自動車にあまり詳しくない方にとっては、正直よくわからないかもしれませんが、定期的に交換の必要がある「消耗品」の中には、エアクリーナーと呼ばれるフィルターがあります。
ここでは、詳しい方でも、もしかしたら目からウロコが出るような内容を説明していきます。

エアクリーナーとは
エアクリーナーもしくは、エアクリーナーエレメントと呼ばれるエアーフィルターです。
エンジンは、空気を吸い込み、その空気にガソリンや軽油などの燃料を混ぜて混合気を作り、そのガスを圧縮し燃やすことで出力を得ています。エアクリーナーはその吸い込む空気のフィルターなのです。
エアクリーナーの種類
エアクリーナーには大きく分けて、乾式と湿式、2つの種類があります。
結果としての性能に大きな差はありませんが、それぞれには特徴があります。
乾式エアクリーナー
いわゆる家のエアコンのフィルターとほぼ同じです。
材質を乾いたままの状態でちりやホコリを絡め取る方式で比較的目が細かくなっています。
掃除は高圧でなければエアブローにて行う事ができます。
湿式エアクリーナー
自動車に使用される湿式は、正確にはビスカス式と言われ、ろ紙にオイルなどをしみ込ませてあり、ちりやホコリをオイルによる吸着させる方式です。
乾式と比べると目は粗めで、吸入抵抗は比較的低いです。エアブローによる清掃はできません。(社外品や一部の車種ではスポンジを使用した湿式も存在します)
エアクリーナーの交換目安
エアクリーナーの交換目安は、一般的な国産車で4~5万km程度となり、乾式を採用している車種では、5,000~1万kmごとの清掃が推奨されています。
交換や清掃が必要な理由
わかりやすく人間に例えて説明します。風邪をひいたときや花粉症シーズンになると、多くの人がマスクを着けていますよね。そのマスクが、もしホコリやゴミなどで目詰まりを起こしてしまうと、当然息が吸いづらくなります。
自動車にとっても同じであり、エアクリーナーはエンジンが空気を吸う入口に装着されており、その部分が汚れていては、空気を吸い込むことに力を使うことになり、燃費が悪化する原因となってしまいます。
また、相当ひどく汚れてしまった場合は、最悪エンジンの不調の原因ともなるのです。
エアクリーナーの清掃方法
乾式、湿式とも純正の場合は、エアクリーナーボックスと言われる箱の中に、エアクリーナーは収められていますので、エアクリーナーを外し、地面などに軽くたたきつけてホコリやゴミを落とします。このとき、あまり強い力でたたきつけてしまうと、エアクリーナー自体が破損してしまいますのでご注意ください。
※家庭用エアコンのフィルターのように水洗いなどはできせん。清掃と言っても表面のホコリやゴミを払う程度とご理解ください。
※湿式のスポンジタイプの場合は、灯油や専用の洗浄油で洗うことができるものもあります。
車検でのチェックポイント
エアクリーナーの汚れが理由で、車検が不合格になることはありません。
ただし、検査の段階でエンジンの不調があってはいけませんし、CO(一酸化炭素)およびHC(炭化水素)の濃度が基準値を超えていては不合格になります。
過度に汚れていて、ひどく目詰まりしている場合、エンジンの不調や、有毒な排ガスが増える場合があります。
また、ごくまれなケースとしては、ご自分で交換を試みるも失敗してしまい、エアクリーナーの一部を破損してしまったケースや、エンジンからのブローバイガスが多い場合、エアクリーナーに多量のエンジンオイルが付着することがあり、付着したエンジンオイルに長時間触れていたことにより、エアクリーナーの一部が破損してしまいます。
そういった破損はエンジンの大きな故障に直結する可能性が非常に高いため、交換が必要になります。
ブローバイガスとは
エンジンの燃焼工程において、ピストンとシリンダーの隙間から吹き抜けた未燃焼、あるいは、燃焼ガスのことを指します。
その吹き抜けたブローバイガスは、クランクケースと言われるエンジン下部にたまり、エンジン下部のエンジンオイル溜り(オイルパン)と同じ空間になります。
ブローバイガスには、浄化されていない排気ガスや、燃える前の混合気などが主な成分のため、そのままではエンジンオイルの劣化を早めるなど、エンジンにとっては良くありません。しかしそのまま大気に放出することは当然できないため、エンジンの吸入側に戻し再び燃焼させるようになっています。
吸入側とはエアクリーナーの近くであり、また、再循環されるブローバイガスには、蒸発したエンジンオイルが含まれています。
そのため上記で述べたように、ブローバイガスが多く発生するエンジンでは、排気ガスの成分、未燃焼ガス(ガソリンや軽油)、そしてエンジンオイルなどが含まれているため、エアクリーナーに長時間付着していると樹脂部分などの破損に繋がるのです。
エアクリーナーの交換費用
車種などにより、エアクリーナーの部品代にかなりの開きがあります。
国産車、輸入車問わず、
・部品代が1個2,500円~8,000円
・工賃が無料~10,000円
が目安ですが、スポーツカーなどの一部の高性能車種は高い傾向にあります。
また、エアクリーナーは1個とは限らず2個装着されている場合があります。
なぜ汚れてはいけないのか
フィルターと名の付く物は、汚いよりはきれいであるに越したことがないというのは、誰しもが思うことです。
ではなぜエアクリーナーの汚れがひどくなりすぎると、燃費の悪化や、最悪エンジンの不調にいたってしまうのでしょうか。
吸入抵抗
先ほど述べてように、エアクリーナーにホコリやゴミが付着し、目詰まりが起きてしまうと、エンジンが空気を吸い込むことの抵抗になってしまいます。
今のガソリンエンジンでは基本的に、リーンバーンという、希薄な燃料で運転されています。また、バッテリーのページでも触れたように、各メーカーとも1%の燃費を良くするために、さまざまな工夫をし、エンジンが回転するためだけに必然的に発生する抵抗(フリクションロスと言います)を、できる限り減らしています。
つまりエンジンがかかっている間は必ず空気を吸っていますので、そこで吸入に力を使ってしまうと、その分がロスとなり、結果燃費が悪くなります。
吸入空気量のズレ
電子制御されているエンジンは回転している間、常にどれだけの空気を吸っているかを測定し、吸入空気温度、エンジン回転数、冷却水温、運転者の意思(アクセル開度)などと総合的に判断し、燃料の噴射量と噴射タイミングを決めています。
そして、その決定をするためには、吸入空気の流速を考慮しはじき出していますので、目詰まりを起こしてしまうと、想定している空気量および流速と、実際の空気量がずれてしまいます。
もちろんエンジンの制御プログラムにはそういった“ズレ”を補正する機能はありますが、あまり汚れがひどくなってしまうと補正しきれなくなり、燃料と空気の比率(空燃比)や噴射タイミングが正常な値ではなくなってしまうため、エンジンの不調や、CO、HCなどの有毒ガスを、保安基準以上に排出してしまうことになります。
車検の豆知識 CO/HC濃度
車検で確認する項目では、排ガスに含まれる有害物質の濃度を測定します。
CO(一酸化炭素)が1.0% HC(炭化水素)が300ppm
● ガソリン軽自動車の場合
CO(一酸化炭素)が2.0% HC(炭化水素)が500ppm
上記の数値は「平成10年」の規制であり、現在(平成28年)でも変わっていません。
CO(一酸化炭素)とは
冬場のストーブの事故や、火災でなくなる方の多くが一酸化炭素中毒です。
エンジンが燃料を燃焼させている以上、必ず排出されています。
燃焼するために酸素が不足し、不完全燃焼が起きた場合に発生しやすくなります。
HC(炭化水素)とは
簡単に言うと、燃えることができなかった混合気(ガソリン)ということになります。夏場で暑く、風の弱い日などに発生する光化学スモッグの原因とされています。
上記のCO/HC以外にも車から排出される有毒ガスは存在しますが、それぞれの説明にもあるように、不完全燃焼や燃えることのできなかったことが、発生の大きな原因の一つです。
エアクリーナーを定期的に清掃したり、交換したりすることで、エンジンにとって一番良い混合気を維持していくことが、車検の合否だけでなく、環境にも配慮することにつながるでしょう。