あなたは自分の車の「定期点検整備記録簿」を見たことはありますか? 実際、ほとんどの方が見ていないことでしょう。なにより定期点検整備記録簿に記載されているのかも、どうして見ておく必要があるのかもわからないと思います。そこで今回は「定期点検整備記録簿」についての紹介と、見方について解説していきましょう。


定期点検整備記録簿とは
自動車に関わる整備記録簿には、分解整備記録簿、臨時分解整備記録簿、点検記録簿など様々なものがありますが、定期点検整備記録簿は24か月点検や12か月点検などの法定点検を行った際の点検結果を記録する用紙です。言わば自動車にとっての、カルテや履歴書のような役割と言えます。
また、記載される内容は、使用者の氏名や個車情報などの基本情報のほか、点検結果については省略された記号を用いて記入されています。
記載内容及び記入方法
自家用乗用車、貨物車や事業用車両などにより内容は異なりますが、ここでは代表的な自家用乗用車の法定点検に用いられる定期点検整備記録簿について紹介していきましょう。まずは記載されている基本的な情報についてです。
使用者の氏名または名称
使用者の住所及び氏名が記入されます。
自動車登録番号または車両番号
いわゆるナンバープレートです。ちなみにナンバープレートは、普通車は登録番号、軽自動車は車両番号と呼ばれ、その内容を記入します。
車台番号
自動車検査証に記載されている車台番号を、ハイフン等も含めすべて記入します。
ここまではその他の書類と大差はないですが、上記の3点以外の部分が定期点検整備記録簿の主たる記入内容になります。
各項目の点検結果
原動機(エンジン、エンジンルーム)、室内点検、足回り、下回り、外回り、日常点検項目、その他に必要となった点検整備の内容と大まかに区分けされ、それぞれの各項目にある詳細な項目ごとに省略記号で記入していきます。
記号の汎用例
では、点検記録簿に記入される記号には、どんなものがあるか見ていきましょう。それぞれの記号の意味は以下の通りです。
レ……点検
点検のみを行い、問題がないということを意味します
/……該当なし
その車に装着されていない、または点検の必要がないことを意味します
✕……交換
部品を交換したことを意味します
〇……分解
重要保安部品を分解したことを意味します
△……修理
交換ではなく修理作業を行ったことを意味します
P……省略
pretermitの略。走行距離数などに応じて点検を省略できることを意味します
A……調整
adjustの略。調整作業を行ったことを意味します
C……清掃
cleaningの略。清掃作業をしたことを意味します
L……給油
lubricationの略。給油作業をしたことを意味します
T……増締
tightenの略。増し締め作業を行ったことを意味します
その他の記載内容
定期点検整備記録簿には、上記のような記号のほかに下記のような項目があります。
・交換した部品名と数量 交換を実施するにあたり使用した部品名と、その数量が記入される
(例:エンジンオイル3L タイヤ4本 など)
・タイヤおよびブレーキパッドの残量
前後左右すべてのタイヤと、ブレーキパッドの残量がミリで記入される
もし交換をした場合は「✕」と記入します。
・排気ガス濃度
ガソリン車の場合は、排気ガスに含まれる
一酸化炭素と炭化水素の濃度を計測し記入される
・点検時の走行距離
点検時の総走行距離が記入される
・点検年月日
点検を実施した年月日が記入される
・整備主任者の氏名
業者に委託した場合、国家2級整備士以上の資格を有し、
その整備事業者から選任を受けた整備主任者の氏名が記入される
・点検を実施した事業者名
業者に委託した場合、点検を実施した事業者の名称が記入される
・アドバイスなど
業者に委託した場合で、今回は特段交換などの作業は行っていないが、
近いうちの確認や整備などの注意喚起、次回の定期点検日などが記載される。
定期点検整備記録簿の入手方法
ユーザー車検を受ける予定の方は、定期点検整備記録簿を入手する必要があります。整備振興会で購入することもできますし、インターネットでダウンロードできるサイトも増えてきましたので、ご自宅にプリンターなどで印刷が可能であれば無料で入手可能です。
また、新車購入時についてくるメンテナンスノートには定期点検整備記録簿が付属していますので、そちらを利用することもできます。
ユーザー車検における定期点検整備記録簿記入
ユーザー自身で点検整備記録簿を記入することはほとんど無いと思いますが、法律上では自分の車の分解を伴う点検作業を行うことが禁止されているわけではありません。つまり、自分で各項目を点検した上で記録簿を記入し、車検の際に提出することは可能です。
また、車検前でも車検後でも実施は可能なため、定期点検を実施していなくとも、車検時に、車検後定期点検を実施する旨を伝えれば車検を行うことはできます。
しかし法律で定めた分解整備のうち、定期点検で分解する可能性が非常に高いのはブレーキ回りです。分解しなければ残量を計測できない場合があるのでやらざるを得ませんが、分解しようとする場合にはジャッキアップなど危険を伴います。万が一にでも整備ミスなどがあった場合は、ブレーキが効かなくなって重大事故になりかねないので危険です。
そのためユーザー車検で法定点検を行う際は、資格をもった整備工場などに依頼し実施することをオススメします。
業者に委託して車検を受ける方へ
車検はいつも業者に委託しているという場合、ユーザー代行業者で無い限り、必ず定期点検整備記録簿が存在します。実際の見積もりや請求書などと合わせて定期点検整備記録簿を見ておけば、自分の車の健康状態がどうなのか、今後必要になりそうな整備項目や、注意する箇所はどこなのかを知ることができますので必ず確認しておきましょう。
定期点検の重要性
定期点検整備記録簿を使用する点検は法定点検と呼ばれ、自動車を使用するには法律で定められた一定期間ごとに、自動車を点検することが義務付けられています。しかし車検においては法定点検と法律上まったく違う内容であるため、車検=点検とはなっていません。
つまり車検はその場での検査による確認でしかないため、安全を保障するものではないということです。よって、しっかりと点検することが大切になってきます。
通常、業者に委託して車検を行う場合、ユーザー代行業者以外で車検を実施されるのであれば、必ず定期点検は行われ、先述のとおり定期点検整備記録簿が工場より発行されます。

近年問題視されている内容
1995年7月の法改正に伴う規制の緩和により、ユーザー車検が一般的に浸透しました。そのため車検は、ユーザー車検で済ませているという方も相当数います。もちろんユーザー車検がダメということはなく、むしろユーザー自身で自分の車の状態を把握できる良い機会だと言っていいでしょう。
しかもユーザー車検は自動車の維持費を抑えることができるため、現代の日本における自動車社会全体にとってはプラスになる部分も多いのではないかと思います。
しかし、車検当日では後日点検をすると伝えていたにも関わらず、実際には定期点検を行っていないユーザーが多く存在し、近年問題視されるようになりました。
ここで注意してもらいたいのが、1995年7月の法改正の中身です。確かに法改正によって規制は緩和されましたが、あくまでもそれは「自分の車の状態は自分で管理し、責任を持ちなさい」という意図のもとでユーザー車検が解禁されたにすぎません。
また、くどいようですが、車検=点検ではなく、車検はあくまでその日その場で、国が定めた安全基準を満たしているかや、記載内容などに誤りや変更は無いかを確認しているにすぎないので安全が保証されているわけではないのです。
つまり、車検に合格=しばらく安全、ということにはなりません。極端な例としては、車検終了後の帰宅途中にブレーキが効かなくなることもあり得るのです。

まとめ
法律で義務とされている法定点検ですが、たとえ実施していなくとも罰則等があるわけではありません。しかし万が一にでも整備不良によって走行中に故障してしまった場合、他人を巻き込む大事故につながる危険性があります。
そうならないためにも、きちんとした資格を持った整備工場に定期点検を依頼して、定期点検整備記録簿を発行してもらい、自分の車の健康状態をしっかり把握しておくことが重要です。安全安心はもちろん、無駄な出費を抑えながら快適なカーライフを送るためにも必要になりますので覚えておいてくださいね。