ひと昔前、スパークプラグは日常的に点検し、定期交換や清掃、調整などを頻繁に行う事はけっしてめずらしくなく、少し自動車に詳しい方にとってはかなり身近な存在でしたが、自動車技術の進歩などにより、多くの車種では、普段あまり気にかけなくともよい部品となってきました。
しかし、ガソリンエンジンにとってはとても重要な部品であり、正常にエンジンが作動するためにはなくてはなりません。
このページでは、そんなスパークプラグについて、再認識していただけるよう、構造や、車検でのポイントを解説していきます。

スパークプラグとは
ガソリンエンジンは、ガソリンンと空気を混ぜた混合気を圧縮し、その圧縮した混合気を爆発・燃焼させることで、燃焼室内の気体を膨張させ、動力を得ています。
その混合気を爆発・燃焼させるときに、電気火花により混合気に点火させる役割を担っているのがスパークプラグです。
身近なものに例えると、電子ライターのカチッと火花を出す部分と同じと言えます。
スパークプラグの構造
スパークプラグは
・碍子(がいし)
・碍子脚部
・シール
・ハウジング
・ガスケット
・中心導体
・中心電極
・接地電極(側方電極)
で構成されています。
よくわからない名前が並んでいますので、簡単に言いますと、「端子から数万ボルトの電気を受け、途中で電気が漏れることを防ぎながら、先端の電極と接地電極の間で放電し火花を発生させ、その火花により発生する膨張した気体を漏らさないような構造も持っている」ということです。
スパークプラグの消耗
スパークプラグの先端は燃焼室内に突出しています。そして、エンジンの燃焼に欠くことができない火花を発生させているわけですが、その先端温度は800~1000度の高温になるばかりか、爆発による衝撃、数万ボルトを放電している負担などにより、どんなエンジンであっても、必ず消耗し、劣化します。
そのため定期的な点検や、交換が必要です。
スパークプラグの種類と交換時期

スパークプラグホールの例
エンジンの設計に応じて、長さや太さなどの物理的な大きさはもちろん、求められる特性も違います。
そのため、ガソリンエンジンに用いられるスパークプラグには、大きく分けて3つの種類があり、その種類により交換時期も異なります。
レジスタープラグ
もっとも一般的なスパークプラグと言えば、このレジスタープラグです。
内部にレジスタ(電気抵抗器)を内蔵し、点火に伴い発生する電気ノイズを抑え、コンピューター制御が当り前となった現代の車においての誤作動などを防ぐ効果があります。
電極にはニッケル合金が使用され、後述するイリジウムや白金に比べると融点が低く耐久性が劣るため、電極を細くすることはできません。
そのため、一般的な自動車では、20,000km~30,000kmでの交換が必要です。
白金プラグ
電極に白金(プラチナ)合金を採用したスパークプラグです。
レジスタープラグに使われているニッケル合金に比べ、融点が高く耐久性に優れているため、比較的先端を細くでき、強い火花を発生させることができます。
高出力のエンジンや、交換作業に手間がかかるエンジンなどに多く採用されていましたが、近年では後述するイリジウムが採用されることが多いようです。
交換目安としては100,000kmとされていることが多いようですが、特に高出力のエンジンなどの場合は、半分の50,000km程度で電極の摩耗が確認でき、交換が求められることも少なくありませんでした。
イリジウムプラグ
近年のガソリン自動車に採用されることが多くなりました。
特徴は、電極部分にイリジウム合金(白金とイリジウム)を使用している事です。イリジウム合金は非常に耐久性に優れていることから、電極先端を極限まで細くすることができ、電気を一点に集中させることができます。
そのため、交換目安の距離としては、100,000kmから、車種によっては、自動車メーカーが定める200,000kmと、従来の一般的なスパークプラグに比べ大幅に伸びています。
高出力エンジンのスパークプラグ
スパークプラグの電極と接地電極の間に電気を放電し火花を発生させますが、電極と接地電極間の空間に電気を放電するためには、大きな電圧が必要であるため、一般的なエンジンであっても2万~3万ボルト以上の高電圧を放電しています。
高出力エンジンとは、ターボチャージャーなどの過給機が付いているエンジンや、スポーツカーに搭載されているエンジンのことですが、高い出力を得るために、一般的なエンジンに比べ混合気を高圧縮しています。
先述のように、一般的なエンジンであっても電極と接地電極間の空間に電気を放電するためには、大きな電圧が必要ですが、高出力エンジンではさらに圧縮されており、4万~5万ボルトの高電圧と強い火花が必要なため、白金プラグもしくはイリジウムプラグが使われています。
低燃費エンジンのスパークプラグ
近年エンジンに最も求められ性能と言えば、低燃費・省燃費性能です。
開発段階でさまざまな技術が開発され、工夫がされていますが、ごく単純に考えると、使用するガソリンの量を少なくすれば、当たり前ですが省燃費になります。
よって、近年のガソリンエンジンはリーンバーンと言って、空気と燃料の割合において燃料の比率を下げる、つまり、少ない燃料で必要な出力を得られる工夫がされたエンジンです。
少ない燃料で、効率よく出力を得るためには、高圧縮にすることはもちろん、エンジンの運転温度を高く保つことが基本的に必要ですので、必然的に高出力エンジンと同じような性能がスパークプラグに求められます。
そのため、白金プラグもしくはイリジウムプラグが使われています。
車検でのポイントと交換費用
車検ではどのような点が点検・検査されているのか、また、スパークプラグ交換の費用の目安を見ていきましょう。
車検および定期点検でのポイント
車検の際、エンジンに不調がなく、排ガスに含まれる有害ガスの濃度(CO、HC)が規定値内であれば合格できます。
逆に言えば、エンジンに不調がある場合などは、スパークプラグに著しい劣化や、不具合がある可能性が高いと言えます。
また、法定定期点検などの場合では、前回からの交換距離や実際に外して下記のようなポイントを確認することで、交換を勧めることがあります。
電極の摩耗と隙間
どんなガソリンエンジンであっても、必ずスパークプラグの先端(電極)は摩耗劣化していきます。
その一つの基準となるのが、プラグギャップ(電極と接地電極間)です。
車種や採用されるプラグにより基準となる隙間は異なりますが、近年では1mm前後といったところです。また、先述の通り、エンジンの高出力化や省燃費化に伴い白金やイリジウムプラグが多く採用されているため、新品とくらべた摩耗具合なども点検し、必要があれば交換をオススメしています。
碍子(がいし)の破損
事例としてはそんなに多くありませんが、長い間交換していない場合や、作業ミスなどで起こりやすいのが、碍子部の破損です。
自動車のスパークプラグに用いられる碍子は、陶器でできており、スパークプラグ内に流れる数万ボルトの電流を外部へリーク(漏れ)させないための絶縁体です。
そのため破損などが起きてしまうと、点火に必要な電気が得られずエンジンの不調の原因となります。
交換目安の距離
上記の種類と交換時期でも述べたように、レジスタープラグで20,000kkm~30,000km、白金プラグで100,000km、イリジウムプラグで100,000km以上と、その種類によりある程度は走行距離により交換目安にできます。
しかしあくまで目安であり、使用状況や運転の仕方、もしくはマフラーなどのカスタム(改造)の有無などで変わってきます。
そのため整備士は、前回からの交換期間や距離(新車時からの交換の有無)などを参考に、実際の摩耗や劣化具合を確認し判断しています。
交換費用
スパークプラグを交換する際の費用ですが、まず交換工賃については、車種によりかなり開きがあります。
近年の自動車には白金やイリジウムプラグが多く採用されているため、短い間隔での交換や脱着作業を想定した造りになっておらず、比較的高額になる傾向にあります。
比較的交換が容易な場合で2,000円~3,000円程度、交換作業が困難な場合で10,000円~20,000円程度と言えます。
部品代の目安としては1本あたり、レジスタープラグの場合800円前後、白金プラグで1,500円前後、レジスタープラグで2,500円前後となり、エンジンの気筒数分必要です。
ディーゼルエンジンの場合
ディーゼルエンジンは、スパークプラグは付いておらず、軽油と空気を混ぜた混合気を、ガソリンエンジンに比べ超高圧縮にすることで自然着火させています。
似たような部品名で「グロープラグ」という部品がありますが、混合気に点火(スパーク)するためではなく、低温時に燃焼室と混合気を温め(予熱)するための部品で、スパークプラグのように定期交換をする必要はありません。