買取店はユーザーから買取りした車両をオートオークションで売買しています。そして、オークション会場の検査員がそれらの車両を1台1台検査し、点数をつけ各コーナーに並べられます。
検査員がつける点数を評価点と呼び、購入者希望者はその評価点を基準に判断することになります。
評価点は基本として数字で表されますが中にはS点やR点というアルファベットで表される評価もあります。S点はほぼ新車の状態ですがでは、R点とはなんでしょう?今回はオートオークション評価におけるR点に的を絞ってお話したいと思います。
評価R点とは?
オートオークションの評価でR点と聞くと、その意味を知っている業者は敬遠します。なぜなら、R点とは修復歴のある車両のことだからです。
業者がオートオークションで購入する理由というのは、落札した車両に金額を上乗せし自社にて販売するためですが、一般ユーザーには修復歴のある車両は良いイメージがないため、年式が新しく、走行距離の少ない車両でもR点と表記されていると、どうしても敬遠せざるをえなくなるのです。
では、どの程度の事故をしているとR点となるのでしょう。
まずはR点の定義について知っておく必要があります。きっちりと決められているようで曖昧な部分もあるのでその辺りをお話していきます。
R点の定義
R点は自動車公正取引協議会、日本自動車検査協会、日本中古車自動車販売商工組合連合会によって「車体の骨格部を修正・交換または曲がりがある車両」と定められています。
一般ユーザーは事故車=修復歴とイメージしている人も多いですが、査定現場では必ずしもそうではなく、交通事故以外が原因での骨格部の修正・交換・曲がりがある車両もまたR点となります。
反対に事故歴があっても骨格部の修正または交換をしていない車両はR点とはなりません。
では、車体の骨格部とはどこを指すのでしょうか?少し難しいので嫌になるかもしれませんがここでは正式名称を使って解説したいと思います。

引用:http://koshin-car.com/
フロントクロスメンバー
フロント下部にあり左右のフレームを繋いでいます。
フロントサイドメンバー
フロント左右に1本ずつあるフレームを指します。現在主流のモノコックボディーではフロア部から前方に伸びていてエンジン・ミッションを支えている箇所です。
フロントインサイドパネル
車種にもよりますがラジエターを支えているコアサポートより後方からストラット上部取り付けパネルまでを指します。
ダッシュパネル
エンジンルームと室内の境目にあるパネルです。
センターフロアパネル
その名の通り室内床面のパネルです。ダッシュパネルからリアシート足元辺りまでの大きなパネルです。
フロアサイドメンバー
センターフロアを支えているフレームです。
フロントピラー
前方の柱です。上はフロントガラス上部辺りから、下はフロントフェンダー下部取り付けボルト穴付近まであります。
センターピラー
リアドアのドアヒンジが取り付けされている車両センターの柱です。
リアピラー
最後方の柱です。リアフェンダーも含みます。
リアサイドメンバー
後方部のフレームでリアフロア等を支えています。
リアフロア
トランク部の床面パネルです。トランク部だけの車種もありますし、リアシート足元部まで伸びている車種もあります。
ルーフパネル
その名の通り天井部です。
ラジエターコアサポート
フロント部のラジエターを支えている箇所です。
これらが車体の骨格部とみなされています。基本は骨格部=溶接してあるパネルになるのですが例外もあります。
リアフェンダー・ラジエターコアサポートは含まれない
前項で、基本は骨格部=溶接してあるパネルとお話しましたが、リアフェンダーとラジエターコアサポート、そしてエンドパネル・サイドシルパネル(ステップ部)は溶接してあるにも関わらずR点とはならずRA点(軽度の修理)、もしくはオークション会場によって3点や3.5点となる場合もあります。
この辺りが曖昧で修復歴の判断を難しくしている要因でもあります。
曖昧なため査定士によって修復歴として判断する場合もありますし、修復歴と判断しない場合もあるのです。
例えば、リアフェンダーを交換している車両がA社では修復歴として判断されても、B社では修復歴として判断されないこともあるのです。ユーザーにとっては非常に迷惑な話ですが現実としてこういったことが起こっております。
修復歴からR点評価になった背景
査定士によって、「修復歴」という言い方をする人もいれば、「R点RA点」など細かく区切った言い方をする人もいますが、これはなぜでしょうか。この辺りはプロでも意外と知らない人が多いのでちょっとした雑学としてお話しておきます。
日本初のオークションはトヨタ発案
今から遡ること約50年前の1967年、トヨタが日本で初めてオートオークションを開始しました。
当時は今のようなオークションとは違い、新車ディーラーの下取車を中古車ディーラーに転売するという…言ってみれば、同メーカー系列ディーラー同士での売買に限られていました。
この4年後の1971年に、JU(日本中古自動車販売協会連合会)が設立され、組合主催によるオークションが開催されるようになりました。
そして、さらに約10年後、1980年にUSSがオートオークションを手数料ビジネスとし参戦することになります。
フレーム修正機の誕生と修正歴表示の関係
簡単ではありますがこれがオートオークションの歴史なわけですが、トヨタがオートオークションを誕生させた頃、日本で初めて骨格修正に必要なフレーム修正機が登場しました。
それまでというのは、骨格まで損傷をしている車両の修理は、電柱にロープやチェーンを巻きつけ損傷箇所と繋いで車両を動かし引っ張りだすということをしていたそうです。
日本国内のフレーム修正機が登場したのは1966年ですが、導入できた車屋はごく一部であり、電柱を使った修正作業はその後も続けられました。
つまり、現代のような数値的根拠のない言い方は悪いですが、勘だけの修理が平然と行われていたのです。このような修理をすると、もちろん後々にいろいろな不具合が生じます。例えば、真っ直ぐ走らないなどですね。
そういった過去の事情から、骨格まで損傷が達した車両を修理している場合、中古車として再販する際は修復歴ありと表記するようになったのです。
一度世間にこういった印象を与えてしまうと、それを払拭するのは難しく、その後も骨格修正・交換をしている車両は修復歴ありと表記され敬遠されることになります。
しかし、時代は変わり、車の変化と共にフレーム修正装置も大きく変化しました。
昔は寸法など二の次で、現物が合えば良しという風潮でしたが、今は寸法が全てと言ってもいいくらいミリ単位での修正が求められるようになったおかげで、修理の精度も必然的に上がりました。
つまり、設備の整っている工場で職人が修理した車は、昔のようなものではないと認識されるようになったこと。
加えて、オークション主催側も購入する側も、「修復歴」という表記だけではどの程度の修理をしているのか判断できないということ。
これらの理由により、それまで修理の度合い関係なく「修復歴あり」としていたところを改め、修正程度によって「R」や「RA」、「R小」などと評価するようになったのです。
最終的にR点、RA点になるかの判断はオークション会場の検査員がすることになりますし、会場によっても判断基準は違いますが、こういった背景があるために、「修復歴」という表記をする人もいれば、「事故車」という人もいますし、「R点」という言い方をする人もいるというわけなのです。
非常に簡単にまとめると修復歴とはR点という評価が誕生するまでに使われた表現ということです。
「修復歴」と判断されないケース
修復歴と判断するかしないかは、担当する査定士や検査員によって変わるというお話はしましたが、では、どういったケースが実際に修復歴に該当するのかが気になるはずです。
基本は溶接パネルの修理・交換は「修復歴」とされていますが、「修復歴」に該当しないケースもあるので完結にまとめておきます。
リアフェンダーの交換・修理
リアタイヤ上部のパネルです。リアフェンダーは溶接で止められていますが、修復歴には入りません。なぜなら、外板パネルだからです。外板パネルの交換・修理は修復歴の定義には含まれません。
サイドシルパネルアウター(ステップ部)
こちらも修復歴の定義を当てはめた場合、修復歴には含まれません。リアフェンダーと同じく外板パネルだからです。
エンドパネル
リアバンパー取り付け部のパネルです。縦開きのバックドアであれば、バックドアの受け部になる箇所ですが、こちらも溶接してありますが修復歴とはなりません。
「修復歴」と誤判断する査定士に反論してみよう
上記で紹介した3つのケースは「修復歴」と安直に判断されてしまいやすい注意ポイントです。なぜなら、これら3つを交換修正しているような事故は、隣接パネル同時にも交換・修理しているケースが多いため、「修復歴」とひとくくりに判断されてしまいやすいのです。
仮に隣接パネルまで交換・修理されていなくても、オートオークションに出品した際に、検査員の独断検査で「修復歴あり」と判断されてしまう可能性が高いため、買取店の心理としては、ある意味保険をかけるために意図的に「修復歴あり」として判断している査定士もめずらしくありません。
この辺りの「修復歴」に関する解釈をしっかりとしているベテラン査定士であれば、溶接部といえども、本当にアウターパネルの交換・修正のみで止まっている(つまり「修復歴なし」)と判断してくれます。
従って、本当にアウターパネル部のみの交換・修正だけであるにも関わらず、査定時に「修復歴あり」と判断された場合は、今回のお話を参考に理論的に反論してみる余地があるでしょう。
また、反論しても納得してくれない場合は、他の買取業者に査定してもらうことも愛車を高く買い取ってもらうためには必要なことですね。
今回お話した知識を理解していただくと、単純に買取業者から言われるがままの金額で売却してしまうということが少なくなると思いますので、車検(軽自動車車検)前などにちょっと見直して頂き、是非参考にして頂ければと思います。