としては、メーカーやグレードなどにより開きがありますが、軽自動車なら1本工賃込みで5,000円、高級車などでは1本工賃込みで20,000円程度からになります。すべてのタイヤを交換するとなると大きな出費を覚悟しなくてはいけませんので、先を見越して貯金をしておくことが大切です。
ワイパー
ワイパーについては、まずワイパーゴムの切れやブレードの変型などがあると水滴が払えないため車検ではNGとされます。使用頻度や使用環境により耐久性は大きく変化しますが、1年程度で交換しておくことが無難です。
費用については、長さ・グレードにより異なりますが、ゴム単体で1本200円程度~、ブレードとセットで600円程度~となります。車検を抜きにしてもワイパーは割りと頻繁に使うものなので、一年に一度の交換がオススメです。
ブレーキパッド(ライニング)
自動車は走行中の運動エネルギーをブレーキパッドなどの摩擦により、熱エネルギーに変換することでブレーキを効かせています。そのため、ブレーキパッドは走れば走るほど摩耗していくわけです。点検の際には、ブレーキパッドの残りを測定します。
極端な言い方をすれば、車検の時に0.1mmでも残っていて、ブレーキが効けば保安基準をクリアすることが可能です。保安基準での明確な数値はありませんが、通常ブレーキパッドが3.0mm、ブレーキライニング0.5mm以下が交換目安になります。
費用は車種などにより大きく違いますが、軽自動車でフロントブレーキパッドが工賃込10,000円程度です。少し金額的には高いですが、ブレーキが効かなければ命に関わりますので、交換が必要になる際は躊躇せずに交換しましょう。
スパークプラグ
スパークプラグとは、ガソリンエンジンにおいて、エンジン内部に点火し混合気を爆発させるために使用される部品です。その使用用途上、熱や爆発の衝撃などで消耗や摩耗しやすい部品と言っていいいでしょう。
交換目安は、近年の車に多く使用されるようになったイリジュームや白金と言われる特殊な素材のスパークプラグを除き、40,000~50,000kmか、およそ4年とされています。かかる費用は部品代が3,500円程度、工賃については数百円~数千円と幅が広いです。
バッテリー
車に必要な電力を蓄えておき、特に始動時に重要な役割を果たしているのがバッテリーです。車検では正常にエンジンの始動が出来れば問題ありませんが、点検する際にはバッテリー液の消耗具合、ケースの変型、テスターを使用しての点検を行い、消耗が激しい場合は交換を勧められることになります。
交換目安としては2~3年、もしくは20,000~30,000kmとされていますが、車の消耗品の中でも特に使用環境に大きく影響されますので、自分の使用方法に合わせた交換が適切です。費用は軽自動車で5,000円〜となり、バッテリーの種類によっては部品代だけで数万円の場合もあります。
交換を怠るとバッテリー上がりを起こし、JAFなどを呼んで対処してもらうと交換したほうがマシなぐらいの金額を取られることになるので、必ず定期的に交換しましょう。
車検と消耗品の関係
自動車は少なくとも数万点の部品で構成されており、上記の消耗品はあくまでも一部となります。そのため交換に出向く手間を省くために、車検の時にすべて交換することは決して悪いことではありませんが、各部品はそれぞれに影響し合いながら存在しています。
消耗品と呼ばれる部品については車検の時とこだわらず、定期的に交換をしておくことが、結果として車検時の費用を抑えることにつながるのです。
まとめ
点検の時にチェックされる不具合や、消耗品の交換目安と費用について紹介してきましたが、これを一気に修理したり交換したりするのは、莫大な時間と費用がかかります。そうならないためにも年ごとに交換する予定を立てて、無駄な出費をしないよう注意しましょう。