ここまでに車検(軽自動車車検)前、査定前の点検として外装編、内装編、エンジン編についてお話ししてきましたが、今回は第4段としてミッション編をお届けします。



ミッションは大きくわけてATとMTとにわかれます。現在は軽トラックなどの軽貨物を除く軽自動車ではほとんどがAT車となっています。それだけATを求める人が多くなったとも言えます。だからといってMT車の人気がないわけではありません。
軽乗用車では「MT車でなければダメ」というユーザーも意外と多いのです。年式が古くてもMT車だからということを理由に買取金額を上げてくれる場合もあるので、一概にはどちらが高く売れるとも言えません。
そして、一番の問題はミッションもエンジン同様、査定時にはその状態によって大きな減点対象になるということです。
ですが、エンジン同様セルフチェックは少し難しいので、減点対象となる項目やミッションを壊さないためにも、普段からどういったことに気をつけるべきなのかについてお話ししたいと思います。
なお、ミッション編ですのでクラッチやデファレンシャルギア、ドライブシャフト、プロペラシャフトなど駆動系全般でご紹介しますので、是非参考にして頂ければと思います。
査定時に減額されるミッション状態
ミッションは非常に高額部品です。そのため、査定時にもしもミッションの調子が悪いと判断されれば、大幅な減額をされてしまいます。
調子が悪いかどうかの判断基準は一般ユーザーと査定士とでは違うため、仮に自分では特に「違和感を感じない」と思っていても査定士が「危ないな」と感じれば減額となってしまうのです。
ミッションオイルが少し漏れている状態でも、もちろん減額にはなりますが、10000円程度です。問題は滑りやタイムラグが発生している場合です。
ATが滑るとアクセルを踏み込んでも回転数は上がるが加速しないといった症状が出始めます。もちろん、そのままにしておくと、いずれは加速が悪いどころか進まなくなります。
そしてもう1つの問題がタイムラグです。
タイムラグとは時間遅れのことで、シフトレバーを切り替えた時に、実際にミッションが切り替わるまでに何秒時間差があるかで判断することができます。
NレンジからDレンジへの切り替えでもいいですし、NレンジからRレンジへの切り替えでもいいので、一度確認してみて下さい。
査定士にもよりますが、この時1秒〜2秒タイムラグがあれば大幅な減額を覚悟しなければならないケースがあります。
大幅な減額といいましたが…年式や車種にもよりますが、下手をすると金額がつかないと思って頂く方がいいかもしれません。
なぜなら、これらの状態はATを載せ替えしなければいけないからです。AT載せ替えは軽自動車であれば20万円ほどはかかります。買取店も「このミッション危ないな」と感じとれば再販も難しくなるため、この点は事前に理解をしておく必要があります。
ATが滑る原因と対策
ATが滑る原因のそのほとんどがATF(オートマオイル)と言われています。
エンジンオイルの交換を勧められることは頻繁にありますが、オートマオイルの交換を勧められることはあまりないと思います。
これには理由があって、例えば、ある程度古い車で一度もオートマオイルを交換したことがない車に古いオイルを抜いて新しいオイルを入れると、途端に調子が悪くなってしまうことが多いからです(必ず調子が悪くなるとまでは言えないのですが、高確率で調子が悪くなります)。
「整備士が勧めるから交換したけど、余計に調子が悪くなったよ」とクレームになりやすいため、オートマオイルの交換を整備士に勧められること事態が少ないのです。
他にもグレードの違うオートマオイルを使用した場合や、オイルの中に水が混入した場合もATが滑る原因とされています。
「オートマオイルの交換はしなくてもいい」と言う人もいますが、個人的には新車を購入した場合に限り、2万キロ毎に交換をするのがいいのかなといったところです。
反対に10万キロ辺りを超えていて一度も交換したことがないようであれば、その車はオートマオイルを交換しない方がいいかもしれません。
ドライブシャフトのブーツ破れ
ドライブシャフトとは、エンジンによって生まれた動力をタイヤに伝えるための回転軸で形としては棒状の部品です。ただの棒状ではなく両端が可動するようになっています。
この可動部には大量のグリスが塗られており、グリスを守るために外からガードされています。このガードしているゴム製の部品がドライブシャフトブーツです。
ドライブシャフトブーツもまた、破れがあると査定時には減額とされます。なぜなら、保安基準に適合していないからです。
タイヤ側の可動部は走行するたびに伸縮するため、他のゴム製部品より劣化もしやすく破れやすくなっています。交換の目安は5年、もしくは10万キロ程度ですが、もっと早い場合もありますし目安を過ぎても破れない場合もあります。
程度によりますが査定前に破れていれば車屋さんにお願いして安く応急処置できないか聞いてみて下さい。
その他の点検
インヒビタスイッチ

インフィビタースイッチ(引用:http://www.geocities.jp/blue31cima/inhibit_sw.htm)
インヒビタスイッチとはATのシフトポジションを検知するスイッチのことです。Pレンジ、もしくはNレンジでしかエンジンがかからないのは、インヒビタスイッチが検知しているからです。つまり、AT車の始動時における安全装置として欠かせない部品なのです。
調子が悪い・壊れた時というのは、Pレンジにも関わらずエンジンがかからないといった厄介な症状が出てきます。この時、対策としては一度シフトを1周させもう一度、Pレンジでエンジンをかけてみるか、Nレンジでエンジンをかけてみるといったことをしてみてかかるようであればインヒビタスイッチを疑ってみて下さい。
セルモーターが故障した時も似たような症状が出ますが、まずは一度シフトノブをガチャガチャと動かしてみて下さい。頻繁に壊れる部品ではありませんが年式の古い車では出てきてもおかしくない症状です。
ビスカスカップリング
四駆に限定されます。スズキ車ではリコールとなった部品です。製造年月によりますし車種にもよりますがスズキ車はリコールになったくらいの部品ですので、特に弱いのかなといった印象です。
保証内であれば交換してもらえるのですが、保証期限を超えてしまうと認められないので少々厄介になります。取り付けされている位置はプロペラシャフトのセンター部です。
ビスカスカップリングは正常であれば本当にいい仕事をしてくれるのですが、壊れてしまうとなんとも嫌な音を発します。査定する車がスズキの四駆であれば点検してみたほうがよいでしょう。
点検方法は右左どちらでもいいので、ハンドルを最大限に切った状態でアクセルを踏んでみてください。壊れていると「ガコガコガコガコ」といった非常に嫌な音がします。異音に鈍感なユーザーでも間違いなく気に触る音ですのですぐにわかります。
参考程度ですが、部品代は4万〜5万くらいします。ここが壊れていることを査定士に見抜かれると部品代4万〜5万するという点からわかるかと思いますが、それなりの減額となります。
MT車クラッチ車は普段から正しい操作を
軽トラックや軽バンなどの貨物車両でもATが多くなってきましたが、それでもまだまだ主流はMTです。特にご年配の方は軽トラックなどでMT車を好むようですが、MT車はつい、半クラッチで繋ぎたくなりますが徐々に蓄積され滑るといったことになります。
滑るようになると、ギアが繋がらないので前に進みません。つまり、クラッチ交換が必要となります。当然、査定にも大きく関わってきます。ですので、普段から正しい操作を心がけるようにしましょう。
ミッションは普段から大切に扱おう
査定時に影響する点を中心にご紹介してきました。エンジンにしろ、ミッションにしろ、普段のメンテナンスが重要となってきます。査定前だからとあたふたしなくてもいいように普段から車は大切に扱うようにしましょう。