車は消耗品の塊です。だからこそ定期的なメンテナンスが重要になってくるのですが、メンテナンスだけではなく日々の運転を意識するだけでも、各機構の消耗度合いは大きく変わってきます。車も人間と同じです。
エンジンが嫌がる使い方、ミッションが嫌がる使い方は必ずあります。その点を意識しておくだけでも無駄な故障が防げますし、いざ売却という時になっても寿命をイタズラに削らなくて済むので高評価を得ることが可能です。今回は車の寿命を延ばす運転方法について、紹介していきます。
車の寿命を延ばす
まずは車の寿命を延ばす方法について説明していきましょう。一般的に、車の寿命を延ばす効果的な方法として、エンジンを始動してからすぐに走り出す「暖気走行」が推奨されています。現在ではこの暖気走行することが当たり前になっていますが、昔は「暖気運転」が一般的でした。しかし現在においてはアイドリング時の暖気運転は必要なくなり、むしろ始動したての暖気走行が重要視されるようになっています。
そもそも何故、暖気走行が重要視されるようになったのかというと、暖気運転はあくまでエンジンだけしか暖めることができないからに他なりません。エンジン始動後はエンジンオイルがオイルパンに溜まっているので、5秒〜10秒程度は動かさない方が良いということに変わらないのですが、暖気運転ではミッションやマフラー、各部のベアリング関係やタイヤは暖められないのです。
にもかかわらず、延々とアイドリングしてエンジンが暖まったからと、いきなりアクセルを全開で発進したらどうなるか? もはや、言うまでもありません。準備ができていない状態で走り出した各機構、特にミッションは大ダメージを負ってしまいます。
人間で例えるなら、寝起きで何の準備体操もせずに全力疾走させられるようなものですね。想像するだけで、どれだけ酷い事をしているのか目に浮かびます。車にダメージを負わせないためにも、暖気走行は習慣化するようにしましょう。
暖気運転はどれくらい走行すればよい?
暖機運転の時間ですが、5分程度走れば十分です。ですが暖気運転の時間は外気温よって変わってくるので、寒い時期は少し長めに時間を取るといいでしょう。エンジン回転数を上げず、40キロほどのスピードで走るイメージですので、そう難しくありません。是非とも実践してみてください。
エンジンの寿命を延ばす
続いては車の心臓部、エンジンを寿命を延ばす方法です。税金の安さや小回りの効き方など、普通自動車よりも何かとメリットの多い軽自動車ですが、エンジン排気量の小ささはどうしてもデメリットになりがちです。
エンジン排気量が小さいということは排気量が大きい車と比べた場合、同じスピードを出すにも回転数を上げなければいけません。たまに回転数を上げてやることもエンジンのコンデションを良くするためには必要ですが、これが毎回となるとエンジンの寿命を縮める原因となってしまいます。ベタ踏み運転は速度を得る代償に、エンジンに多大な悪影響を及ぼすので可能な限り避けましょう。
しかし、ベタ踏み運転を全くしないというのも、コンデションを悪くする原因となってしまいます。人間で言うところの運動不足ですね。エンジンも適度に高回転させてあげないと、逆に不調の原因を招いてしまいます。つまりベタ踏みすることは、必ずしも悪い事ではないというわけです。もっとも軽自動車の場合、坂道を登る時に嫌でもベタ踏み運転することになるので、敢えて踏むことを意識する必要はありません。踏みすぎず、踏まなすぎず。この加減を意識して運転してみてください。

ミッションの寿命を延ばす
ミッションの寿命を延ばすというテーマは、今回の話における最重要項目です。エンジンの寿命は車の心臓部であることから多くの人が意識していますが、ミッションの寿命を気にしている人はほとんどいません。ミッションは車を動かす上で非常に重要な機構なため、軽視するのは危険です。そのため、エンジンと同じくらいの重要度で扱う必要があります。
では、ミッションの寿命を延ばす簡単な方法とは何だと思いますか? 真っ先に思い浮かぶのはミッションオイルの交換ですが、ミッションはエンジンほどオイルが重要視されていません。もちろん、新車時から2〜3万キロを目安に交換するのであれば、プラスの効果を期待できます。しかし何万キロも交換していない中でミッションオイルを交換すると、高確率で調子が悪くなるか不具合を起こしますので、ミッションオイルを交換することが寿命を延ばすことに繋がるとは言い難いのが現状です。
では答えは何なのか。正解は「きちんと停止した状態でギアを変える」ことです。「えっ、そんなの当たり前でしょ?」と思う方もいると思いますが、実は結構守れていない人が多かったりします。特に急いでいる時や焦っている時には、咄嗟にやってしまいがちです。
例えば駐車時。後ろから後続車が来ていて「詰まらせてはいけない」「店から近い場所を他の車に取られたくない」という思いから、まだ完全に停止していないにも関わらず、ギアをバックに入れて下がりだす人がいます。これが、ミッションの寿命を考えた時に、一番やってはいけない行為です。
こういった癖がある人は、本当に意識して変えないと直りません。何故なら無意識でやってしまっている可能性が高いからです。となると、自分では大丈夫と思っていても、第三者の目から見たらできていなかった、なんてことも有り得ます。ミッションの寿命を延ばすためにも一度、誰かに見てもらって運転の仕方が適切かどうか振り返ってみましょう。「ミッションは8万キロ前後から不具合が起きてもおかしくない」と言われていますが、こうした悪い習慣を変えるだけでも違ってきますよ。
余談ですが、外車のミッションは国産車に比べて特に敏感です。動いている状態でギアを変える習慣があると、あっという間にミッションが壊れてしまいます。これには、車の新しい古いは関係ありません。乗り方、扱い方の問題なので、外車に乗る方や今後乗ることを検討している方は、より慎重にミッションを扱うようにしてくださいね。

ハンドルの据え切りは寿命を縮ませるというのは勘違い
最後は、寿命にまつわる勘違いについて紹介していきます。代表的なのが「ハンドルの据え切りをすると寿命が縮む」というものです。
ハンドルの据え切りとは?
停止している状態でハンドルを切ることをいいます。これによるよくある勘違いとして挙げられるのが「ハンドルの据え切りをするとパワステがすぐ壊れる」というものです。
現在、軽自動車のみならず、ほとんどの車にパワステが採用されています。実際、据え切り状態で壊れることはありますが、それはあくまで1分程度その他状態を維持したらの話です。実際、据え切りでの故障は昔の油圧パワステで起こっていました。
しかし普通に考えてほしいのですが、車庫入れの時に据え切りは少なからずしますよね? 当然メーカー側も、ユーザーが数秒〜数十秒程度の据え切りすることを考えて設計していますので、通常使用なら据え切りでパワステが故障するということはほとんどありません。
ただし先述しましたが、1分を超える据え切りはメーカーも計算外のため、故障する可能性はあります。ですが、1分も据え切り状態を維持するという機会は、意図的に使用しない限り、まずないです。以上のように「据え切りしてもパワステは壊れない」というわけではありませんが、それでもメーカーの想定以上の使用をすると壊れますので、意味もなく据え切り状態を維持しないようしてくださいね。
まとめ
これまで買取や車検(軽自動車車検)対策上有利にするための車両を気遣う運転方法を紹介してきましたが、どれも簡単な心がけで改善できるものばかりではなかったですか? このように車の故障の中には、ドライバーの意識次第で回避できる故障が多くあります。「暖気走行」と「停止してからギアを変える」という2点は特に寿命を延ばすのに大きく貢献しますので、意識して今後のドライビングを変えていってくださいね。