車検の際、よく交換する、もしくは交換を勧められる部品の代表格と言えば、ブレーキパッドです。
ここでは車検におけるブレーキパッドの注意ポイントや、交換費用、そして、ブレーキパッドの意味、交換時期なども含め、案内していきます。

ブレーキパッドとは

一般的なブレーキパッドの形状
運転者がブレーキを踏むことにより、ディスクブレーキ(ブレーキパッドが押しつけられ、摩擦によりブレーキのかかるシステム)では、その踏力がブレーキオイルを介して、ブレーキキャリパーなどの制動装置に油圧として伝わります。
ブレーキキャリパーはその油圧を受け、ブレーキパッドをディスクローターに押しつけることで摩擦を作り、運動エネルギー(回転エネルギー)を熱エネルギーに変換し自動車を止めています。

フェラーリF430のブレーキキャリパー(引用:https://ja.wikipedia.org/)
ディスクブレーキとは
ディスクブレーキは、タイヤ(ホイール)と共に回転する「ディスクローター」という円盤に、ブレーキパッドを押し付けて制動力を得るブレーキです。部品点数が少なく、放熱性に優れていることから、スポーツタイプなど走りを意識した車種に多く採用されています。
ドラムブレーキに比べ制動力が劣り、常に露出しているため、タイヤ周りが汚れやすいことや、雨などでは制動力に若干のバラつきが出やすいなどの特徴があります。
現在新車販売されている乗用車(ミニバン、1ボックスを含む)のほとんどが、フロントブレーキにディスクブレーキを採用しています。
ブレーキライニング・シュー
ディスクブレーキの摩擦材に用いられるのが「ブレーキパッド」
ドラムブレーキの摩擦材として用いられるものを「ブレーキライニング」または「ブレーキシュー」
と言います。
原理は同じで、ブレーキ油圧により、ブレーキライニングをブレーキドラムに押し付けることでブレーキをかけています。
乗用車の場合は、リヤブレーキやパーキングブレーキに用いられています。
ドラムブレーキとは
ドラムブレーキは、タイヤ(ホイール)と共に回転する「ブレーキドラム」という円筒形状の部品に、ブレーキライニング(シュー)を押し付けて制動力を得るブレーキです。
サーボ効果(自己倍力作用)が発生し易く強い制動力が得られるため、重量のある車両や、貨物車などに多く採用されています。ディスクブレーキに比べ部品点数が多く、半密閉されているため放熱性は低いなどの特徴があります。
現在新車販売されているミニバンや、1ボックス(一部乗用車を含む)の多くが、リヤブレーキにドラムブレーキを採用しています。
ブレーキパッドの交換時期
ブレーキパッドはどういった基準で交換するのでしょうか。
摩耗(残数)
ブレーキパッドは、摩擦で制動力を発生させている以上、使えば使うほど摩耗していきます。理論的には0.1mmでも残っていればブレーキは効きますが、通常残りの厚さが2~3mm程度になると交換時期と言えます。
国産車においては、フロントのブレーキパッドは新品時、10~12mm程度、リヤのブレーキパッドは新品時8~10mm程度あり、一般的な使用方法や運転の仕方をしていれば、4~50,000km使用すると交換時期の残数は2~3mmになります。
年数(劣化)
摩耗以外であまり交換が必要なケースはあまり多くありませんが、まれなケースとしては、劣化があります。
ブレーキパッドは構造上、摩耗により削れていくライニングと座金(板)が接着されています。長年の熱により接着面が劣化し剥離することがあります。
また、摩耗していくライニングは複数の材料で成形された複合材です。内部に含まれている油分などが劣化し、もろくなっていく傾向にあるため、距離を走っていなくとも交換を行った方が良い場合もあります。
車検でのチェックポイント
完成検査(検査ライン)で行う検査(車検)では、その自動車に必要な制動力さえ出ていれば、事実上保安基準適合と判断できます。
しかし、事前の定期点検時に交換基準でもふれたとおり、検査ではなく点検の段階での残量が2~3mm以下の場合は交換が必要と判断します。
車検(検査)の限界
上記で述べえたように、車検(検査)では、その自動車に必要な制動力さえ出ていれば合格です。もちろんきちんと取り付けがされていることなど、保安基準上に規定はありますが、検査では分解作業を行うことはないため、外観での確認のみとなり、劣化や残量などはか事実上確認できません。
そのため、ユーザー車検やユーザー代行の場合でも、資格を持った整備工場での定期点検は必要なのです。
ブレーキパッド交換費用の目安
ブレーキパッドの交換が必要になった場合の費用についてご案内します。
車種によりかなり開きはありますので、あくまで参考の情報とお考えください。
純正パッド使用の場合
ディーラーなどで交換を行うと、通常は純正品を使用します。部品代は若干高額ですが、やはり純正品としての安心感があります。
※下記はあくまで国産車の場合です。輸入車や高性能スポーツカーなどでは下記値段の2~3倍とお考えください。
● 国産車で純正パッド使用の場合の部品代・・・フロント側12,000円~ リヤ側10,000円~
● 車格の大きなセダンやスポーツカーの場合・・・フロント側25,000円~ リヤ側15,000円~
社外品パッド使用の場合(第2純正品)
俗に「第2純正」と言われる汎用パッドでも交換は可能です。近頃はディーラーでも強く希望すれば第2純正を使用してくれる工場も出てきました。
海外製の格安品から、純正と同じ仕様ながらメーカーマークが付かないだけのような高性能な物まであり、値段や性能にかなり幅があります。
● 国産車で社外パッド使用の場合の部品代・・・フロント側3,000円~ リヤ側2,000円~
ブレーキパッド交換工賃
車種や、交換を依頼する工場により変動はしますが、国産普通車で4,000円~8,000円程度が相場です。
また、点検整備付きの車検に出している場合、ブレーキの分解自体は点検料に含まれるため、一部工賃が相殺され、単体交換より安くなる場合があります。
ブレーキパッドの不具合
ブレーキパッドが原因で起こる不具合がありますので、代表的な例をご紹介します。
ただし、自動車に起きる不具合の原因は多岐に渡るため、車検時の交換などの際の参考としてください。
ブレーキ鳴き
ブレーキをかけた際「キーキー」と音鳴りがすることがあり、この症状は一般的に「ブレーキ鳴き」と言われます。
考えられる原因としては、パッドが摩耗していく過程で、角が立っている、表面が荒れている、または、表面が硬化しているなどがあげられます。面取りや研磨、給油などで改善しない場合は、新品に交換することで、一時的に改善することがあります。
ここで覚えていただきたいことがあります。
いわゆる「ブレーキ鳴き」の本来の原因は、ブレーキパッドがディスクローターに食付こうとした際に起きる振動が、人間の耳に聞こえる周波数になった際に聞こえているということです。
つまり、ただ「キーキー」鳴いているだけであれば、ブレーキが利いている証拠であり、不具合とは言えません。重量のある自動車やスポーツタイプの自動車では、もともとの制動力が強いため、比較的鳴きが発生しやすいのです。
ブレーキジャダー
走行中ブレーキを踏んだときに、ハンドルや車体が細かく振動することがあり、その振動を「ジャダー」と言います。
考えられる原因としては、ブレーキパッドの硬化やディスクローターの振れが上げられ、ブレーキパッドの残量が少なくなった場合にも起こりやすくなります。
軽度な振動の場合は、ブレーキパッドとディスクローターを研磨することで改善する場合があります。
フェード現象
下り坂などでブレーキを多用すると、ブレーキの効きが著しく低下する場合があり、これを「フェード現象」と言います。
対して、同じような条件でブレーキを多用し、ブレーキペダルがフワフワしてブレーキの効きが弱まることを「ベーパーロック」といいます。(ベーパーロックについては、ブレーキオイルのページ参照)
フェード現象は、ブレーキを多用することで、ブレーキパッドの温度が上がり、上限温度を超えてしまうと、ブレーキパッド内の成分である油分が浮いてくることで発生します。
一度フェード現象が起きてしまったブレーキパッドは、再使用せず交換が必要です。
まとめ
ブレーキに関連する不具合はまだまだあり、原因も多岐に渡ります。
ブレーキは自動車の要とも言える大切な部分ですので、少しでも違和感を覚えたら、安易な判断はせず、お近くの整備工場などに相談しましょう。