今回は軽自動車の車検(軽自動車車検)前、売却査定前の車両点検として、足回り編をお届けします。足回りもエンジンなどと同じく、売却査定においては重要項目です。保安基準に関わってくる項目が多いため、不具合の有無で査定にも影響を与えます。
足回りの点検は一般ユーザーでも簡単に行うことができる部分も多いですので、足回りの構造や仕組みを中心に、査定時に影響を与えるポイントを踏まえてご紹介したいと思います。
中古車査定における足回りの重要度
軽自動車(車)の基本的な機能を集約すると「走る」「曲がる」「止まる」の3項目といえます。足回りというのはこれら3つの基本要素に全てに関わってくる部位群であり、その重要性が感覚的にお分かりになるかと思います。
確かに車にとってはエンジンも重要ですし、ミッションも重要ですし、当然ボディーもないといけません。ですが、その前に車としての機能を成り立たせるためには足回りがないと問題外といえます。
エンジン編で「エンジンを人の体で例えると心臓である」ということをお話ししましたが、足回りを人の体で例えると(言葉的にはそのままですが)「足腰」にあたります。人間と同じで足腰が弱いままだと走行中ふらついて安定しませんし不慮の事故につながります。逆に足腰が強ければ、多少路面が安定しない場所でも踏ん張りがききます。
足回りは保安基準に関わる部位だと申し上げましたが、これを違う言い方をするならば「ドライバーの命を預ける機関である」とも言えます。

足回りの種類
一般的にタイヤやサスペンションなどを含めて足回りとされていますが、人によって定義が曖昧です。タイヤ、ホイール、スプリングやショックアブソーバーまでを足回りとする人もいれば、それにプラスしてロアアーム、スタビライザーまでを足回りとする人もますし、もっと広い範囲で足回りとする人もいます。
今回はわかりやすいように足回り=走る・曲がる・止まるに関連する部品の総称と考えて頂ければと思います。
車という乗り物が発明されて以来、実に様々な足回りの形式が採用されては淘汰されてきました。その中で現在、主流となっているのは数種類です。
ほとんどの軽自動車では、フロントとリヤで採用されている形式が異なっています。まずは軽自動車、普通車問わず、現在主流で採用されているサスペンション形式をご紹介していきます。
フロントサスペンション
マクファーソンストラット式

スズキアルトのサスペンション(引用:http://www.s-alto.jp/)
ほとんどの軽自動車やコンパクトカーのフロント部では、このマクファーソンストラット式を採用しています。スプリングとショックアブソーバーが一体化したストラットタワーがホイール上部を支え、ロアアームが下部を保持しているというシンプルな構造です。
特徴としては部品点数が少ないためにコストパフォーマンスがいいことと、構造が簡単で軽量なため、大量生産に向いています。
ダブルウィッシュボーン

ホンダCR-Vのダブルウィッシュボーンサスペンション(引用:http://www.honda.co.jp/)
中型普通自動車以上の車で採用されています。ストラット式では上部の支えがストラットタワーのみでしたが、ダブルウィッシュボーンではアッパーアームが追加されます。さらにロアアームも2本になります。
高級車やスポーツカー以外でもフレーム式ボディーで採用されています。
特徴としてアームの形状や配置によって、サスペンション設定の自由度が高いものの、構造はストラット式に比べると複雑で重量もかさみます。部品点数も多いのでコストもかかります。そのため、軽自動車やコンパクトカーで採用されていません。
ストラット式とダブルウィッシュボーンの違い

引用:http://www.hidefool.com/asi02004.html
マルチリンク式

メルセデスベンツCクラスのマルチリンク式サスペンション
ダブルウィッシュボーンの変形形式です。高級輸入車や一部のスポーツカーで採用されています。ダブルウィッシュボーン形式も含めてマルチリンク式という人もいます。
マルチリンク式サスペンションは、アームが上下に並んだダブルウィッシュボーン式に加え、さらに多くの独立したアームを使用し、走行中のショックをより軽減できる仕組みになっています。当然コスト高なシステムですので、高価格帯の車両でしか採用はされておらず、軽自動車での採用は今のところ見当たりません。
現在、どのメーカーでもフロント部はマクファーソンストラット式かマルチリンク式のどちらかが採用されています。
リヤサスペンション
トーションビーム式

スズキアルトのサスペンション(引用:http://www.s-alto.jp/)
軽自動車やコンパクトカーなどのリヤ部ではほとんどがトーションビーム式を採用しています。軽量でシンプル、コストもかからないといった特徴があります。反対に車重のある車にはトーションビーム方式はあまりち適しません。
デュアルストラット式
フロント部と基本構造は同じです。数年前まではスバルが積極的に採用していましたが現在、生産されている軽自動車では採用されていません。
ダブルウィッシュボーン式
フロント部と基本構造は同じです。
マルチリンク式
こちらもフロント部と基本構造は同じです。
3リンク式・5リンク式

5リンク式サスペンション(引用:https://ja.wikipedia.org/)
3リンク式は軽乗用車やコンパクトカーの四駆でリヤ部に採用されています。
リーフスプリング式

リーフ式サスペンション(引用:https://ja.wikipedia.org/)
軽トラックなどのトラック関連はリーフスプリング式を採用しています。リーフスプリングと聞くと難しいかもしれませんが要は板バネです。
さて、非常に簡単ではありますがこれらが現在の車メーカーで採用されているサスペンション形式です。
現在販売されているFFの軽自動車ではほとんどがフロントにストラット式、リヤにトーションビーム式が採用されていて、四駆では3リンク式が採用されています。スズキ・ジムニーではフロント部も3リンク式が採用されている珍しいケースの軽自動車ですね(ジムニーは軽クロカンという特殊用途に舵を切っている車両だからです)。
足回りの査定前点検項目
続いて、足回りの簡易点検についてお話いたします。
軽自動車の足回りにガタが出てくると、乗り心地に影響が出るので、普段よく運転をされるドライバーさんならば、いつもと違う愛車の振動、音などの状況にすぐ気付くことが多いでしょう。ただ、あまり普段から車両を運転しない方の場合、些細な足回り損傷や劣化に関する変化に気付かないままというケースもあるようです。
本格的な足回りの点検となると一般ユーザーでは少し難しいのかなといった印象があるので、今回の記事では誰でも簡単にできるチェック方法と、売却査定時にどういった点がマイナス評価になるかを中心にご紹介していきます。
走行中の足回りきしみ音の点検と原因
あなたの愛車、走行中に足回りからきしみ音はしませんか?もしも、まだきしみ音が小さい段階ならば、それほど気にせずに運転を続けているのかもしれません。
きしみ音の原因は、各部を繋ぐブッシュの劣化が多いです(ブッシュのへたり具合で、きしみ音の大きさが変わります)。ロアアームなどの脱着作業をした後なども音が出ることがあります。このように、何かしらの作業をした後にきしみ音が出てきたのであれば、作業で着手したボルトが締まっていない等の理由が考えられますので、車屋で点検してもらうといいでしょう。
足回りを個人で作業することは専門知識が必要なため、通常のケースでは難しいと思います。従って、万が一のことを考えて難しい修理や点検はプロの整備士に依頼すべきです。
ストラット式サスペンションのブッシュが劣化した場合
尚、軽自動車で採用されているストラット式でブッシュ類が劣化した場合、ブッシュだけの交換はできない場合が多いです。
こうなるとブッシュ類を交換することになりますが、軽自動車の足回りの部品は割と安価ですので、きしみ音がしてくるようになったら、迷わず車屋さんで点検してもらい交換するようにしましょう。
走行中のガタガタ音点検と原因
ボルト類の緩みがある場合、走行中のガタガタ音はするのですが、ボルト類が確実に締まっているということであれば、新たな可能性として考えられるのがショックのオイル抜けです。
ショックは通常、金属のピストンが上下運動をしていますが、潤滑のためにオイルが封入されています。オイルがあることで金属の擦れ音を無くしているので、ガタガタ音がする場合はショックのオイル抜けを疑ってみて下さい。
その場合は車両の乗り心地も悪くなりますし、ガタガタ音が想像以上にうるさいため、運転をしていてもストレスがたまると思います。必ずプロの整備士に点検してもらいましょう。
足回りのトラブルに関して総じて言えることなのですが、ガタや音を無視し続けると、重大な事故につながりますので、素人判断で「多少の音ぐらいは平気だろう」と軽はずみに運転をし続けないほうがよいです。
ハンドリングの位置ズレ
ハンドルの位置がずれているのでは?と感じたことはありますか。通常であれば、ハンドルの位置がずれることはありませんが、足回りパーツの脱着をした場合、必ずと言ってもいいくらいにハンドルがずれてきます。
こちらも僅かであれば気にする人もいませんが、プロの中古車査定士の中には抜け目なく気づく人がいらっしゃいます。「ハンドルがずれる=なにかあるぞ」となってしまいますので、余計な減額査定をされないためにも、車両の足回りを触った後には、是非一度気にして確認してみて下さい。
タイヤ&ホイール
査定時にタイヤの残り溝まで厳しくチェックする査定士もいます。基本は残り溝が5mm以上あればプラス査定されますが1.6mm未満はマイナス査定になります。
さらに装着しているタイヤのメーカーでもマイナスにする査定士がいるので、この辺りは注意が必要です。
もし、スタッドレスタイヤのセットをお持ちであれば、査定時にスタッドレスのセットをつけた場合にいくらプラスになるのかを確認してみるとよいでしょう。変わらないようであれば、スタッドレスタイヤだけヤフオクなどの他手段で売却するほうが良いケースがあり得ます。少しでもお金になる方法として、こういう細かい駆け引きを覚えておくといいですね。
ホイールのガリ傷はマイナス評価を受けますが、ホイールはコストが高く、交換したとしてもトータルで見るとお得ではないので、そのままガリ傷が付いた状態で査定に挑みましょう。
インチアップをしていて社外品のホイールを装着しているケースで、且つ、ホイールの保存状態もよければ、プラス評価をしてもらえる可能性が高いので査定当日まで縁石などに当てないように注意して下さい。
足回りトラブルは重大事故につながる可能性あり
以上、簡単にではありますが足回りについてご紹介いたしました。足回りは症状がガタや音がない限り、通常はあまり気にならないかもしれませんが「なんだか変な感じがする」と感じた場合、迷わず車屋さんに直行して下さい。
繰り返しになりますが、足回りの異変は安全保安上に重大な損失があるトラブルの可能性があり、深刻な事故を誘因する可能性をはらんでいます。
車は便利な乗り物ですが、時として凶器に変わります。こういったリスクは頭に入れておいて頂き、普段から少し気にしながらカーライフを楽しむようにしてみて下さい。