これまで、車検(軽自動車車検)や売却査定前の点検についてお話してきました。けれど、絶対に修理すべきところと、修理しなくてもいいところはどこなのか、イマイチよくわからない方も多いのではないでしょうか? しかしこの見極めポイントを誤ってしまうと、トータルでマイナスになっていたという事態に陥ってしまいかねません。
そこで今回は、査定前にどの不具合箇所を修理するべきなのか、その見極め方についてお届けします。
外装の判断基準
外装の判断基準について話をする前に、まずは凹みや傷の程度によってどのぐらい減点が生じるかについて知っておきましょう。ここでは軽乗用車を例に、紹介をしていきます。

傷や凹みによる減点例
まず、1㎝未満の傷や凹みは減点対象外です。1㎝以上~カードサイズ未満のものは10点減点が基本となります。そして軽自動車は基本係数が0.7ですので、点数に0.7を掛けた値に1000円を掛けて下さい。それが、減点によって生じた査定のマイナス金額になります。
ボンネット・バックドア・フロントフェンダー・フロントドア・リヤドア・リヤフェンダー・トランクフードの場合
・塗装のみ(小)→マイナス20点
20×0.7×1,000=14,000円
・塗装のみ(大)→マイナス30点
30×0.7×1,000=21,000円
・板金塗装(小)→マイナス30点
30×0.7×1,000=21,000円
・板金塗装(大)→マイナス50点
50×0.7×1,000=35,000円
ルーフ
・塗装のみ(小)→マイナス20点
20×0.7×1,000=14,000円
・塗装のみ(大)→マイナス40点
40×0.7×1,000=28,000円
・板金塗装(小)→マイナス50点
50×0.7×1,000=35,000円
・板金塗装(大)→マイナス80点
80×0.7×1,000=56,000円
ピラー、サイドシルパネル、リヤエンドパネルの減点例
・塗装のみ(小)→マイナス10点
10×0.7×1,000=7,000円
・塗装のみ(大)→マイナス15点
15×0.7×1,000=10,500円
・板金塗装(小)→マイナス15点
15×0.7×1,000=10,500円
・板金塗装(大)→マイナス20点
20×0.7×1,000=14,000円
フューエルリッドの減点例
1㎝以上の傷、凹みはマイナス10点
・塗装(小)=カードサイズ以上A4サイズ未満
・塗装(大)=A4サイズ以上
・板金塗装(小)=カードサイズ以上A4サイズ未満
・板金塗装(大)=A4サイズ以上パネル1/2未満
バンパ、F・Rスポイラーの減点例
・塗装を含む修理(小)→マイナス15点
15×0.7×1,000=10,500円
・塗装を含む修理(大)→マイナス30点
30×0.7×1,000=21,000円
サイドスポイラーの減点例
・塗装を含む修理(小)→マイナス10点
10×0.7×1,000=7,000円
・塗装を含む修理(大)→マイナス20点
20×0.7×1,000=14,000円
ガーニッシュの減点例
・塗装を含む修理→マイナス10点
10×0.7×1,000=7,000円
ここまでが修理による減点です。次は、交換が必要な場合の減点を見てみましょう。
交換時の減点例
・ボンネットの交換→マイナス70点
70×0.7×1,000=49,000円
・フロントフェンダーの交換→マイナス65点
65×0.7×1,000=45,500円
・フロントドア(4ドア)の交換(1パネル)→マイナス80点
80×0.7×1,000=56,000円
・フロントドア(2ドア)の交換(1パネル)→マイナス85点
85×0.7×1,000=59,500円
・リヤドア→マイナス75点
75×0.7×1,000=52,500円
・リヤフェンダー(4ドア)→マイナス130点
130×0.7×1,000=91,000円
・リヤフェンダー(2ドア)→マイナス150点
150×0.7×1,000=105,000円
・トランクフードの交換→マイナス65点
65×0.7×1,000=45,500円
・バックドアの交換→マイナス95点
95×0.7×1,000=66,500円
・ルーフの交換→マイナス145点
145×0.7×1,000=101,500円
・サイドシルパネルの交換→マイナス80点
80×0.7×1,000=56,000円
・リヤエンドパネルの交換→マイナス65点
65×0.7×1,000=45,500円
以上が、外装における減点と、算出した金額です。これ以外にも年もの係数という設定もあり、登録から何年経過しているかで、算出した金額に上乗せされていきます。
さて、これまでの金額を見てどう感じたでしょうか? 恐らく、高いと感じた人のほうが多いと思いのではないでしょうか。しかし意外なことに、答えは真逆の「安い」なのです。
なぜ安くなるのか?
例えば、不具合でパーツを交換してもらうことになった場合ですが、これらの部品を車屋さんで交換してもらうと上記の金額をはるかに越えます。ドア等で言えば、仮に程度の良い中古品があれば同じくらいになるかもしれませんが、新品部品を使って交換するとなると、この程度の金額では収まりません。つまり、交換しなければいけないような損傷の場合は、そのまま査定してもらう方が得ということです。
では、修理の場合はどうでしょうか? 修理は店ごとによって工賃が異なるので、店によっては上記の金額より安くなる可能性もあります。しかし、探し出すのは困難を極めると覚悟しておいたほうが無難です。何故なら修理は物によって、交換対応になりかねないかもしれないからです。
ドアの修理を例に見てみましょう。査定前点検・外装編でもお話しましたが、現在の軽自動車に使われているアウターパネルは素材が変わったため、修理すること自体が非常に難しくなっています。板金塗装(大)の範囲は通常「A4サイズ以上~パネルの1/2未満」となっていますが、損傷具合によってはパネルの1/4でも交換です。損傷がパネルの1/2まで及んでいるようであれば、確実に交換になります。
基本的に今の軽自動車は範囲の広い凹み、範囲が狭くても深い凹みは交換になると思っておいて下さい。外装のみならず全ての項目について言えることですが、基本は修理する方が高いので、査定をしてもらう前から自己判断で修理をしないようにした方がいいと言えます。
1円でも多く手元に残るお金を増やしたいのであれば、まずは一度査定してもらった上で、修理をしたらいくらになるのか改めて査定してもらって金額を確認しましょう。車屋さんに見積もりを出してもらうのは、その後からでも遅くありません。もしくは、査定前に車屋さんに見積もりだけしてもらってから、査定時の減額と比較して、どちらが得かよく考えて判断するのも一つの手です。
フロントガラスの判断基準
フロントガラスも、外装と考え方は同じです。車屋さんで純正品に交換するのであれば査定前より高くなりますが、社外品を使えばコストを抑えられるので得する可能性があります。外国産を使えば、より確実です。しかし外国産は品質が悪く、使用を断られる可能性が高いため、こちらも外装と同じく比較してから判断するようにして下さい。
エンジン、ミッション、エアコン、電装系の判断基準
エンジン、ミッション、エアコン、電装系も外装と同じで、修理する方が高くなりやすいです。よって先に見積もりを出してもらうか、査定時に確認してから車屋さんで見積もりを出してもらうかしましょう。間違っても先に修理をしないようにして下さい。実際、先に修理をしてしまい、損をしている人もたくさんいるので注意しましょう。
ただし、エアコンに関しては例外です。もしもガスが少ないだけという場合は、先にガスの補充をしておく方が間違いなく得です。査定上、エアコンガスのチャージは6000円~7000円程度を請求されますが、エアコンガスは1本約2000円程度で購入できます。軽自動車のエアコンガスが空の状態でも、2本程度充填するだけで済むため4000円程度で収まります。少しでもコストを抑えたい方にはオススメです。



まとめ
今回は査定前に不具合箇所を修理するべきか、またその判断基準は何かをテーマにしてきましたが、いかがでしたでしょうか? 少し複雑な話をしたように思いますが、お伝えしたいことは一つだけです。今回のポイントは、査定前に修理する方が高くなりやすいので、まず査定に出してから査定士にじっくり話を聞き、それから金額を踏まえた上で、修理をするか否かを判断する。この方法を参考にして、後悔のない選択をして頂ければと思います。